「音の出だしに息の音が混じる」 「最初だけスカッと抜けてしまう」 「タンギングをしているのに、音の出だしがはっきりしない」       フルートを教えていると、このような悩みを抱える方によく出会います。 多くの方は、音が鳴った後の響きや音色にはよく意識を向けてしまいます。 しかし実は、聴いている人の […]

フルートの音は、吹く前に決まる─音の出だしをきれいにするために【島村楽器 名古屋パルコ店|フルートインストラクター 森川健士】

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公開:2026年07月18日

更新:2026年08月09日

「音の出だしに息の音が混じる」

「最初だけスカッと抜けてしまう」

「タンギングをしているのに、音の出だしがはっきりしない」

     

フルートを教えていると、このような悩みを抱える方によく出会います。

多くの方は、音が鳴った後の響きや音色にはよく意識を向けてしまいます。

しかし実は、聴いている人の印象は、音が鳴った最初の一瞬で大きく変わります。

インストラクター森川 健士

インストラクター森川 健士

クラシックのフルート奏者として研鑽を積む一方、「和」の表現に定評がある。木製フルートを愛用し、尺八の技法であるムラ息、メリ、カリ等の奏法を取り込んだ音作りは、従来の西洋フルートの透明感に日本の陰影を重ねた音として評価を得ている。 ソロ・アンサンブルでのリサイタル、プロオーケストラの客演、その他商業施設や企業イベントでの演奏や、2025年パリ「Fête de la musipue」出演、メキシコ観光大臣ご一行の前での演奏等、様々な演奏活動を展開。 日本フルートコンヴェンション・アンサンブル部門金賞、同アンサンブルアワード部門入賞、その他コンクール入賞多数。 CBCラジオなどメディア出演もあり。

吹いてから整えるのではなく、吹く前に準備する

レッスンで私は、

「吹いてから何をするかではなく、吹く前に何をするかが大切です」

とお伝えすることがあります。

     

音が鳴ってから口の形を探す。

息を出してから、鳴る角度へ調整する。

音が出てから、ようやく響きが整ってくる。

     

この状態だと、音の中身が良くても、最初の瞬間が不安定になりやすくなります。

     

極端に言えば、ロングトーンの途中で良い音が鳴っているなら、その良い音を吹いている時の口や身体の状態を、吹く前にできるだけ再現できれば、音の出だしも整いやすくなるはずです。

タンギングだけで音を鳴らそうとしない

音の出だしが悪いと、

「タンギングが弱いのかな」

「もっと舌をはっきり使った方がいいのかな」

と考えがちです。

     

もちろん、タンギングは大切です。

しかし私は、タンギングは音を無理やり鳴らすためのものではなく、

すでに鳴る準備ができている音に、輪郭を与えるものだ

と考えています。

     

体や息の準備ができていない状態で、舌だけを強く使っても、音の頭は乱暴になったり、息だけが先に出たりします。

まず大切なのは、息が流れた瞬間に音が鳴る状態を、吹く前に作っておくことです。

森川
音の出だしでタンギングをしないこともしばしば。

切れ味の良いナイフのように

切れ味の良いナイフは、力を入れてギコギコ動かさなくても、軽く触れただけで食材にすっと刃が入ります。

フルートの音の出だしも、それに近い感覚があります。

     

強く押し込むのではありません。

乱暴に当てるのでもありません。

すでに音が鳴る準備が整っているから、軽く息が触れた瞬間に、音がすっと立ち上がる。

     

その状態を作るために、私はタンギングそのものよりも、吹く前の準備を大切にしています。

準備するのは、口・息・身体

吹く前に確認したいことは、大きく三つあります。

一つ目は、口の準備です。

音が鳴る位置に近い口の形が、吹く前にできているか。

     

二つ目は、息の準備です。

息の方向やスピード感を、吹き始める前にイメージできているか。

     

三つ目は、身体の準備です。

肩、首、喉、胸まわりが固まりすぎていないか。

     

音域や強弱、曲想によって必要な準備は変わります。

それでも、どの音であっても「鳴る準備ができてから息を流す」という考え方は、とても大切です。

ロングトーンで試してみる

まず、中音域でロングトーンをしてみてください。

音が安定したところで、一度息を止めます。

この時、喉を強く締めたり、身体を固めたりする必要はありません。

目的は我慢することではなく、音が鳴っていた時の口の形、息の角度、身体の感覚をできるだけ保つことです。

その状態のまま、もう一度息を流してみてください。

     

すぐに音が鳴るでしょうか。

     

もし音がすぐに鳴らない場合、息を止めた瞬間に口が変わっていたり、再び吹く時に角度を探し直していたりするかもしれません。

この練習は、音が出ていない時間にどれだけ身体が楽器を吹く準備ができているかを確認するためのものです。

音の始まりから、音楽は始まっている

音の出だしを整えることは、ミスを減らすためだけではありません。

     

優しく始まる音。

まっすぐ立ち上がる音。

少し息を含んだ音。

鋭く切り込む音。

     

音の始まり方が変わると、表現そのものが変わります。

音の出だしがうまくいかない時、舌だけを一生懸命動かしても解決しないことがあります。

大切なのは、息が流れた瞬間に音が鳴る準備が、吹く前にできているかどうかです。

     

音は、吹き始めてから作るものではありません。

吹く前の呼吸、口の準備、身体の状態から、すでに音楽は始まっています。

     

島村楽器 名古屋パルコ店
フルートインストラクター 森川 健士

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