私と楽器屋さん Vol.02

大学教員の仕事に就いている中西啓喜さんが初めて島村楽器に来店したのは2011年9月のこと。そのときに接客対応してくれた販売スタッフの石井 敬さん(錦糸町パルコ店)とは、もう7年以上の付き合いになります(取材当時)。ギターや音楽を通じて絆を深め、自然体で会話する光景は気心知れた友達同士のよう。そんな2人の出会いや、信頼関係についてお話を伺いました。

中西啓喜さん(左)と石井 敬さん(右)
中西啓喜さん(左)と石井 敬さん(右)

電話をくれたんですよねギターの調子はどうですか?って

もともと、フロイドローズのギターが欲しくて探していたんですね。カッコいいモデルはないかな?と思って島村楽器に行ったら、シェクターのダイアモンドシリーズがお手頃で。そのときに対応してくれたのが石井さんで。

それが2011年の9月。楽器屋の店員さんは皆さん名刺をくれますが、普通ならそれで終わることが多いんですけど、石井さんは電話をくれたんですよね。ギターの調子はどうですか?って。

フロイドローズは弦を張り替えるのが大変だったりするのですが、感じ良く対応してくれたので、あの店だったら対応してくれるかなっていう感じで付き合いが始まりました。それからの付き合いだから長いんです。お互いまだ20代でしたからね(笑)。

僕がいいなと思った石井さんの接客が、圧倒的な技術や知識があって教えてくれるというよりも、“今はこれにハマっているんですよ”っていう具合に、その時のマイブームを勧めてくるんです(笑)。

販売スタッフの中には弾きたがりな方もいて、あまり上手に弾かれるとこっちが弾きにくくなりますが、そういうこともないので僕はそこが良かったんです。あとは石井さんの人柄がつなぎ止めてくれています。

未熟さを教えてくれるというか正しい弾き方を教えてくれる

その後は、楽器を買わなくても暇つぶしに来るようなこともありました(笑)。イヤフォンの分岐アダプターを持って行って、オススメのYouTubeの音源を2人で聴いたり。

関係が1ステージ上がったなと思ったのが、2014年にグレッチのホワイトペンギンを買ったとき。それまでは10万円くらいのギターを買って、改造するというようなことをしていたんですけど、30万円を超えるギターってこんなに音がいいんだってわかりはじめて。

音がいいのはもちろん、ピッキングのニュアンスを拾うので下手なのがバレるんですよね。自分の未熟さを教えてくれるというか、正しい弾き方を教えてくれる。石井さんもそれまではもっと手軽なギターを勧めていたんですけど、本当の良さがわかる人にはハイエンドなモデルを勧めるような販売スキルが身につきはじめた頃でした。

グレッチの次に買ったギターがゼマイティス。それまでグレコゼマイティスは持っていたから感覚は知っていたんですけど、全然違うなと。このクラスのギターを持つようになってから、弦のゲージも落としたしピックの厚みも薄くしました。結局、硬かったり太かったりするパーツってわりとそういう音しか出ないんですけど、細かったり薄かったりするパーツを使うと、弾き方のニュアンスさえつければわりと強い音を出すことができる。そんなことを、このクラスのギターを持ってようやくわかってきたんです。

店員さんと話しながら買うプロセスも含めて音楽を楽しむことだと思う

島村楽器の魅力は、店員皆さんの愛想がいいこと(笑)。これは石井店長の教育が行き届いているからじゃないでしょうか。石井さんがいないときでも対応してくれますし、“次いつ来ますよ”って教えてくれます(笑)。

僕にとってギターは人生を豊かにするものなんでしょうけど、今日話していて思ったことは、弾いてて楽しいとか音楽が好きなのはもちろん、ギターを弾くことで人とつながれるんです。結局、音楽と楽器って人に合わせるべきものだと思うんです。音を楽しむという意味で人生を豊かにするけど、ギターを通じて人とコミュニケーションが取れることも同じくらい大事なんだって、石井さんとの関係を通じて思うようになりました。

最近はギターもエフェクターも通販で買えるわけじゃないですか。しかも、YouTubeでは試奏したときの音も聴ける。でも僕はそれが楽しいとは思わないんです。実際に弾かせてもらって、“高いよ(笑)”って店員さんと話しながら買うプロセスも含めて音楽を楽しむことだと思うので。そういう意味で店頭販売の良さを楽しんでいます。そしてそれが、僕にとっては島村楽器なんです。

こちらの記事は、2018年12月に島村楽器(株)の社内報に掲載した記事を一部編集し、出演者の許諾を得て転載しております。

この記事を書いた人

溝口 元海

エディター、ライター、フォトグラファー。