フルートを吹いていると、音域によって吹き方が大きく変わってしまうことがあります。       高い音で、口をすぼめる。 低い音で、口をゆるめる。 音が当たるか不安になり、口元や楽器の角度を少しずつ変えて探してしまう。       もちろん、音域によって息の状態や身体の使い方は変化します。 けれど、音 […]

口を変えずに、息を変える─フルートの音域をなめらかにつなぐ練習【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】

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公開:2026年08月15日

更新:2026年09月20日

フルートを吹いていると、音域によって吹き方が大きく変わってしまうことがあります。

     

高い音で、口をすぼめる。

低い音で、口をゆるめる。

音が当たるか不安になり、口元や楽器の角度を少しずつ変えて探してしまう。

     

もちろん、音域によって息の状態や身体の使い方は変化します。

けれど、音域が変わるたびに口を作り直していると、低音・中音・高音がそれぞれ別の音色になり、音楽の線が途切れてしまうことがあります。

     

私が大切にしているのは、音域ごとに別の口を作ることではなく、一本の息の線の中で音域をつなげていく感覚です。

フルート・オカリナ インストラクター森川 健士

フルート・オカリナ インストラクター森川 健士

クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。

中音域を、音作りの基準にする

私は、フルートの音作りを考える時、中音域を基準にすることが多いです。

人間の声でいうと、地声に近い感覚です。

     

低い声を出す。

高い声を出す。

     

そんな難しいことをするより、まず自然に出せる声があります。

     

フルートでも同じように、まず無理なく鳴る中音域があり、そこから低音域や高音域へ広がっていくと考えています。

     

まずは、楽に、効率よく、自然に鳴っている中音域を作ること。

     

そこを基準にして、息の状態を少しずつ変えながら音域を探していきます。

鏡を見ながら、口を絶対に動かさない

私が実際に行っている基礎練習の一つに、鏡を見ながら、口を絶対に動かさずに音域を移動させようとする練習があります。

たとえば、次のような音型です。

A5 → A4 → A5 → E6(倍音)→ A5

この時、鏡を見ながら、口元が少しでも動いていないかを確認します。

     

低い音に行く時に口をゆるめない。

高い音に行く時に口をすぼめない。

音が出ないからといって、頭部管の当て方や角度を大きく変えない。

     

この練習では、本当に口を動かさないようにします。

少しでも口で対応してしまうと、いつもの癖で音域を変えてしまうからです。

     

ただし、これは口を固める練習ではありません。

     

口を力で固定するのではなく、口元の大きな変化に頼らず、息のコントロールを学ぶための練習です。

身体感覚は、目的ではなく結果として捉える

ここでいう「息を変える」とは、身体の使い方を先に決めてしまうという意味ではありません。

     

お腹に力が入ること自体が悪いわけではありません。

口元や身体に何らかの働きが生まれることも、当然あります。

     

大切なのは、順番です。

     

「お腹に力を入れたから、音が変わる」のではなく、

     

「息を変えようとした結果、お腹に働きを感じた」。

     

この順番で考えたいのです。

     

たとえば、息のスピードや密度を変えようとした時、結果として胴体の内側に支えのような感覚が生まれることがあります。

その感覚によって音の反応が良くなったり、音程が安定したり、息が抜けすぎずに保たれたりするなら、その感覚は大切にしてよいと思います。

     

ただし、最初から「お腹に力を入れよう」と考えると、腹筋を固める方向に向かいやすくなります。

その結果、息が重くなったり、音の立ち上がりが鈍くなったり、身体全体が固まってしまうこともあります。

     

見たいのは、身体のどこに力を入れたかではありません。

     

その結果、息がどう変わり、音がどう反応したかです。

音域が変わらなくても、練習には意味がある

この練習の目的は、音域を移動させることだけではありません。

大切なのは、口を変えずに、息だけで音を動かそうと試みることです。

     

たとえA5からA4にうまく下がらなくても、E6の倍音が鳴らなくても、その試みの中で多くのことを感じ取ることができます。

     

息のスピードはどう変わったか。

息の量は増えたのか。

音色は明るくなったのか、暗くなったのか。

音程は上がり気味なのか、下がり気味なのか。

身体のどこかに力が入ったのか。

     

それを観察することが、この練習の大切な目的です。

     

オクターブが成功したかどうかだけを見るのではなく、自分の息がどのように変化しようとしているのかを知る。

     

その積み重ねが、音域をコントロールする力につながっていきます。

同じA5の中にも、たくさんの種類がある

同じA5でも、実は一つではありません。

A4に近いA5。E6の倍音に近いA5。その中間にあるA5。

     

音名としては同じA5でも、音色、音程、息のスピード、響きの密度、次に向かいやすい方向などが違います。

   

音を「当たった」「外れた」だけで考えると、A5はただのA5です。

ただ音を当てるのではなく、その同じ音の中にある幅を感じ取ること。

     

低音へ落ちそうなA5。

高い倍音へ向かいそうなA5。

真ん中で安定しているA5。

     

そして、その中を通って音域を移動しようとすること。

     

そこに、この練習の面白さがあります。

低音はぼけすぎず、高音は頑張りすぎない

低音域は、口を緩めたり、息を緩くしたりすると出しやすく感じることがあります。

けれど、それに頼りすぎると、音の芯がなくなり、ぼけた音になりやすくなります。

     

反対に高音域は、口をすぼめたり、息を強く押し込んだりすると出しやすく感じることがあります。

けれど、それに頼りすぎると、音が硬くなり、頑張りすぎた響きになりやすくなります。

     

中音域を基準にして、低音域は中音域の芯を残したまま。

高音域は中音域の柔らかさを残したまま。

     

その感覚を作るために、あえて口を動かさず、息だけで音域を探していきます。

変えない練習は、変えすぎないための練習

音域を変えるために、毎回口を作り直す。

それでも音は出るかもしれません。

けれど、音楽として考えた時、低音・中音・高音が別々のものになってしまうことがあります。

     

私が目指したいのは、音域ごとに分かれた音ではなく、低音から高音まで一本の芯でつながった音です。

     

口で音を探すのではなく、息で音の状態を探す。

その中で、同じ音の中にある幅や、音域が変わる境界線を少しずつ感じ取っていく。

     

この練習は、音域を変えるための練習であると同時に、変えすぎないための練習でもあります。

小さな変化を感じ取れるようになると、フルートの音はもっと自由に、もっと自然につながっていくのではないかと思います。

     

島村楽器 名古屋パルコ店

フルート・オカリナ インストラクター

森川 健士

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