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発表会に出る意味─上手さを証明するためではなく、音楽を分かち合うために【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】
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- タグ管楽器講師・インストラクター
「もっと上手になってから発表会に出たい」
「失敗して恥ずかしい思いをしたくない」
「自分の演奏を人に聴かせてもいいのだろうか」
発表会のお話をすると、こうした不安を口にされる方が少なくありません。
けれど私は、発表会は上手な人だけが出る場所ではないと思っています。
今回は、先日行われた発表会を通して改めて感じた、人前で演奏する意味についてお話しします。
フルートインストラクター森川 健士
クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。
CONTENTS
「最初の音が出なかったらどうしよう」
先日の発表会で、舞台袖にいたある生徒さんが、
「出だしの音が出なかったらどうしよう」
と不安そうに話していました。
本番前のレッスンでも、出だしを心配されていました。
実際の演奏は、すべてが思い通りにいったわけではありません。
それでも、緊張しながら最後まで音楽を届け、全体を通して非常に良い演奏になりました。
舞台を降りた後に見えた笑顔が、とても印象に残っています。
完璧に演奏できたから笑顔になったのではないと思います。
緊張を抱えながら舞台に立ち、最後まで自分の音楽を届けられた。
そのことが、大きな喜びにつながったのかなと思います。
たった10秒で、残りの時間まで否定しない
演奏を終えた後、多くの方は自分の失敗したところばかりを思い出します。
仮に4分間の曲を演奏して、間違えた部分をすべて集めても、10秒ほどかもしれません。
それなのに、その10秒だけを見て、
「全部だめだった」
「良い演奏ではなかった」
と判断してしまいます。
けれど、残りの3分50秒には、丁寧に吹けたフレーズや、美しい音が出た瞬間、伴奏者と呼吸が合った時間があったはずです。
たった10秒の失敗で、そのほかのすべてまで失敗だったことにしないでほしいと思います。
「もっと上手になってから」は、いつになるのか
もちろん、少しでも上達してから舞台に立ちたいという気持ちはよく分かります。
しかし、「もっと上手になってから」と考え続けていると、その日はなかなか訪れません。
初めての舞台は、誰にとっても初めてです。
人前で演奏する緊張感や、会場の響き、一度きりの本番で音楽を届ける感覚は、実際に経験しなければ分かりません。
だからこそ、少し勇気を出して飛び込み、早く経験することにも大きな価値があります。
私の初めての発表会
私が初めて発表会に出演したのは、中学生の頃だったと思います。
演奏したのは、マスネ作曲《タイスの瞑想曲》でした。
とても緊張していたため、本番のことはほとんど覚えていません。
きっと失敗も多く、今聴けば、決して満足できる演奏ではなかったと思います。
それでも、期限が決められた中で一曲に集中し、長い時間をかけて向き合った経験は、その後の私の大きな糧になりました。
発表会がなければ、あれほど一つの曲を練習して、最後まで仕上げる経験はできなかったかもしれません。
完璧でなくても、音楽は楽しい
先日の発表会では、私もインストラクター演奏をしました。
ピアニストの素晴らしい演奏に乗せられて、あまりの楽しさに少し前のめりになり、ずれてしまった瞬間がありました。
演奏中の私も、
「おっ」
と思いました(笑)。
それでも、すぐに音楽へ戻り、最後まで素敵なピアニストと演奏する時間を楽しむことができました。
完璧だったから楽しかったのではありません。
少しの事故も含めて、共演者と一緒に音楽を創ることそのものがとても尊く、そして、あまりにも愛おしい時間を楽しめたからです。

発表会までの時間すべてに価値がある
発表会には、普段のレッスンとは違う価値があります。
本番という期限があることで、一つの曲へ集中して取り組む。
曲の表現を考える。
伴奏者と音を合わせる。
衣装を選び、舞台へ立つ準備をする。
他の出演者の演奏を聴く。
実際に出演された生徒さんからも、
「好きな曲を楽しく吹けた」
「ほかの出演者の演奏から刺激をもらえた」
「先生がレッスンで言っていたことが、人の演奏を聴いて理解できた」
などの感想をいただいています。
私は、人前で演奏する意味は、上手さを証明することではなく、自分が長い時間をかけて向き合った音楽を、誰かと分かち合うことだと思っています。
発表会の価値は、本番の数分間だけにあるのではありません。
曲を選び、練習し、悩み、伴奏者と音を合わせ、緊張しながら舞台へ向かった、その時間のすべてにあります。
今の自分の音で、舞台に立っていい
発表会への出演は、決して義務ではありません。
人前に出ず、自分のために音楽を楽しむことも、素晴らしい音楽との向き合い方です。
けれど、少しでも「出てみたい」という気持ちがあるのなら、もっと上手になる日を待たなくてもよいと思います。
失敗しても、音楽は続いていきます。
今の自分の音で、誰かと音楽を分かち合う。
勇気を出して舞台へ立った経験は、きっと何物にも代え難いものになります。
島村楽器 名古屋パルコ店
フルートインストラクター 森川 健士
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