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なぜ中音域から音を作るのか─フルートの「地声」を考える【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】
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前回の記事では、鏡を見ながら口を絶対に動かさず、息だけで音域を動かそうとする練習について書きました。
今回は、その中で出てきた「中音域を基準にする」という考え方について、少し深く書いてみたいと思います。
多くの教本やプレイヤーが「低音域から音を作る」という言葉を残しているので、この考えがすべてではありません。
最終的には自分に合った奏法を見つけることが大切です。
1つの考え方の引出しとして、この理論を考えていただけますと幸いです。
フルート・オカリナ インストラクター森川 健士
クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。
CONTENTS
私の音域の捉え方
一般的な音域の分け方とは少し違うかもしれませんが、私は便宜上、次のように考えることがあります。




この分け方は、あくまで私自身が奏法を考えるうえでの整理です。
低音域は、息や唇が緩くなりすぎても、それより下の音が鳴らない音域です。
そのため、必要以上に緩い息、緩い唇で吹いてしまいやすい。
結果として、音は出ていても、芯がなく、ぼけた響きになってしまうことがあります。
一方で、高音域や最高音域は、低音域とは逆の問題が起こりやすいです。
頑張っても、なかなか裏返らない。
強く吹いても、なんとか音が出てしまう。
そのため、息を押し込みすぎたり、口をすぼめすぎたり、身体を固めたりして、必要以上に頑張って吹いてしまいやすくなります。
中音域は、声でいう「地声」に近い

私は、フルートの中音域を、声でいう「地声」に近いものとして考えています。
人間の声には、自然に出しやすい高さがあります。
もちろん、それより低い声も、高い声も出せます。
けれど、極端に低い声や高い声を出す時には、少し意識が必要になります。
フルートも、それに似ていると考えています。
私にとって中音域は、自然に息を入れた時に、無理なく鳴ってほしい音域です。
そこから低音域へ広がり、高音域へ広がっていく。
つまり、中音域がニュートラルポジションです。
「なんとなく吹いた音」が中音域であってほしい
フルートで、何も特別な操作をせず、自然に息を入れた時。
その時に鳴る音は、中音域であってほしいと私は考えています。
もし、なんとなく吹いた音が低音域寄りになってしまうとしたら、それは「低音が得意」というより、奏法そのものを見直す必要がある、と考えています。
頭部管の当たる位置が合っていない。
歌口のふさぎ具合が適切でない。
アパチュアが大きすぎる。
口が緩みすぎている。
息が効率よく音になっていない。
そういった状態のまま低音域が出ている場合、その低音は本当に豊かに響いているというより、息や口が緩みすぎた結果として鳴っている可能性があります。
中音域を基準にするということは、その中音域が楽に鳴っていなければいけないということです。
頑張って中音域を鳴らしている状態で、そこから低音域や高音域へ移動しようとしても、基準がすでに無理をしているため、練習の意味が薄くなってしまいます。
中音域は「簡単な音域」ではない
中音域は、簡単だから基準にするのではありません。
息の状態が音に表れやすいから、基準にしやすいのです。
緩みすぎれば、オクターブ下がる。
頑張りすぎれば、倍音が出る。
中音域は、息の状態が比較的素直に音へ反映される音域だと感じています。
だからこそ、中音域で無理なく鳴る状態を作ることは、低音域や高音域へ広がっていくための土台になります。
頑張って鳴る中音域では、基準になりにくい
中音域を基準にする時に、私が一番避けたいのは、頑張って鳴らしている中音域です。
音は鳴っている。
けれど、息を押し込んでいる。
口元が緊張している。
音の反応が重い。
音程が不安定。
吹いていて余裕がない。
この状態の中音域を基準にしてしまうと、そこから低音域や高音域へ広げようとしても、すべてが頑張る方向へ向かってしまいます。
地声という言葉を使うなら、まずその声が自然である必要があります。
張り上げた声を地声として扱うと、そこから低い声も高い声も不自然になってしまう。
低音域は、中音域から派生する

低音域を吹く時、ただ口を緩めればよいわけではありません。
たしかに、口を緩めたり、息を柔らかくしたりすると、低音は出しやすく感じることがあります。
けれど、それに頼りすぎると、音の芯がなくなります。
低音域は、中音域から切り離された別の吹き方ではなく、中音域から少し低音側へ派生した音域だと考えています。
中音域の芯を保ったまま、息の状態を少し低音側へ寄せていく。
そうすることで、低音域でもぼけすぎない音を目指せるのではないかと思います。
高音域も、中音域から派生する

高音域も同じです。
高音域は、頑張って吹くものだと思われやすい音域です。
口をすぼめる。
息を強くする。
身体を固める。
音を外さないように、気合で当てにいく。
もちろん、高音域には息のスピードが必要です。
けれど、ただ頑張って出した高音は、音が硬くなりやすいと感じます。
高音域も、中音域から切り離された別の吹き方ではありません。
中音域の柔らかさや自然さを残したまま、息の状態を少し高音側へ寄せていく。
その感覚があると、高音域でも頑張りすぎない音に近づいていきます。
中音域は、奏法の現在地を映す

中音域は、ただの中間地点ではありません。
今の奏法がどうなっているかを映してくれる場所だと思っています。
息が緩みすぎていれば、下へ落ちやすい。
息が頑張りすぎていれば、倍音へ向かいやすい。
口元が硬ければ、音が硬くなる。
息が効率よく入っていれば、自然に響く。
つまり、中音域は、自分の状態を教えてくれる音域でもあります。
だからこそ、私は中音域から音を作ります。
低音を作るためにも。
高音を作るためにも。
音域を超えて一本芯のある音を作るためにも。
まず地声のように、無理なく鳴る中音域を作る。
そこから音域を広げていくことが、フルートの音を自然につなげる土台になるのではないかと思います。
島村楽器 名古屋パルコ店
フルート・オカリナ インストラクター
森川 健士
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