「学生時代は吹けたのに、今は音すら出なかったらどうしよう」 「昔できた曲が吹けない自分を見るのが怖い」 「何十年も空いているから、もう全部忘れてしまったかもしれない」 以前フルートを吹いていた方から、こうした不安を伺うことがあります。 初心者であれば、「できなくて当たり前」と思えるかもしれません。  […]

昔フルートを吹いていたあなたへ─ブランクがあっても、音楽はまた始められる【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】

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公開:2026年07月12日

更新:2026年07月12日

「学生時代は吹けたのに、今は音すら出なかったらどうしよう」

「昔できた曲が吹けない自分を見るのが怖い」

「何十年も空いているから、もう全部忘れてしまったかもしれない」

以前フルートを吹いていた方から、こうした不安を伺うことがあります。

初心者であれば、「できなくて当たり前」と思えるかもしれません。

しかし経験者は、吹けていた頃の自分を知っています。

だからこそ、昔と同じようにできないことが怖くなるのです。

フルートインストラクター森川 健士

フルートインストラクター森川 健士

クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。

「昔はもっと吹けた」と思うのは自然なこと

昔より指が動かない。

息が続かない。

以前は苦労しなかったフレーズが難しい。

そう感じれば、落ち込むのも無理はありません。

けれど、今フルートを吹くのは、昔の自分ではありません。

年齢や体力、歯並び、身体の状態、生活環境も変化しています。

吹く頻度が減れば、たくさん練習していた頃より上達に時間がかかるのも当然です。

昔の吹き方が、現在の身体には合っていないだけかもしれません。

時間が少ないなら、短い時間でも効果的な練習方法を探す。

体力が変わったなら、力に頼らず楽に吹ける方法を学ぶ。

再開は、昔の自分に追いつく競争ではありません。

今の自分に合った吹き方を、もう一度作っていく時間です。

私も、昔の自分と比べることがあります

私自身、局所性ジストニアの影響もあり、指が自由に動いていた頃の自分を思い出すことがあります。

「あの頃の方が上手だった」

「指に制約がなかった分、もっと自由に音楽ができた」

そう思うこともあります。

もしかすると、過去の自分を少し美化しているのかもしれません。

しかし、挫折や苦労を経験しなければ、現在の演奏や考え方は生まれませんでした。

以前と同じことができなくても、今の自分にしかできない音楽があります。

昔の自分を取り戻すのではなく、昔の経験を材料にして、新しい自分を作ればよい。

少しずつ、そう思えるようになりました。

一度身につけたものは、すべて消えていない

中学や高校の吹奏楽部以来、数十年ぶりにフルートを持つ方もいらっしゃいます。

最初は、

「もう全部忘れています」

と不安そうにされていても、実際に息を入れてみると音が鳴る。

ゆっくり吹けば、指も少しずつ動き始める。

そして、

「意外と吹けるものですね」

と笑顔になる方もいます。

頭では忘れているつもりでも、身体の中には残っていることがあります。

吹いているうちに、

「ああ、こうだった」

と思い出す瞬間もあります。

すぐに以前の状態へ戻らなくても大丈夫です。

忘れたのではなく、思い出すまでに少し時間が必要なだけかもしれません。

難しい曲より、小さな成功を見る

昔吹けた難しい曲ができないからといって、すべて下手になったわけではありません。

長いブランクがあったのに音が鳴った。

指が動いた。

長い音を伸ばせた。

昔好きだった曲を一小節思い出した。

まずは、そうした小さな成功を大切にしてほしいと思います。

以前できたことと比べて落ち込むより、今日できたことを一つ見つける。

その積み重ねが、新しい演奏を作っていきます。

昔より深く感じられる音楽がある

技術や体力だけが、音楽を作るわけではありません。

私の師匠から、「音楽に共感しなさい」と教わったことがあります。

同じ涙でも、声を上げて泣く悲しみと、静かに一筋だけ流れる涙では、その感情は違います。

寂しさの中に喜びがあったり、嬉しいのになぜか涙が出たりすることもあります。

人生経験を重ねるほど、音楽の中にある複雑な感情を、より細かく感じ取れるようになります。

昔より指が動かなくても、昔より深く感じられる音楽があるのです。

今の自分の音で、もう一度始める

再開の方法に、決まった正解はありません。

昔好きだった曲から始めてもいい。

思い切って基礎から学び直してもいい。

忘れた指遣いは、一緒に思い出せばいい。

昔の吹き方を生かしながら、現在の身体に合う方法を一緒に探すこともできます。

昔の自分に追いつく必要はありません。

過去の経験も、決して無駄にはなっていません。

その経験に、今の身体と感性を重ねて、新しい音楽を作ればよいのです。

再開するということは、過去の自分に戻ることではありません。

今の自分の音で、もう一度音楽を始めることです。

島村楽器 名古屋パルコ店
フルートインストラクター 森川 健士

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