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◆C管テナーってどんなサックスなの?
こんにちは、岩田屋福岡店WEB担当の大島です。
今回は、当店の管楽器技術者・森さんに珍しいサックスを見せていただいたので、それについて書きます!
森:これが「C管テナーサックス」です。

大島:アルトとテナーの中間って感じですね!
森:アドルフ・サックスは、クラシック用にC管とF管、軍楽隊用にBb管とEb管のファミリーを作りました。
しかし、オーケストラの編成にサクソフォンが定着することはなく、軍楽隊から発展した吹奏楽やジャズで用いられるBb、Eb管が主流となり、C、F管のサックスは廃れていきました。
大島:私もC管テナーって初めて見ました。
森:C管テナーはCメロディサックスと呼ばれ、1920年代のアメリカ合衆国で広く普及しました。
この楽器のモデル名にもなっているルディ・ヴィードフは、親しみやすい自作曲を演奏して大人気を博しました。
ラジオを通じてヴィードフの演奏は広く聴かれ、アメリカの家庭では空前のサックスブームが起きたんです。
◆禁酒法下の音楽
大島:家で吹く用ってことですか?
森:1920年といえば禁酒法が施行された年ですよね。
職業バンドはパーティーなどで演奏する仕事が激減、メーカーはブームに乗ってC管テナー製造に次々に参入しました。
Cメロディサックスは、ピアノやギターと同じ楽譜を一緒に見ながら演奏できるので、ちょっとおうちのパーティーで演奏を披露、なんて時に都合がよかったんですね。
大島:そんなメリットが!……でも家でパーティーって、お酒飲んでません?
森:まあ飲んでますね。禁酒法って言っても、密造は横行、酒場も地下に潜っただけですから。
大島:やっぱり……!
森:それまで賭博や窃盗などで稼いでいたマフィアは、禁酒法下での酒の密造と違法酒場の運営で大繁栄したんです。
シカゴのアル・カポネなんかは有名ですよね。
彼らが経営する「スピークイージー」と呼ばれる違法酒場では職を失ったミュージシャンたちが演奏していました。
チャーリー・パーカーの故郷カンザスシティにはトム・ペンダーガストという悪徳政治家がいて、シカゴ以上の無法地帯。
普通に酒の売買ができた上、キャバレーやナイトクラブもガンガン営業していて、ミュージシャンには天国のような街だったみたいです。
大島:ジャズの巨人、チャーリー・パーカーはそういう背景から生まれたんですね。
森:そうしたプロ奏者の禁酒法下での演奏活動の中ジャズが成熟していくのですが……1929年の大恐慌をきっかけにアマチュアのサックスブームは一気に下火になります。
Cメロディサックスの大流行は、狂騒の20年代とともに終焉を迎えたのです。
大島:今でもC管テナーを吹いてる人っているんですか?
森:プロ奏者でこの楽器をメインに使っている方はほとんどいませんね。
ジャズ黎明期にビックス・バイダーベックという天才的なコルネット奏者がいましたが、彼とフロントラインを組んでいたフランキー・トランバウワーはCメロを吹いていました。
ビックス&トラムのようなオールド・ジャズを好んで演奏するアマチュア奏者には、Cメロを愛用している方もいます。
アルトやテナーとは違う、これじゃないと独特の感じがでないよねって。
大島:昔の音楽が好きな人は、当時の楽器がいいですよね!
◆20世紀初頭のサックスの特殊キイ
大島:C管テナーのメカニズムって、今のサックスと違うんですか?
森:基本的にほかのサックスと変わりませんが……20世紀初頭はサックスの機構が複雑化した頃だってことは以前にお話ししましたよね(この記事#1)。このサックスにも現代の楽器にはない、当時は一般的だったトリルキイがたくさんついてます。

確かに楽なんですけど、
無くても吹けますからね……
あと、このド隣にある小さなキイ。

これは、サックスの弱点である、中音レのピッチが高くなる事と低音レの音抜けの悪さを改善するための「レゾナンスキイ」です。

ですが、トリルキイやレゾナンスキイなどの複雑な機構には弱点があります。それは、連動するキイとキイの連絡が狂ってしまうと、音が出なくなってしまうことです。
だから前回(この記事#2)でも話したように、1930年代以降のサックスはシンプルになっていったんです。
◆まとめ
Q.C管テナーってどんなサックス?
A.元はクラシック用のサックスファミリーとして作られ、のちに1920年代のアメリカで流行した。ピアノやギターなどの伴奏楽器と同じ楽譜を見ながら演奏できたので人気だった。
1920年代の一般的なサックスと同じく、複雑な機構には今のサックスには無いものがある。
◆※このC管テナーは森さんの私物です
大島:これは売り物じゃないんですね。
森:うちでは今のところC管の中古はないけど、当時たくさん作られてるから中古市場ではたまに出てきますよ!
◆当店管楽器ラインナップ
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