「練習では吹けるのに、本番になるとうまくいかない」 「人前に立つと、頭が真っ白になってしまう」 「間違えるのが怖くて、発表会に出る勇気が持てない」 こうした悩みを持つ方は、決して少なくありません。 私自身も、本番では緊張します。 今回は、緊張をなくす方法ではなく、緊張とどのように向き合い、その中でも […]

間違えても、音楽は続いていく─本番の緊張と向き合うために【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】

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公開:2026年06月30日

更新:2026年06月30日

「練習では吹けるのに、本番になるとうまくいかない」

「人前に立つと、頭が真っ白になってしまう」

「間違えるのが怖くて、発表会に出る勇気が持てない」

こうした悩みを持つ方は、決して少なくありません。

私自身も、本番では緊張します。

今回は、緊張をなくす方法ではなく、緊張とどのように向き合い、その中でも自分の音楽を届けるかについてお話しします。

フルートインストラクター森川 健士

フルートインストラクター森川 健士

クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。

練習と本番は、まったく違う環境

普段の練習では、自宅やカラオケ、練習室など、慣れた場所で吹くことができます。

間違えたら止まってもいい。

何度でも吹き直せる。

苦手なところだけを繰り返すこともできます。

しかし本番は違います。

会場も、響きも、空気も違う。

目の前には聴いてくださる方がいる。

そして、基本的には一度きりです。

だからこそ、

「上手に吹きたい」

「間違えてはいけない」

「失敗してはいけない」

という気持ちが強くなります。

けれど、この「〜してはいけない」が増えるほど、呼吸は浅くなり、身体は固くなり、普段できることまで難しくなってしまいます。

緊張は、悪いものではない

人前でのスピーチや、大切な試合の決定的な場面で緊張するように、演奏でも身体は本番に備えようとします。

心拍数が上がる。

呼吸が浅くなる。

音や周囲の気配に敏感になる。

それは、身体が「いつでも動けるように」と準備している反応でもあります。

私は以前、緊張を隠そうとしたり、無理に落ち着こうとしたりしていました。

しかし経験上、「緊張してはいけない」と思うほど、かえって緊張は大きくなります。

大切なのは、緊張しないことではありません。

「本番では緊張するものだ」と受け入れ、その状態でも演奏できるように準備することです。

ソロよりも合奏の方が緊張する

意外に思われるかもしれませんが、私はソロ演奏の方が気楽です。

ソロで失敗しても、責任はすべて自分にあります。

しかし、オーケストラやアンサンブルでは、自分の失敗が周りの演奏にも影響します。

「迷惑をかけてはいけない」

そう思うほど、緊張は強くなります。

つまり緊張は、弱さだけから生まれるものではありません。

その音楽や、一緒に演奏する仲間を大切に思う気持ち、責任感から生まれることもあるのです。

普段間違えない場所で、暗譜が飛んだ

以前、本番中に、普段なら間違えないところで突然暗譜が飛んだことがあります。

頭の中が真っ白になり、数秒間、演奏がぐちゃぐちゃになりました。

何とか最後まで演奏しましたが、終わった直後に思ったのは、

「やってしまった」

ということだけでした。

それまでの演奏がどうだったか。

うまく表現できた部分があったか。

そんなことは考えられず、失敗した数秒間だけが、演奏全体を覆っているように感じました。

失敗ばかり見ていたのは、自分だけだった

ところが終演後、お客様からいただいたのは、失敗についての言葉ではありませんでした。

曲の空気感。

音色。

作品の世界観。

演奏から感じた情景。

もちろん、気を遣ってくださった部分もあったかもしれません。

それでも、その時に気づきました。

自分にとっては演奏全体を台無しにするほどの失敗でも、聴いている方にとっては、大きな作品の中にできた小さな傷にすぎないことがある。

音楽は、失敗した瞬間にも止まりません。

良かった音も、悪かった音も、時間の中を流れて過ぎていきます。

お客様は「正解」ではなく、あなたの音楽を聴いている

音楽に詳しい方や演奏家は、音程や音色、作品の様式まで厳しく聴くことがあります。

しかし多くのお客様が聴きに来ているのは、間違いのない正解だけではありません。

その人がどのように曲を感じ、どのような音で届けるのか。

つまり、「あなたが演奏する音楽」を聴きに来ています。

一音も外さないように、恐る恐る小さくまとめた演奏。

少し失敗しても、自分の伝えたい世界を信じて演奏した音楽。

私は、後者の方が人の心に届くことがあると思っています。

もちろん、十分に準備することは必要です。

失敗してもよいから、練習しなくてよいという話ではありません。

練習した上で、失敗を恐れるあまり、自分の表現まで小さくしないことが大切です。

緊張しても戻れる準備をする

本番に向けてできることはあります。

人に聴いてもらう。

本番に近い環境で通してみる。

途中から演奏を再開する練習をする。

暗譜が飛んだ時に戻る場所を決めておく。

苦しくなる前に吸えるブレス位置を用意しておく。

目指すのは、「絶対に緊張しない自分」ではありません。

緊張しても、間違えても、音楽へ戻ってこられる自分です。

間違えても、音楽は続いていく

本番の成功は、一音も間違えないことだけでしょうか。

緊張しながらも舞台に立った。

最後まで演奏した。

好きな曲を誰かに届けた。

自分の信じる音楽を表現しようとした。

それもすべて、大切な成功です。

音を一つ外しても、演奏全体の価値がなくなるわけではありません。

間違えても、音楽は続いていきます。

そして私たちの人生も、一度の失敗だけで決まるものではありません。

どうか失敗を恐れすぎず、自分の信じる音楽を演奏してください。

島村楽器 名古屋パルコ店
フルートインストラクター 森川 健士

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