「練習しているのに全然上手くなっていない気がする」       そんな時は、本当に上達していないのではなく、できることが増えたからこそ、今まで見えなかった課題が見えるようになったのかもしれません。       昨日まで「できたら嬉しい」と思っていたことが、いつの間にか「できて当たり前」になる。 昨日 […]

上達した気がしないあなたへ─昨日までの目標が、今日の最低条件になっていく【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】

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公開:2026年09月12日

更新:2026年09月12日

「練習しているのに全然上手くなっていない気がする

     

そんな時は、本当に上達していないのではなく、できることが増えたからこそ、今まで見えなかった課題が見えるようになったのかもしれません。

     

昨日まで「できたら嬉しい」と思っていたことが、いつの間にか「できて当たり前」になる。

昨日までの目標が、今日の最低条件になっていく。

     

私は、レッスンをしているとそんな変化を何度も目にします。

フルート・オカリナ インストラクター森川 健士

フルート・オカリナ インストラクター森川 健士

クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。

悩みの内容が変わったら、それも上達

レッスンではよく、

     

「今日の調子はどうですか?」

「今の音はどうでしたか?」

「今の演奏はどうでしたか?」

     

と、まずご本人の感覚を伺います。

     

すると、

     

「今日は少し調子が悪い気がします」

「今の音、ちょっと硬かったです」

「あまり表現できなくて気に入りません」

     

といった言葉が返ってくることがあります。

     

もちろん、その感覚を否定することはありません

     

なぜ硬く感じたのか。なぜ吹きにくかったのか。

楽器を当てる位置、息の方向、口元の力み、姿勢など、その日の状態を見ながら原因を一緒に探していきます

     

でも、そこで私は時々思うのです。

     

     

この悩みを持てるようになったこと自体が、以前から見れば大きな成長なのではないか。

     

     

以前は「音が鳴るかどうか」が悩みだった方が、今は「もっと良い音色にしたい」と考えている。

一音目が出るか不安だった方が、今は高音域の音色を気にしている。

一曲通すのも大変だった方が、今は曲全体の表現を考えている。

音を出すだけで精一杯だった方が、「うまく表現できない」と悩んでいる。

     

それは、本当に「上達していない人の悩み」でしょうか。

「出るかどうか」から「何を出すか」へ

以前、会員様にこんなお話をしたことがあります。

     

「この前までは音が出るかどうかで悩んでいましたよね。今は音楽のことを考えられている。これってすごい成長じゃないですか」

     

音が出るか、出ないか。

そこを越えると、次は「どんな音を出すか」を考え始めます。

料理で言えば、「食べられるものを作れるか」という段階から、「自分はどんな料理を出したいか」を考える段階へ進んだようなものです。

     

以前なら、音が出ただけで嬉しかった。

今は、その音の色や響き、フレーズが上手くできない。

     

それは「できなくなった」のではありません

     

見ることのできる世界が広がったのです。

耳が育つと、自分の演奏が気になり始める

上達するのは、指や息の技術だけではありません。

     

も育ちます。

     

以前なら「吹けた!」で満足できた演奏から、

     

「少し音程が気になる」

「ここはもっと柔らかく吹きたい」

「今のフレーズは流れが止まった」

     

と感じ取れるようになる。

      

演奏そのものは以前より上達している

けれど、聴く力の方がさらに先へ進んでいる

     

そんな時、自分では下手になったように感じることさえあります。

     

新しい違いに気づけたこと。

今まで聞こえなかったものが聞こえるようになったこと。

     

それも、成果として数えてよい立派な成長だと私は考えています。

今日の調子と、これまでの成長は別のもの

今日は昨日より吹きにくいかもしれません。

     

昨日より力んでいるかもしれない。

今日は思ったような音が出ないかもしれない。

     

でも、

今日の演奏が昨日より悪かったことと、長期的に上達していないことはです。

     

半年前には音を出すだけで精一杯だった人が、今日は「音が少し硬い」自分で判断している。

     

その時点で、立っている場所はもう違います。

      

毎日自分の演奏を聞いている本人ほど、その変化には気づきにくいものです。

      

先生が「最初はここで悩んでいましたよ」と覚えていることで、初めて自分が歩いてきた距離に気づくこともあります。

昨日までの目標を、なかったことにしない

人間は、良い意味で強欲だと思います。

     

できなかったことができるようになれば、もっと良い音を求める。

それができれば、もっと自然な表現を求める。

さらにできれば、またその先が欲しくなる。

     

私は、その渇望は上達するためにとても大切だと思っています。

     

ただ、その強欲さのせいで、私たちはできるようになったことをすぐに評価対象から外してしまいます

     

昨日まで「できたら嬉しい」と思っていたことが、今日は「できて当然」になる。

     

だから、上達していても上達した気がしないのです。

「もっと」と思いながら、今の自分も認める

成長を認めることと、現状に満足することはです。

「ここまでできるようになった」と認めても、「もっと良くなりたい」という気持ちは失われません。

     

むしろ、自分の現在地を正確に知ることだと思います。

     

今日も楽器を吹いた。

今日も音が出た。

     

思ったような演奏ではなかったかもしれない。

でも、1か月前には気づけなかったことに、今日は気づいたかもしれない。

以前なら考えられなかった音色や表現に、今は悩んでいるかもしれない。

     

それなら、その変化も成果として数えてみてください。

     

上達とは、できないことがなくなることではありません

     

できることが増えたからこそ、次の「できない」が見えるようになること。

そして、以前には聞こえなかったもの感じられなかったもの気づけるようになること。

     

昨日までの目標が、今日の最低条件になっているのなら。

それは、ここまで歩いてきた証拠なのかもしれません。

     

島村楽器 名古屋パルコ店
フルート・オカリナ インストラクター
森川 健士

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