【注目のアーティスト】特集。こちらのコーナーでは、今注目を集めているアーティストや、今後ブレイク必至な新星にスポットを当てて、様々な管楽器アーティストを深掘ろうという企画。今回は、現役芸大生にして大変注目度の高いサックス奏者:関谷鳳翔氏にスポットを当てる。今回は第2回。
前回のお話
東京芸術大学に入学
ー 東京芸術大学(以下、芸大)に入学して、第一印象はどんなものでしたか?
関谷:とても歴史のある学校なので、かなり風情がありますね・・・。私立のピカピカしているところとはまた違った。
そして長年培ってきた物なのだろうとは思うのですが、独特な匂いの場所があるんですよ。
ー 匂い?それは雰囲気の事ですか?
関谷:いや匂いです、匂い。カビの臭いというか何というか・・・。(笑)独特の匂いがあるんですよ。6月の匂いとしましょうか(笑)
ー 6月の匂い??
関谷:はい。湿気だと思います。その部屋は6月を閉じ込めたのか!?というほど、1年中湿度が高いんです・・・。恐らく臭いはその多湿から来るのでしょうね。
話が逸れましたが、第一印象はとにかく随所から歴史を感じる校舎でした。有名な門からも見て取れますね!
そしてとにかく、先代の凄い先輩方ですね。今は第一線で活躍されている方々が普通に練習をしていたり。
もう明らかにレベルの違う演奏があちらこちらから聞こえてくるんですよ。とにかく凄い刺激でした。
私が練習している隣の部屋に、国内外で活躍されているソリストの方が音出しをされていたり、真向いの部屋で須川先生がレッスンをしているという・・・。
藝大を目指していた頃には、想像すらしていなかった環境が広がっていました。
普段練習している場所でも、かつてここで偉大な先輩方が学び、練習されていたのだと思うと、感慨深いものがあります・・・。
ー 緊張しますね。
関谷:それはもう(笑)
だって、向こうの部屋の音が聞こえてくるっていう事は、こっちの部屋の音も向こうに聞こえているっていう事じゃないですか。だから入学当初から、誰に聞かれても恥ずかしくない音を出そうという意識は根付いたと思います。
ー これまで芸大で4年間過ごしてきた中で、一番印象に残っている事は?
関谷:色々な演奏会にも出演させて頂きましたが、やっぱりコンクールですね。
国内外のコンクールに向けて、本番で演奏する曲をお互いに聴き合うおさらい会や試演会があるのですが、そこでの同級生や先輩後輩たちの演奏には、毎回驚かされます。ほんの1〜2週間前に譜読みを始めたばかりだと聞いていた曲が、すでに驚くほど高い完成度に仕上がっているのです。
ものすごい熱量、そしてその練習量。僕も練習のために朝早くに学校に行く事があるのですが、僕が学校に着くともう既に練習を始めているんです。
「もう練習してるの!?」って。
そして僕が帰ろうとすると、その人がまだ練習している。「まだいるんかっ!」って(笑)
自分をはるかに上回る熱量を持ち、人生をかけて音楽に取り組んでいる人が、身近に何人もいる。そのこと自体が、私にとって大きな驚きでした。
そして、そうした一人ひとりの努力や思いが、コンクールという舞台で演奏となって表れ、さまざまなドラマを生み出していく。その過程や、一人ひとりが積み重ねてきたものの大きさに、強烈な印象を受けました。
実際の演奏からはもちろん、普段の会話からも、音楽に対する情熱や考えの深さが伝わってきます。そうした仲間たちと日々接する中で、「本当にすごい人たちだな」と、何度も感じさせられました。
ー ちなみに関谷さんは普段はどれくらい練習する?
関谷:特に何もない時は1日5~6時間くらい練習しますね。僕の場合は、それ以外に音に関する研究にも時間を取るようにしています。
ー 楽器の練習ではなく?
関谷:はい。管楽器の練習は身体に負担がかかることもあり、3〜4時間ほど練習を続けると、口に痛みが出ることもあります。無理をして練習を続けると、かえって身体を壊してしまうことにもつながりかねません。
そのため、楽器を使って練習するだけでなく、楽器を演奏しない時間に楽曲や奏法について研究することも大切にしています。限られた時間の中で、演奏以外の面からも音楽への理解を深めることを心がけています。
ー 研究とは具体的にどんなことですか?
関谷:練習ノートという物を書いています。これは、自分の演奏や練習を録画・録音して、それを客観的に見たり聞いたりして、感じた事を書き留めます。藝大浪人時代から始めた試みで、気が付けばもう20冊以上になりますね。
ー ノートを少し見せて頂く事はできますか?
関谷:良いですけど、人に見せる事を想定していないので、そんなに綺麗には書いていませんよ(笑)


ー 他にはどんなことをやっていますか?
関谷:楽器のカスタマイズですね。ここ(ベルの内側部分)にコルクをまいたり、lefreQueを装着してみたり、どれが自分に一番合っているのか、無理なく楽器を鳴らせるのかを常に吟味します。
それを、他の楽器の人を呼んで聞いてもらったり、逆に聞くこともあったりします。
もちろん、何かに頼るのではなく、まずは楽器本来の状態で、自分の力で楽器を鳴らすことを最も大切にしていますが!
あとはそれこそ、YouTubeで色々な演奏が聴けるので、その時感じた事をノートに書き留める事もあります。
こんな感じで、楽器の練習と研究を両方同時に進行しています。


音楽以外でハマっている事
ー いま、音楽以外でハマっている事はありますか?
関谷:音楽以外でやっている事としては、僕散歩が好きでして、時間を見付けては色々な所に行く。同期の作曲科の友達と一緒に散歩する事もありますよ。
普段、外を歩くときはあえて音楽を聴かず(聴く時もあります笑)自然や街の中にあるさまざまな音に耳を傾けたりもします。風の音や鳥の声、人々の話し声など、何気ない日常の音を聞きながら歩くのが好きです。
特に晴れた日は、外を歩くこと自体が楽しみで、思わず出かけたくてウキウキするほどです。
7月にフランスに行く機会があったんですけど、色々な景色を見たり、文化に触れたり、現地の人と関わったり。
こういった経験は間違いなく演奏や音楽表現にもつながっていると思います。
ー 学生のうちにやっておきたいと思う事は?
関谷:卒業記念の節目といったら大袈裟かも知れませんが、自主企画でリサイタルを企画中です。これは絶対に学生のうちにやっておこうと思ってました
ー リサイタルはいつですか?
関谷:2027年1月21日(木)に豊洲シビックセンターホールでやることは決まっています。
※詳細が決まり次第、本記事に演奏会情報を追加します。
始めて買った楽器
ー 少し話を前に戻しますが、初めてマイ楽器を手に入れたのはいつですか?
関谷:中学2年生の夏休みでした。当時の経済的な事情もあったんですけど、まず自身の演奏の癖とか奏法がわかってから、セルマー・ヤマハ・ヤナギサワと言ったサックス3大メーカーに手を出した方が良いだろうとなって、島村楽器のイオンレイクタウン店でFesti(現在は生産終了)の銀メッキ仕上げのサックスを購入しました。見た目がすごく気に入った事と、価格もリーズナブルだった事から購入しようとなったのですが、なかなか在庫が無くて探すのが大変だった事を覚えています。
ー なんと!!
関谷:そうなんです、実は(笑)。ちなみに、初めて試奏した時に「これは吹きやすい!」となって即決でした。ちなみに、ソプラノとテナーもFestiを持っていて、今でも手元に残っています。

ー ちなみにFestiは何年くらい使いましたか?
関谷:高校に入学するまでは使っていたので、1年半くらいだったかと・・・。ソプラノに関しては、高校に入ってからもしばらく使っていたので、2年半くらいだったと思います。
ー 高校に入ってからヤナギサワを使うようになった?
関谷:アルトは中学3年の冬前くらいに兄が買ってくれました。
ソプラノは高校1年生の時だったと思います。
今まさに目の前にあるこの楽器ですね。今年で8年になります。

ー 3大メーカーの中からヤナギサワを選んだ理由は?
関谷:少し抽象的な表現になってしまうかもしれませんが、息がスッと自然に通る感覚。これが、僕の中で一番のヤナギサワの魅力でした。
自分の息が無理なく楽器に入り、自分の思い描く音楽をそのまま表現できる。言い換えれば、演奏する人の音や音楽に染まってくれる楽器だと感じたんです。初めて手に取ったとき、その感覚を直感的に得られたことが、ヤナギサワを選んだ決め手でした。
楽器によっては、ある種の癖があっても、「その癖に慣れてしまえばいい」と考えることもできます。ただ、それは裏を返せば、自分の方が楽器の特性に合わせているということでもあります。もちろん、楽器の個性を理解し、それを生かすことも大切です。しかし、僕は楽器に自分を合わせること以上に、自分の思い描く音や音楽を自由に表現できることを大切にしています。だからこそ、自分の表現を自然に受け止めてくれるヤナギサワに魅力を感じました。
(次回に続く)
次回、柳沢管楽器株式会社よりゲストをお招きしてのインタビューとなります!