フルートを吹いていると、音を「当たった」「外れた」で考えてしまうことがあります。       高音が当たった。 低音が鳴った。 オクターブがうまく切り替わった。       もちろん、音が出ることは大切です。 けれど私は、音域のコントロールを考える時、音が当たったかどうかだけではなく、その音の中にど […]

同じラの中に、無数のラがある─音域の境界線を探す【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】

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公開:2026年08月24日

更新:2026年08月24日

フルートを吹いていると、音を「当たった」「外れた」で考えてしまうことがあります。

     

高音が当たった。

低音が鳴った。

オクターブがうまく切り替わった。

     

もちろん、音が出ることは大切です。

けれど私は、音域のコントロールを考える時、音が当たったかどうかだけではなく、その音の中にどれだけの幅があるかを大切にしています。

     

今回は、同じ音の中にある幅と、音域が切り替わる境界線について書いてみたいと思います。

フルート・オカリナ インストラクター森川 健士

フルート・オカリナ インストラクター森川 健士

クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。

音を、点ではなく幅として考える

楽譜の上では、A5はA5です。

     

けれど、実際にフルートで吹いてみると、同じA5にもいろいろな状態があります。

     

A4に近い

E6の倍音に近い

中間

     

音名としては同じA5です。

     

けれど、音色も、音程も、息のスピードも、響きの密度も、次に向かいやすい方向も違います。

     

低い音へ落ちやすい

高い倍音へ上がりやすい

真ん中で安定している

     

同じ音の中にも、たくさんの種類があります。

     

音を一つの点としてではなく、幅を持ったものとして感じること。

     

そこから、音域のコントロールが始まると私は考えています。

境界線は、身体の使い方ではなく音の結果の中にある

音域が切り替わる時、私たちはつい方法を探したくなります。

     

をどうするか。

をどうするか。

頭部管をどう当てるか。

どこにを入れるか。

     

もちろん、それらは実際には関係しています。

     

けれど、境界線は「身体のどこをどう使ったか」だけで覚えるものではないと思っています。

     

大切なのは、その結果として音がどう反応したかです。

     

音程がどう動いたのか。

音色がどちらへ寄ったのか。

息の密度がどう変わったのか。

響きが下へ落ちようとしているのか、上の倍音へ向かっているのか。

     

その結果の中に、音域の境界線があります。

     

身体の使い方を先に決めるのではなく、音がどう動いたかを観察する。

     

その方が、境界線は見えやすくなると感じています。

音域は、急に切り替わるわけではない

音域は、低音・中音・高音と、はっきり分かれているように見えます。

けれど実際には、その間には無数の状態があります。

     

息のスピード

息の

息の密度

アパチュアの状態。

響きの方向。

音色の明るさや暗さ。

     

それらが少しずつ変化していき、あるところで音が切り替わります

     

その切り替わる場所が、私の言う「境界線」です。

     

境界線を知らないまま音を出そうとすると、音を気合で当てに行くことになります。

     

出るかな。

外れるかな。

当たってほしい。

     

そういう不安の中で吹くことになります。

     

けれど、境界線を知っていると、少し感覚が変わります。

     

少なくとも、この境界線を守ればこの音は出る

     

そういう目安が生まれます。

A5からA4へ、A5からE6へ

たとえば、A5を基準に考えてみます。

     

A5からA4へ下がろうとする。

A5からE6の倍音へ上がろうとする。

     

この時、A5はただのA5ではありません。

     

A4へ近づいていくA5があります。

     

少し息の状態が変わり、響きの密度が変わり、音色が下へ寄っていく

     

反対に、E6へ近づいていくA5もあります。

     

息の状態が変わり、響きが上の倍音へ近づいていく

     

そして、その途中に、たくさんのA5があります

     

この幅を感じ取ることが大切です。

      

音が実際にA4へ下がったか、E6が鳴ったかだけではありません。

     

その手前で、音がどちらへ向かおうとしているのか

     

その変化を感じ取ることが、音域コントロールの土台になります。

オクターブ練習は、成功より観察

A5 → A4 → A5 → E6 → A5 のような練習をすると、どうしても「音が変わったか」「倍音が鳴ったか」に意識が向きます。

     

けれど、それだけが目的ではありません。

     

試みた結果自分にどんな変化が起きたのかを分析することが大切です。

     

口を動かさずに息だけで音を動かそうとした時に、

     

音色はどちらへ寄ったのか。

音程はどう揺れたのか。

息の密度は変わったのか。

響きは下へ落ちようとしたのか。

上へ向かおうとしたのか。

身体の中に、どんな感覚が生まれたのか。

     

そこを観察することで、さらに細かいコントロールを求めることができるようになります。

     

音域を移動させることがすべてではありません。

     

音域を移動させようとする中で、自分の息と音の関係を知ること。

     

それが、この練習の本質です。

境界線を知ると、音色を選べる

境界線を知ることは、音を当てるためだけではありません。

音色を選ぶためでもあります。

     

低音域を吹く時、ただ口を緩めて出すと、音がぼけすぎてしまうことがあります。

けれど、中音域との境界線を知っていれば、中音域の芯を少し残した低音を作ることができます。

     

反対に高音域では、ただ頑張って吹くと、音が硬くなりやすいです。

けれど、中音域との境界線を知っていれば、中音域の柔らかさを残した高音を作ることができます。

     

低音は、低音だけで作るのではない

高音は、高音だけで作るのではない

中音域とのつながりの中で、音色を選んでいく。

     

境界線を知ることで、音域ごとの音がつながりやすくなります。

音階も、同じ息の線で吹きやすくなる

A5とA4を、同じ口のまま、境界線ぎりぎりで吹けるとします。

その感覚があると、その間にある音たちも、同じ口、同じ息の感覚の中で吹きやすくなります

     

もちろん、厳密には音ごとに微細な変化はあります。

けれど、音ごとに口を作り直すのではなく、同じ息の線の中で指だけが変わっていくような感覚に近づいていきます。

     

音階を吹く時、音ごとに口で探していると、音楽の線は途切れやすくなります。

けれど、同じ息の線の中を音が通過していく感覚があると、音域をまたいでも流れが保ちやすくなります。

音の中にある余白を知る

フルートの音は、ただ「当たる」「外れる」だけではありません

     

同じ音の中にもがあります。

同じA5の中にも、いくつものA5があります。

     

その音が上へ向かいやすいのか、下へ落ちやすいのか、真ん中に留まっているのか。

     

その違いを感じ取ることが、音域コントロールの土台になります。

     

境界線を知ることで、気合で音を当てに行く必要が少なくなります。

そして、音域ごとにバラバラな音ではなく、低音から高音まで一本芯のある音に近づいていきます。

     

音をとしてではなく、余白を持ったものとして捉える。

     

その感覚が、フルートの音をより自由にしてくれるのではないかと思います。

     

島村楽器 名古屋パルコ店

フルート・オカリナ インストラクター

森川 健士

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