可愛くておいしい!アコギ型のアイシングクッキー作りに挑戦

味を楽しみ、香りを楽しみ、見た目を楽しむお菓子。中でも表面をデコレーションする“アイシングクッキー”は可愛らしさ抜群です。星や植物、動物、乗り物などアイシングで作れるデザインは多種多彩で、楽器のクッキーも作れてしまうのです! そこで今回は、アコースティックギター型のアイシングクッキー作りに挑戦しました。

教えてくれるのはこの方

3:biscuit(スリービスケット)武藤麻衣さん
千葉県柏市のアイシングクッキー専門店。一般社団法人 日本サロネーゼ協会(JSA)のアイシングクッキー認定講師で、仕事の傍ら、クッキー販売や作家活動、ワークショップの実施など幅広く活動。2022年9月25日(日)梅田アクトスリーホールで開催される《私のうさぎ展》に出展予定。

■Instagram:https://www.instagram.com/3biscuit_mai/?igsh

アイシングは“描く/塗る/盛る”の3ステップ! まずは練習からスタート

この日の製作目標は「アコースティックギター」「文字入りフラッグ」「音符」です。正直なところ、絵心がなくお菓子もめったに作らない筆者。果たしてアコギのような精巧なデザインを描くことはできるのでしょうか。

まずは基礎を教えてもらいながら「丸型」「星型」のクッキーで練習することに。

クッキーは事前にオーダーをしておいたものを先生が用意。
アイシングを乗せることを考慮して、甘くしすぎないのが先生流
アイシングも手作り

武藤先生によると、アイシングの基本ステップは①描く②塗る③盛る。硬めのアイシングで外枠を“描き”、柔らかいアイシングで中を“塗り”、絵を描いたりトッピングしたり“盛り”つけていきます。

最初は直線を描く練習からスタート。アイシングの持ち方や力加減を丁寧に教えてもらい、早めにコツをつかめました。はじめは線を引くだけでも難しく感じましたが、慣れると楽しいです。

「そうそう、上手上手!」と、褒めて伸ばしてくれる先生
星型と丸型のクッキーで練習中

曲線が歪んでしまったり塗りムラができてしまったりと、思い通りにならないこともありましたが、軌道修正のワザも教えてもらい何とかサマになりました。アイシングが固まる前であればやり直しできますが、10分ほどで固まってしまうため、スピードも大切です。

そして本番へ……フラッグと音符のアイシングで肩慣らし

「そろそろ本番に入りましょうか」という先生の声掛けで、開始から1時間弱経過していることに気が付きました。夢中になって、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

使用した道具。左から、アイシングの修正に使用する筆、食用ニードル(つまようじでも可)、アイシングの先端を切るためのハサミ、コルネ
アトリエには数多くのクッキー型がありました

まず、フラッグを塗るためのアイシング作りから。アイシングは、粉糖と卵白を混ぜて作り、水で硬さを調整。必要に応じて色付けをします。着色は主に、天然色素や着色料、イチゴパウダーやココアなどの食材で行います。

組み合わせ次第で自分だけの色を作ることが可能
着色料はほんの少しだけ

ギターを描く勇気がまだ出なかったため、フラッグと音符から作業しました。

フラッグの外枠を描く場面。曲がり角の線が歪んでいます
音符は、符頭(たま)のあとに符幹(ぼう)と符尾(はた)を描きます

思いのほか苦戦し、やり直す場面も。先が思いやられます。

いよいよ、アコースティックギターのアイシングに挑戦

ついにアコギのアイシングに挑みます。基本の工程はこれまでと同じですが、作業の順番がポイントに。まずはボディの外枠を描き、サウンドホールの部分を茶色のアイシングでベタ塗りしてから円を描きます。そうするとボディを塗ったあとに段差がつき、立体感が出ます。

先生の見本。線だけでもアコギらしく見えます
サウンドホールの円が歪んだため、筆に水をつけて修正中

さらにブリッジ→ヘッド→ネックの外枠を描きます。

ネックが細すぎると飾りつけの際に弦が描きにくくなるため、太めのネックを目指しました。しかし、逆に太くなりすぎてバランスがおかしなことに……。

その後、ボディ→ヘッド→ブリッジ→ナット→指板の順に塗っていきます。パーツが多い分、難易度も上がります。

ネック部を塗っているところ。太いネックはそのまま活かすことに
色はローズウッド指板のイメージ

飾りつけ時に塗った部分がよれてしまわないよう、フードドライヤーでしっかりと乾かします。

塗り終えたアコギ。左が先生、右が筆者
フードドライヤーにクッキーを置いて乾燥させます

作業も終盤! 最大の難関“弦”のアイシング

アイシングが固まったら、仕上げの飾りつけ。ペグ→フレットの順に描いていきます。

先生のお手本。ペグを描いています
フレットを描くと、よりリアルなアコギに近づきます

そして最大の難所“弦”へ。まっすぐ線を引くという基礎の作業ではありますが、ペグからブリッジまでの距離が長く、難易度は最大級。弦と弦の間隔が狭いのも難しい点です。

弦を描く作業は、かなりの集中力を必要とします。描けば描くほど(弦の本数が増えるほど)難しくなるという状況のなか、筆者は後悔しました。「なぜ打ち合わせのときに“アコギを作りたい”と言ってしまったのだろう」「弦が4本のウクレレにすればよかった」と…。

先生は隣で「あと3本!」「あと1本! ラスト~!」と励ましてくれます。アトリエはまるで運動部の練習場のようなテンションに。

素早くきれいに弦を描く先生。6弦から順に描くのがおすすめ
緊張のあまり手が震えだしました

無事に6本の弦を描き終えると、安堵のため息がもれました。最後に、フラッグに文字を入れます。

フラッグに「Happy Jam」の文字を描き、筆で形を整えています
スペースが余ったため、花の飾りを追加

そして完成! アコギの形は少々いびつですが、アコギ版ビザールギター(※変わった形状のギター)ということにしておきましょう。苦労した分、感慨深い気持ちになりました。

武藤先生の作品
筆者の作品

最後に、武藤先生にアイシングクッキーの魅力についてお聞きしました。

アイシングは絵を描くのが苦手な人でも挑戦しやすいと思います。私も学生の頃は美術の成績が「2」だったんです(笑)。ほかの先生でも美術が苦手だった人は多いので、絵に自信がない方でも大丈夫です! ただ、こだわっていくと色の組み合わせや見せ方を考えたり、気温や湿度によってアイシングの硬さを変えたり、アイシングクッキーは奥深いですね。

 絵が苦手でも続けられたのは、やっぱり楽しいから。私はクッキーの販売をメインで行っているんですが、アイシングクッキーはプレゼント需要が多いんです。プレゼントを選ぶ人と受け取る人がいて、その人たちに喜んでもらえるクオリティにするには練習するしかないなって。好きなことだと練習もつらくないですし、“今日はこのラインがうまく引けた”とか、上達がわかると嬉しいですね。そういう面では楽器を弾くのと似ているかもしれません。上から塗ってごまかしても、基礎がずれていると全体で見たときに“ん?”となってしまうので、基礎は一番大事ですね。

 アイシングを自分でやろうとすると準備が手間なので、ワークショップで体験してみるのが早いかもしれないですね。SNSでも情報がたくさん出ているので、最寄りの駅名などで調べるといいと思います。

武藤先生のワークショップには2歳の子が参加したこともあり、老若男女問わず、親子でも楽しめるのもアイシングの魅力といえるでしょう。作って楽しい、もらって嬉しいアイシングクッキー。ぜひ、皆さんもこの楽しさを体感してみてください。

「ホッ、と一息ついてみる」特集について

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この記事を書いた人

神保未来

編集者、ライター、時々カメラマン。『Go!Go!GUITAR』の編集を経て、現在は音楽媒体を中心にフリーランスで活動中。趣味はフィルムカメラで写真を撮ること。