私と楽器屋さん Vol.03

母親がピアノ講師、父親がアマチュアホルン吹き、祖父がチェリストと、音楽一家に育った鈴木美良乃さんは、23歳(取材当時)にして輝かしい経歴を持つ期待の若手フルーティスト。そんな彼女にとってフルート人生で初めての先生が、フルート講師を務める宮崎衣恵さん。この日、実に10年ぶりの再会を果たした2人。昔話に花が咲き、ほころんだ笑顔で懐かしむその姿には、10年というブランクを感じさせない固い絆がありました。

宮崎衣恵さん(左)と鈴木美良乃さん(右)

オケで演奏する祖父に憧れ
自分の意思で習い事を変更

音楽一家に育った鈴木さんが初めてフルートに触れたのは10歳の頃。オーケストラに所属していたチェリストの祖父の家にあった、古びたフルートがそれだ。小さい頃からクラシックバレエを習っていた彼女だが、小学5年生のときにフルートの道に歩むことを決意。すぐさま島村楽器ミュージックサロン瑞江に入会し、宮崎先生と出会うことになった。

鈴木さん クラシックバレエは3歳から習っていたのですが、これ以上背が伸びないだろうなと小5のときに感じて、他のことに力を注ぎたいと思いフルートを始めました。島村楽器に入る前までは自己流で吹いてしまっており、初めて手取り足取り教えていただいたのが宮崎先生で。私は小さい頃から、“これがやりたい!”と思うと突っ走る性格だったのですが(笑)、そのきっかけになったのがトリフォニーホール・ジュニアオーケストラのオーディション。昨年亡くなった祖父がオーケストラでチェロを弾いていて、ずっとオーケストラに憧れを抱いていたんです。どうしてもオーケストラに入りたくて、音階を吹くのも曲を仕上げてもらうのもすべて宮崎先生に導いてもらいました。

音楽教室に入会したのは2006年5月。そのわずか3ケ月後、ジュニアオーケストラのオーディションに見事合格。入会当時について、宮崎先生はこう回想する。

宮崎さん クラシックバレエの賜物か、入会したときから姿勢が良くて体幹がしっかりした子でした。小さい頃からピアノもやっていたので、楽譜も読めるし音感もあるし、最初からすごくいい音色だったんです。入会4ケ月後には習得までに数年はかかる奏法“ダブルタンギング”の練習も始めて、とにかく上達スピードが早かったのを覚えていますね。

島村楽器のレッスンに通った
1 年間は濃密な時間でした

そもそも、数ある音楽教室の中でなぜ島村楽器を選んだのだろうか。

鈴木さん 母もピアノを教える立場の人間なんですけど、楽器は最初の基礎の部分が大事だから、きちんとした先生に習わせたいという想いがあって、迷いなく島村楽器に入会させようと決めていました。私もフルートを始める前は、小さい頃から母の楽譜を買いに島村楽器によくついて行っていたので、スーパーに買い物に行くくらい身近な存在でした。島村楽器って全国にあるじゃないですか。だから地域に密着した、スタッフさんも先生方も一番信頼できる楽器店だと私は思うんです。

中学に上がるまではクラシックバレエを続けていたため、レッスンは週1回30分のみだったが、島村楽器のレッスンは、帰るのが嫌だと思うほど大好きだったという鈴木さん。宮崎先生のレッスンも性に合っていたようだ。

宮崎さん レッスンに何を求めて来ているのかは生徒さんによって異なるので目的に合わせて教え方は変えています。受けている時間を楽しく、実りがあるように、どんな方に対しても何かひとつ持ち帰ってもらえたらいいなと思いながらいつもレッスンをしています。

鈴木さん ピアノは本当に練習を積まないと弾けなかったけど、なぜかフルートは苦しむことなく、初めから自分の思いや意志をぶつけられたんです。宮崎先生は決して怒らない優しい先生で、たくさん吹いて、たくさん先生の音色を聴かせていただきました。私も今は先生という立場で生徒さんにレッスンをすることがあるんですけど、どうしても口ばかり言いたくなっちゃって(笑)。やっぱり先生の音を聴くことはすごく大事だと思うので、その点、先生はたくさん音色を聴かせてくださったなって。先生が使っていたゴールドのフルートが憧れで、本当に美しくてキレイな音色で、私も早くゴールドのリングキーが欲しいなと思いながらがんばりました。小学5年生の頃のことですが、島村楽器のレッスンに通った1年間のことは鮮明に覚えています。本当に濃密な時間でした。

2020年12月より、愛知県名古屋市を拠点に活動するプロオーケストラ『セントラル愛知交響楽団』のフルート奏者に着任。長きにわたって当団のフルート奏者を務められている方の奥様が宮崎先生の恩師だったり、トリフォニーホール・ジュニアオーケストラの音楽監督・松尾葉子先生がセントラル愛知交響楽団の特別客演指揮者を務めていたりと、さまざまな“縁”にも支えられている。その愛嬌と感謝の気持ちがあれば、彼女のフルート人生は順風満帆であることは間違いなさそうだ。

鈴木さん 島村楽器のおかげで、私は今こうしてフルートを吹く人生を歩めていると思います。地域に根ざして、楽器を手に取りやすい空間というか、楽器を始める人の裾野を広げるための存在が島村楽器なので、これからも若い人たちや演奏家を目指す子どもたちを支えていってもらいたいです。私も何か恩返しできることがあればいいなと思っています。

こちらの記事は、2020年3月に島村楽器(株)の社内報に掲載した記事を一部編集し、出演者の許諾を得て転載しております。

この記事を書いた人

溝口 元海

溝口 元海

エディター、ライター、フォトグラファー。ギター・マガジンやRolling Stone Japan、Go!Go!GUITARなどで執筆。