ギターを始めるとぶつかる、練習や演奏での悩みや苦労。乗り越える方法をあのアーティストに聞いてみた。

ギターをかっこよく演奏する姿にはだれもが憧れますね。自分もそうなりたくて楽器を手に入れても、うまく演奏できるまでにはいくつものハードルがあります。地道な練習ばかりで心が折れそうになったり、ギターがつまらなく思えたりして、演奏がいやになってしまうことも……。そういえば、自由に楽器を弾きこなしているギタリストの皆さんは、どうやってそのハードルを乗り越えてきたんでしょうか? 今回は4人のアーティストの方に、練習へのモチベーションを保ってこられた理由や、練習に行き詰まったらどうするかなど、気になることをいろいろ聞いてみました。

「自分の中のオン・オフを、うまく切り替えて楽しもう!」

まず最初はこの方。EXiNAの西沢幸奏(にしざわ しえな)さんです! 17歳でデビューし、その力強い歌声とパワフルなギターでアニソンを中心に大活躍してきた西沢さん。昨年ソロプロジェクトEXiNAを立ち上げ、ロック色をさらに強めたエキサイティングなプレイスタイルが人気。ドイツ、中国、香港、シンガポールなどでもライブを敢行しています。

西沢幸奏さん

ー西沢さん、こんなことをお聞きするのもなんですが、過去に「ギターの練習が面倒」と感じたことはありますか?

西沢:正直……今でもそういうことはあります(汗)。練習しているときは、夢中になっていて時間を忘れるほどなのですが、いざ本番を迎えて上手くいってしまうと、達成感を得るとともにやる気を喪失してしまうことも。一度そうなってしまうと、練習に手をつけるのがとても面倒に感じてしまいます。

ーやりきったと感じたら満足してしまい、そのあとしばらくはなにもする気が起きない……パワフルな西沢さんにもそういうことがあるのですね。そんなときは、どうやって乗り越えているのでしょうか。

西沢:その時々によりますが、思い切ってギターの練習とはまったく別のことをしてみたり、音楽から一度離れてみたりすることが多いように思います。特に、親しい友達と遊んだりすると、うまく気持ちが切り替わって、また練習に向き合えることが多いですね。

ーどうしても練習に気持ちが向かないときはいったん止めて、友達と遊びに出かける、と。これは気分転換として最高ですね。パーッと楽しく遊んだあとは、なにか新しいアイデアも生まれそうです。

西沢:自分の中でオンとオフのモードを作って、それをうまく切り替えながら音楽を楽しめばいいのではないでしょうか。私もオンとオフとの切り替えが苦手なのですが、それができるようになれば、より長く音楽を続けられると思いますよ。

ーちょっと練習が面倒になってきたなと思ったら、煮詰まるまえに上手に切り替えていくことが大切なのですね。最後に、西沢さんの、「ギターを弾いてきてよかった!」と思った瞬間を教えてください。

西沢:もちろん、練習がうまくいき、自分で納得した演奏ができると嬉しい。でもそれ以上に、他の人から「良いね!」と言ってもらえると、すごくやりがいを感じます。ただ漠然と“ひとに喜んで欲しいな~”という感じで頑張るよりも、誰か一人、大切な人を思い浮かべながら奏でる音は、より魅力的なものになるかもしれませんね。ファイト!

ー西沢さんに「ファイト!」と言われて、勇気がわいてきました!力強いプレイには、いつも励ましの気持ちが込められているように思います。「大切な人を思い浮かべながら」という言葉がステキですね。

西沢幸奏さん

西沢幸奏 プロフィール

【EXiNA】(イグジーナ)は、西沢幸奏(Shiena Nishizawa)のソロプロジェクト。 1997年2月23日生(23才)。埼玉県出身。星座:魚座/血液型:B型。身長148cm。 2015年に高校3年生でメジャーデビューを果たした西沢幸奏。 148cmの小さな身体からは想像出来ないアグレッシブなステージと 圧巻の歌唱力に更なる磨きをかけ、シーンに新たな挑戦状を叩きつける。 プロジェクト名【EXiNA】はXI(シ)E(エ)NA(ナ)のアナグラムとなっていて、 自らを再度組み直す意思の現れでもある。 2019年7月10日 SACRA MUSIC(Sony Music Labels Inc.)よりデジタルシングル「EQ」をリリース。続いて8月21日にはCDミニアルバム「XiX」をリリース。以後、配信リリースを重ねている。2020年秋には、アニメ、ゲームと22年に渡り愛され続けている「メダロット」のゲームBGMのロックアレンジサウンドトラック「MEDAROCK」の新曲にシンガーとしての参加が決定。また、11月28日(土)に行われるイベントへの参加も決まっている。

「難しい練習が楽しめないなら、まずは楽しいことから始めよう」

続いては、a flood of circleのフロントマンでギタリスト/ボーカリストの佐々木亮介さんです! a flood of circleはロックだけでなく、ブルース、ソウル、ラップなどさまざまな音楽のジャンルを取り入れたサウンドと、心をぐっと掴まれるメッセージ性の強いリリックが印象的なバンド。そんな佐々木さんは、近年ソロや「THE KEBABS」などのバンドにも参加して活動の幅を広げています。

佐々木亮介さん

ー佐々木さんはこれまで、ギターの演奏や練習が大変だなとか、面倒だなと思ったことはありますか?

佐々木:最初に「無理だな」と感じたのは「速弾き」というものに出会ったときですね。

ーギターの速弾きができることが、ひとつのステイタスであるようにとらえる人も多いですね。でも佐々木さんはそうではなかったと。ではどうやってギターを学んでいったのでしょうか。

佐々木:ギターを始めた後、楽器の雑誌を読んだり楽器をやってる知人と話したりする過程で、漠然と「上手い方が偉い」という雰囲気を感じたんだけど、テクニカルなことを根気よく練習するというのは俺に向いてないと感じて、すぐ諦めたんです。それより自分が向かって行きたかったこと、例えば良い曲を書きたいとか、ただ好きな曲を歌ってみたくてコード進行を覚えてみるとか、自分にふさわしいと感じることに時間を使っていたと思う。

ー「向いてないと感じたら諦める」「自分にふさわしいことに時間を使う」……このへんが大きなヒントになりそうです。弾く練習以外にも音楽に向かい合えることはたくさんあって、それを続けていくことで結局はギターも上達していく、ということでしょうか。他に練習を重荷に感じなくする秘訣があれば教えてください。

佐々木:楽しいことからやり始めると良いです。俺は難しいことに出会ったとき、それに立ち向かうのが楽しめないなら、ちょろまかしてやり過ごしていて。そして、「次に待っている」楽しいことをしていました。

ー「楽しむ」ことはすべての原動力なんですね。そもそも楽器をスタートする理由は、演奏して楽しみたいからなのに、練習の面倒さで楽器をやめてしまうのはもったいないこと。ときには技術的な練習だけでなく、自分が笑顔になれるようなことを優先させてみてもいいのではないか、と気づかされました。最後に、今、ギターがうまくならないとか、楽器を買っても弾きこなせないんじゃないかと悩んでいる人にメッセージをいただけますか。

佐々木:本当に乗り越えなきゃいけないことと、乗り越えなくてもいいのになんとなく設定してしまっていることを取り違えないでいれば、ギターを弾くって最高に美しくて楽しい時間であり続けると思う。俺は今でも速弾きの練習をしようと思わない。それよりも、今でも曲を作るのが大好きで、試作しまくってもそのすべてが世に発表される訳ではないけど、それでつらいってことは特にない。歌詞を書くのはつらいときもあるけど! 

ー「乗り越えなくてもいいのに自分で設定してしまっていること」……それは心の中の“こうすべき”というハードルでしょうか。自分としっかり向き合い、そのハードルを無くすことで、ギターを弾く楽しさ、そして美しさをよりいっそう、心の底から味わえるようになるのですね。

佐々木亮介さん

佐々木亮介 プロフィール

ロックンロールバンド・a flood of circleのギターボーカル。
2017年メンフィスでレコーディングをした『LEO』を皮切りにソロ活動をスタート。
2019年8月に、東京とシカゴで制作したアルバム『RAINBOW PIZZA』をリリース。
さらに同年、THE KEBABSを結成。アルバム「THE KEBABS」をリリース。
a flood of circleとしては、2020年10月に10枚目のフルアルバム「2020」をリリース。
全てのプロジェクトでフロントマンを担っている。

「練習じゃなくてもいい。ギターに関わる何かに触れ続けよう」

次に登場するのは、LACCO TOWERのギタリスト、細川大介さんです。LACCO TOWERは激しいロックサウンドにピアノのラインが絡み、ボーカルの松川ケイスケさんのパワフルでありながら優しい歌声と相まって、どこか懐かしさを感じさせる楽曲が人気のバンド。もうひとりのボーカルのような存在感ある音色で、そのサウンドの心臓部を担うのが細川さんです。

細川大介さん

ー細川さんはギター講師をされていたときもあったと伺いました。そんな細川さんでも、ギターの練習が面倒と感じたことはありましたか。

細川:練習がめんどくさいと感じたときは多数ありますよ!特に学生時代は友達からの誘惑も多いですし、皆で遊んでる方が楽しいって感じることもしょっちゅうでした。ゲームも漫画も好きだったし、ギターがつまらないというより他のことをやってるときの方が楽でした。ギターの習得には地道な練習時間が必要ですし。

ー必要ということはしっかりと分かっていても、やはり練習に気持ちが向かわないことがあったのですね。ではそれをどうやって乗り越えたのでしょうか。

細川:20歳のときに「このままじゃいけない!」って一念発起して、友達と遊ぶのをやめました。さらに部屋からテレビや漫画、誘惑するものを全部捨てて、ギターに集中するようにしました。意思が弱いので、そのくらいやらないとダメだったんですよね。でもそれをやることによって、ギターも上達して、今ではギターを触ってるときが一番楽しい時間になりました

ーある時期、他のものをすべてなげうって集中する時間を持つことが、上達に大きく役立ったということですね。「意思が弱いので」って、ギターのためにテレビと漫画を捨て去ること自体、とてつもなく意思が強いような気がします……。細川さんにとって、ギターにはそれだけ強い魅力があるということですね。現在、細川さんがギターのために心がけていることはありますか?

細川:やっぱり「ギターというものにもっと深く入り込んでいく」ということが大事だと思います。とはいえ、別に練習じゃなくても良いんですよ。YouTubeでギター動画見るでも、好きなギターを探すでも。例えば、携帯でゲームアプリをする時間をやめて、その時間を少しでも「ギターに関わる何か」に変えていくといつのまにか生活の比重がギターを考えることに向いていくと思います。それが大事です。

ー「生活の比重を、ギターを考えることに向ける、それは別に練習じゃなくてもいい」。練習しなくちゃ……といつもプレッシャーを感じつつ、その時間がとれずにいる人にはうれしい言葉ではないでしょうか。では、これからギターをもっと楽しみたい、という人にメッセージをいただけますか。

細川:楽器が面白くなる要素、それは「上達したって感じる瞬間」です。しかし、なかなか自分じゃ分からないんです。楽器の技術とともに、実は耳のレベルも向上しているので。出来ないことを克服する練習だけでなく、昔やっていた練習やコピーしてた曲を改めて練習してみると「当時より上手く弾けてる!よし、もっとこうしてみよう!」みたいに自己肯定&新しい練習の発見が生まれるので、おすすめです。

ー「以前練習していたことを改めて練習してみる」、これはすぐ取り組めそうですね。うまくなったという実感がもてることで、練習するモチベーションもさらに上がりそうです。早速、試してみたいと思います!

細川大介さん

細川大介 プロフィール

細川大介(ほそかわだいすけ)。大学在学中から、プロギタリストとしての活動を始め、様々なライブ、レコーディングに参加。2015年、LACCO TOWERのギタリストとして、日本コロムビア/TRIADよりメジャーデビュー。2017年にはZepp DiverCity Tokyoでワンマンライブを行い、2018〜19年には3度の全国ワンマンホールツアーを成功させている。現在まで、日本コロムビアよりフルアルバム5枚、ミニアルバム1枚、シングルを1枚リリース。テレビアニメ「ドラゴンボール超」のED主題歌を2回担当するなど、活動の幅を広げている。

「好きな曲をとにかくコピー。響きも楽しみながらやってみよう」

4人目の登場は、the band apartのギター・ボーカルの荒井岳史さん。20年以上続くthe band apartの活動を、涼やかな独特の歌声と卓越したギターセンスで支えています。歌いながら複雑なフレーズをリズミカルに弾きこなすテクニックの持ち主です。

荒井岳史さん

ー the band apartで、一度聴いたら忘れがたい浮遊感のあるサウンドを作り出している荒井さんのギター。軽やかにギターを奏でる荒井さんは、練習を面倒だと感じたことなんかあるんでしょうか。

荒井:ギターの反復練習には華やかさがないので、少し面倒に感じてしまいがちでした。それに、エレキギターを部屋で練習するとなると大きな音が出せない。そのような制約もまた、少々退屈に感じてしまっていた原因なのかもしれません。

ーどちらも楽器練習にはよくある壁ですね。特に、反復練習では短いフレーズを繰り返しますが、難しい箇所だと何度やってもうまくいかないことがあります。荒井さんはそれをどう乗り越えたのですか?

荒井:とにかく好きな曲のコピーをする。それも、エレキではなくアコギ(アコースティックギター)を使い、響きを楽しみながら練習していました。単純なスケール練習などは「バンドで演奏する予定が決まっている」などのモチベーションがあった方が捗る気もしますので、スタジオ練習やライブの予定を先に決めてしまうことなどもしていました。

ー「エレキではなくアコギで練習」というのは大きなヒントですね。そして「スケール練習を捗らせるためにライブの予定を入れる」というのには驚きました。一見、順番が逆なようですが、練習のモチベーションが高まった結果がステージで発揮されるのですから、これはアリではないかと思います。アコギでの練習について、もう少しヒントを教えていただければ。

荒井:アコギは、今はネットにコード進行などがたくさん掲載されていますので、自分が好きな曲をたくさん練習するのが一番だと思います。

ー上達の参考になるヒントは、意外に身近にたくさんある、ということですね。もちろん楽器店で大好きな曲のスコアを探して練習してみるのも良いですよね。では最後に、荒井さんが、ギターが上達してよかった! 楽しい! と感じたのはどんなときか教えてください。

荒井:アコギのフィンガーピッキング(ピックを使わず、指や爪で弦を弾いて演奏すること)の特殊な奏法を一日8時間練習していた時期がありましたが(笑)、ある日突然できるようになった時の快感はよく覚えています。そのような経験が楽器の楽しさであり、上達へのモチベーションになると思います。

ー練習に苦労した分、できるようになったときの嬉しさは言葉に代えがたいものがありますね。もちろん楽しく練習できるのがいちばんですが、ときには時間をとってじっくりと楽器と向き合うことで、大きな喜びを味わえるかもしれません。

荒井岳史さん

荒井岳史 プロフィール

the band apartのギター・ボーカルとして活動中。伸びやかで芯のある独特の歌声と、複雑なコードカッティングも弾きこなす卓越したギターセンスで、the band apartのフロントマンとして独特の存在感を放ってきた。
近年ではバンドの活動に加え、荒井自身によるソロの企画イベント、バンド形態やアコースティックスタイルでのライブ出演を精力的に行う。
現在までにシングル1枚、ミニアルバム1枚、フルアルバム3枚をリリースしている。
オフィシャルウェブサイト:www.araitakeshi.org

まとめ

今回は4人のアーティストの方にお話を聞きました。現在はまるで体の一部のようにギターを弾きこなす方々も、みんな練習に悩んでいたのですね。そして、その中でつかんだ自分なりのコツや技は、私たちでもすぐ活かせそうなものばかりです。この記事をヒントに、みなさんも「これなら続けられる!」という練習方法を探してみませんか。

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この記事を書いた人

丹野由夏

丹野由夏

音楽ライター。管楽器を中心にインタビュー記事などを執筆。大人になってからフルートを習い始めた。今は休んでいるけれどまたいつか!と思っている。最近は急に東海道を歩いてみようと思いたち、とりあえず本だけ購入しました。