ギタセレをご覧の皆様、こんにちは。
島村楽器アコースティックギター・バイヤーの古川(ふるかわ)です。
前編では、Gibsonファクトリーで視察した製作工程を中心にご紹介しました。
木材をモンタナの環境に慣らす工程、Resawエリアでの製材、リブの曲げ加工、ドームド・トップ&バック、ダヴテイル・ジョイント、ニカワ接着、ラッカー塗装、最終組み込み。
一本のギターが完成するまでには、完成後には見えなくなる多くの工程が関わっています。
後編では、完成したギターを実際に手に取って選定するハンドピックと、これから製作されるオーダー用ギターの木材選定を中心にご紹介します。
完成品のハンドピックでは、各ディーラーが自身の目利きを頼りに、木材、仕上げ、ネックの感触、音の反応を確認しながら選定しました。
島村楽器では、その中から4本の完成品を選定しました。
また、3日目には、まだギターになっていない木材を一枚ずつ確認し、将来のオーダー用ギターに使用する材を選びました。
すでに完成した一本を選ぶことと、これから生まれる一本の方向性を木材から考えること。
この二つの選定を通して、Gibsonアコースティックの個体差や、木材がギターへ変わっていくまでの過程を改めて考えることができました。



■2日目|Gibsonアコースティックの完成品をハンドピック
木材の個性と品質管理を学ぶ
2日目は、ウッド・カテゴリー・マネージャーのBrad Baxter(ブラッド・バクスター)氏による、木材についてのセッションから始まりました。
スプルース、マホガニー、メイプル、ローズウッド、エボニーなど、アコースティックギターに使われる木材について学びます。
木材は、種類だけで判断することはできません。木目、密度、硬さ、弾力、色、含水率、カット方法など、一枚ずつ状態が異なります。
トップ材では、木目の美しさだけでなく、硬さや弾力性、木目の方向も重要です。ローズウッドは産地によって色味や木目が変わり、メイプルは杢目の美しさに加えて、材としての剛性や反応も確認します。
木材のグレーディングは、見た目の評価だけではありません。その材がどのモデルの、どの部分に適しているのかを判断する作業です。
同じ樹種でも、トップに向く材、サイドとバックに向く材、ネックやリブに適した材があります。木目や色を見ながら、その材が完成したギターの中でどのような役割を担うのかまで考えて選定します。
サステナブルな木材調達
木材の仕入れでは、合法性と持続可能性の両方が求められます。FSCなどの森林認証、輸出入に必要な書類、ワシントン条約などの規制を確認しながら調達を行います。
Gibsonでは、サプライヤーと連携して書類や材の状態を確認し、必要に応じて担当者が現地へ出向くこともあります。
「今、良い材を仕入れられればよい」という考えではなく、将来も同じ品質の木材を安定して確保できるかどうかが重要です。
産地やサプライヤーを分散させ、木材の供給体制を長期的に考えながら仕入れています。ギターに使われる一枚の木材の背景には、長い年月をかけて育った森林と、それを管理する多くの人たちの仕事があります。
サーマルエイジド材の可能性
この日は、サーマルエイジド処理を施した木材についても説明を受けました。
サーマルエイジド材は、温度、圧力、時間などを管理しながら木材を処理し、長い年月を経た材に近い状態を目指すものです。
単純に高温で熱すればよいわけではありません。木材の中の水分、成分、細胞構造にどのような変化を起こすのかを考えながら、処理条件を管理します。
通常のスプルースとサーマルエイジド処理を施したスプルースを比較すると、色味や音の立ち上がり、音の透明感に違いが出る可能性があります。
サーマルエイジド材は、ヴィンテージギターをそのまま再現するものではありません。新しい木材に別の時間軸を与え、現代の製作技術と組み合わせるための選択肢です。
Gibsonアコースティックの品質管理
続いて、品質管理を担当するPatrick Hanson(パトリック・ハンソン)氏から、品質管理について説明を受けました。
Gibsonの品質管理は、完成品だけを確認するものではありません。木材の状態、ネックの加工、ボディとの接合、塗装、パーツの取り付け、最終セットアップなど、各工程で確認を行います。
問題があればそのまま次へ進めるのではなく、前の工程へ戻して修正します。また、輸送中や店頭での保管環境も考慮し、接着、塗装、パーツの保管方法などについても改善が続けられています。
現代のプレイヤーにとっての演奏性を高めながら、歴史的な仕様やハンドメイドの魅力を守る。その両立が、品質管理の大きなテーマになっています。
Murphy Lab(マーフィー・ラボ)アコースティック
午後は、マーフィー・ラボ(Murphy Lab)を担当するMadison Swords(マディソン・ソーズ)氏から、マーフィー・ラボ・アコースティックについて説明を受けました。
マーフィー・ラボでは、ヴィンテージギターが長い年月の中でどのように変化するのかを研究し、その表情を手作業で再現しています。アコースティックギターは、エレキギターと異なり、サウンドホールからボディ内部も見えます。
そのため、外側だけをエイジングすると、内部だけが新しく見えてしまいます。外装だけでなく、ボディ内部にも時間を重ねたような処理を施し、ギター全体の印象を整えます。
作業では、機械による一括処理ではなく、ハンドサンディングを中心に進めます。角の丸み、ピックが当たる位置、ネックの触り心地、塗装の艶やウェザーチェックなどを、一本ずつ調整します。
新品のギターに傷を付けるだけでは、自然な経年変化にはなりません。どこが擦れ、どこに傷が付き、どの部分に艶が残るのか。長年使われたギターを観察し、その変化を再現していきます。
2022年に拡張されたGibsonファクトリー



前編でご紹介したGibsonファクトリーでは、2022年に大規模な拡張が行われました。
Gibsonの公開情報によると、1988年に建設された施設は拡張によって規模が約2倍となり、仕上げ工程、機械加工・製造スペース、Gibson Acoustic Custom Shopの機能、アーティスト向けショールームなどが拡充されています。
拡張発表時の公開情報では、当時のボーズマン拠点には約230人が勤務していました。
長い歴史の中で培われた製法を受け継ぎながらも、Gibsonファクトリーは歩みを止めていません。職人の技術と新しい設備を融合させ、より豊かな楽器づくりを目指す環境は、現在も進化を続けています。
特別仕様ギターのハンドピック
約50本の完成品から、一本ずつ入念に選定




午後2時からは、Don Ruffatto(ドン・ラファット)氏の立ち会いのもと、特別仕様の完成品をハンドピックしました。
この日は、約50本の完成品の中から、各ディーラーが順番にギターを手に取り、それぞれの目利きで選定を行いました。
担当者から一本ごとの説明を受けて選ぶのではなく、自分自身の感覚を頼りに、木材の表情、カラー、装飾、仕上げ、ネックの握り心地、音の反応を確認していきます。
同じモデルであっても、使用されている木材や仕上げによって印象は変わります。写真だけでは分かりにくいネックの握り心地やボディの反応、音の立ち上がりは、実際に手に取り、弾いてみて初めて確認できる部分です。
どのような演奏者に合うのか。どのような音楽の中で、そのギターの魅力が生きるのか。一人ひとりのディーラーがギターと向き合い、自身の感覚と目利きを頼りに選定していきました。
私たち島村楽器は、今回のハンドピックで4本の完成品を選定しました。それぞれに異なる木材の表情と音の個性があり、ボーズマンのGibsonファクトリーで実際に手に取って選んだからこそ出会えたギターだと感じています。
島村楽器が厳選した4本
今回、島村楽器が選定したのは、以下の4本です。4本はそれぞれ異なる魅力を持っており、現地で実際に手に取ったからこそ選ぶことができた個体です。

島村楽器の店頭で、ぜひ一本ずつ異なる表情をご確認いただきたいと思います。
SJ-200 EC VINE/CB(販売価格:957,000円(税込))




SJ-200をベースに、カッタウェイとVineモチーフの装飾を取り入れた特別仕様です。
SJ-200ならではの大きなボディと存在感に加え、カッタウェイによる高音側へのアクセスのしやすさ、視線を引き付ける装飾性を備えています。
ステージ上での存在感を求めるプレイヤーだけでなく、特別な一本を所有する楽しさを感じたい方にもご覧いただきたいモデルです。
J160E/PB(販売価格:528,000円(税込))




Gibsonのアコースティック・エレクトリックの歴史を語るうえで、印象的な立ち位置を持つJ-160Eです。
アコースティックギターとしての佇まいを持ちながら、エレクトリックギターの歴史ともつながる独自の存在感があります。
Gibsonが長い時間をかけて、アコースティックギターをさまざまな音楽の現場へ対応させてきたことを感じさせる一本です。
J-45 Rosewood/TB(販売価格:519,200円(税込))




Gibsonを代表するラウンドショルダーのJ-45に、ローズウッドの魅力を組み合わせたモデルです。
J-45のボディシェイプに惹かれながら、木材による外観やサウンドの違いも楽しみたい方に向けた選択肢になります。
完成品のハンドピックでは、ローズウッドの表情だけでなく、ネックの握り心地、ボディの反応、音の立ち上がりを確認しながら選定しました。
J-45 Custom Color/EB(販売価格:783,200円(税込))




ブラックトップとチェリー系のカラーが印象的な、J-45のマーフィー・ラボ仕様です。
塗装の表情には、マーフィー・ラボならではの経年変化が加えられています。
新品でありながら、長い時間を過ごしてきたような雰囲気があり、見た目だけでなく、ネックを握ったときの感触にも使い込まれた楽器を思わせる要素があります。
展示・お問い合わせ先
選定した4本は、2026年10月上旬より島村楽器 名古屋パルコ店で展示予定です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展示予定店舗 | 島村楽器 名古屋パルコ店 |
| 展示開始予定 | 2026年10月上旬 |
| 担当 | 古川 |
| お問い合わせ | 052-264-8316 |
※入荷時期、展示状況は変更となる場合があります。最新情報は名古屋パルコ店 古川までお問い合わせください。
■3日目|オーダー用木材を選定し、特別な一本を考える
木材を選び、特別な一本を考える



3日目の午前は、オーダー用ギターに使用する木材の選定を行いました。
テーブルに並べられた木材を一枚ずつ手に取り、木目の流れ、色合い、密度、弾力、左右のバランス、そして完成するモデルとの相性を確認していきます。




今回の選定では、カルパチアン・スプルース、ジリコテ、アディロンダック・スプルース、ココボロなどの材を選定しました。
トップ材を選ぶ|木目だけではないスプルースの見極め
トップに使うスプルースを選ぶ際、私は木目が整っているかどうかだけでなく、年輪の幅や間隔、木目の通り方、柾目の出方にも注目します。
さらに、材の密度や重量、剛性としなやかさのバランス、節や割れ、ヤニ、木目の乱れ、表面の状態も細かく見ていきます。
アコースティックギターのトップは、弦の振動を受けて音を生み出す重要なパーツです。そのため、十分な強度を保ちながら、適度に振動できる材であることが求められます。
見た目の美しさだけで判断するのではなく、木材の物理的な特性やしなやかさ、振動への反応まで総合的に見ながら、そのギターに適したスプルースを選定しています。



バック材の選定|木目と材の個性を見極める
バック材を選ぶ際、私は木目の流れや色の濃淡だけでなく、トップ材との組み合わせも意識します。
トップ材が持つ反応や音の方向性を踏まえながら、バック材の密度、剛性、重量、木材そのものが持つ個性を確認し、狙うサウンドに対してバランスのよい組み合わせを考えます。
バック材は、音の広がりや余韻、ボディ全体の響き方にも関わる重要なパーツです。トップ材の反応を生かしながら、音に厚みや深さを加えたいのか、立ち上がりのよさや明瞭さを重視したいのか。完成したギターのサウンドをイメージしながら、一枚ずつ選定していきます。
サイドとバックの木材は、木目の流れや色合いが美しくそろっていることも重要です。テーブルの上では平面に見える一枚の木材も、実際には曲面を持つギターのボディへと成形されます。ボディシェイプに沿って木目がどのように見えるのか、塗装や光の当たり方によってどのような表情になるのかまで想像しながら、材を選びました。



どのボディシェイプに合わせるのか。木目を生かすカラーにするのか、サンバーストによって木材の表情に陰影を加えるのか。さらに、ボディ全体の印象に合わせて、どのような装飾を施すのか。
木材の選定は、単に見た目の美しい材を選ぶ作業ではありません。木材の音響的な特性、トップ材とのバランス、ボディシェイプとの相性、完成後のカラーや装飾までを総合的に考えながら、その一本が持つ方向性を決めていく工程です。
まだギターになっていない木材を前に、完成後の音や外観、手に取ったときの印象、そして弾き手のもとで長く過ごす時間まで思い描く。木材選びには、素材を見極める目と、完成したギターを想像する力の両方が求められます。
島村楽器が選定した木材紹介
ここからは、今回私が選定した木材をご紹介します。
木材は、種類によって木目や色合いだけでなく、密度、剛性、しなやかさ、重量感などの特性が異なります。材そのものの個性を見極めながら、どのボディシェイプに合わせるのか、どのようなサウンドや外観を目指すのかを考えて選定しました。
■カルパチアン・スプルース

カルパチアン・スプルースは、きめ細かな木目と、繊細な反応の良さが魅力のスプルースです。トップ材として選ぶ際には、木目の整い方だけでなく、年輪の幅や間隔、材の密度、剛性としなやかさのバランス、重量感などを確認します。
弾き手のタッチに対してどのように反応するのか、弱いタッチにも音が追従するのか、また強く弾いたときにどの程度の余裕を持つのか。材の状態を見ながら、完成後の演奏感や音の立ち上がりまで想像して選定します。
見た目の美しさだけでなく、材が持つ繊細さや反応の良さを、どのボディシェイプで生かすのか。その点も意識しながら選びました。
■ジリコテ

ジリコテは、濃淡のある個性的な木目と、深みのある色合いが魅力の木材です。
サイドとバック材として選ぶ際には、木目の流れや色の濃淡に加え、材の密度や重量感、トップ材と組み合わせたときの全体のバランスを確認します。
テーブルの上では平面に見える一枚の木材も、ギターのボディに成形されると曲面を持つ立体的な姿になります。ボディシェイプに沿って木目がどのように流れるのか、光の当たり方によって色合いがどのように変化するのか、仕上げによってどのような表情になるのかを想像しながら選定しました。
木材単体で見たときの印象と、ギターとして完成したときの印象は、必ずしも同じではありません。完成後のボディ全体の見え方や、トップ材との組み合わせまで考えながら材を選ぶことに、カスタム用木材ならではの面白さがあります。
■アディロンダック・スプルース

アディロンダック・スプルースは、硬さと弾力性を備えたトップ材として知られています。
選定の際には、木目の整い方だけでなく、年輪の幅や間隔、材の密度、剛性、張り、しなやかさなどを確認します。音の立ち上がりや、強く弾いたときの反応をイメージしながら、材が持つ強さと柔軟性のバランスを見極めていきます。
同じスプルースでも、カルパチアン・スプルースとアディロンダック・スプルースでは、木目の表情や材を手にしたときの印象が異なります。
どのボディシェイプに合わせるのか、トップ材にどのような反応を求めるのか、完成後にどのような演奏感を目指すのか。こうした条件によって、選定時に注目するポイントも変わります。
材の持つ強さや反応の特性を生かしながら、バック材との組み合わせや完成後のサウンドまで想像して選びました。
■ココボロ

ココボロは、赤みやオレンジ、濃い縞模様など、色彩の豊かさが印象的な木材です。
木目の流れや色の濃淡が一枚ごとに異なるため、どのボディシェイプに合わせるのか、木目を生かす仕上げにするのか、カラーや装飾をどのように組み合わせるのかによって、完成後の表情は大きく変わります。
今回選定したココボロは、センターのブックマッチ部分に、非常に均整の取れた美しいサップが入った個体です。
左右の木目の流れとサップの入り方がきれいに呼応しており、ボディに成形されたときには、ココボロならではの豊かな色彩と印象的なセンターラインが際立つことが期待されます。
Gibsonアコースティックのオーダー用材としても、個性的な表情を持つ材です。どのボディシェイプと組み合わせ、どのような仕上げで完成するのか。現時点ではまだ一枚の木材ですが、すでに完成後の姿を想像させる魅力があります。
音の方向性と木材の表情がどのように一体化するのか。ギターとして仕上がる日が、今から楽しみです。
Made to Measure(メイド・トゥ・メジャー)とDealer Select(ディーラーセレクト)
午後は、メイド・トゥ・メジャー(Made to Measure)とディーラーセレクト(Dealer Select)の個別ミーティングです。これまでの講義や木材選定を踏まえ、どのようなギターを作ることができるのかを相談しました。
カラー、ボディ材、トップ材、ネック材、装飾、ピックアップ、仕上げなど、検討する要素は多くあります。
しかし、すべてを盛り込めばよいというものではありません。そのギターをどのような人に弾いていただきたいのか。どのような音楽で使われるのか。Gibsonの歴史の中で、どのような意味を持つ仕様なのか。
一つひとつを考えながら、製品としてのまとまりを作っていきます。オーダーとは、何でも自由に選ぶことではありません。
Gibsonの基本構造や製作工程を理解したうえで、実現可能な範囲の中から、意味のある仕様を選ぶことです。
販売店側の要望だけでなく、ファクトリーの製作環境、木材の在庫、パーツの供給、将来的なメンテナンスまで考慮しながら仕様を詰めていきます。
ボーズマンの楽器店、Music Villaへ





午後4時30分からは、ボーズマンの楽器店Music Villaを訪問しました。
アコースティックギターやエレキギターなど、さまざまな楽器が並ぶ、地域に根付いた楽器店です。ボーズマンの街で、どのようなモデルがどのように展示されているのか。
商品の並べ方やモデルごとの見せ方など、日本の店頭づくりにも生かせる発見がありました。
ファクトリーでギターが作られ、楽器店を通じてプレイヤーへ届いていく。作る人、届ける人、弾く人。その間に多くの人が関わり、一本のギターが音楽の中で生きていきます。
3日間のプログラムを終えて
夜は、3日間のプログラムを締めくくる夕食会です。ファクトリーで働く方々、製品を開発する方々、木材を管理する方々、品質を守る方々と過ごした3日間。
初日に聞いた話が、2日目、3日目の木材や製品選定とつながり、Gibsonのギターが一つの大きな工程の中で作られていることが分かってきました。
リブの形状、アーチ構造、ブレーシング、ネックジョイント、塗装、最終調整。それぞれが独立した工程ではなく、すべてが一本のギターを作るために関係し合っています。
最後にGibsonチームの皆様と音楽やギターについて話せたことも、深く印象に残りました。仕事の場を離れても、話題の中心にあるのは音楽と楽器です。
Gibsonのギターを作る人たちが、日常的に音楽のことを考え、楽器について語り、プレイヤーのことを想像している。そのことを実感できた時間でした。

後編のまとめ




伝統を受け継ぎ、進化を続けるGibsonアコースティック
今回のGibsonファクトリー訪問では、木材の選定から品質管理、完成品のハンドピック、オーダー用ギターの仕様決めまで、一本のギターが生まれるまでのさまざまな段階を学びました。
完成品のハンドピックでは、一本ごとに異なる木材の表情、ネックの感触、ボディの反応を確かめました。オーダー用木材の選定では、まだギターになっていない材の中に、完成後の音や姿を想像しました。
ギターは、木材を選んだ瞬間から始まっているのかもしれません。木材の種類や状態を見極め、完成後のサウンドや外観を考え、製作工程や品質管理まで含めて一本の方向性を決めていく。
今回の視察を通じて、Gibsonアコースティックは、伝統的な製法と現代的な技術、そして多くのスタッフの判断と手仕事によって作られていることを実感しました。
帰国後、所有している1954年製のGibson Southern Jumbo(サザン・ジャンボ)を、改めて弾きました。

モンタナ・ファクトリーを訪れる前から大切なギターでしたが、今はその音の向こう側に、木材を選んだ人、ボディを組み上げた人、ネックを接合した人、塗装を施した人の姿を想像できます。
ギターは、完成した瞬間に物語が終わるのではありません。弾き手のもとへ届き、音楽の中で使われ、時間を重ねることで新しい表情を持つようになります。
伝統を守るということは、何も変えないことではない。大切な部分を見極めながら、新しい技術や考え方を取り入れ、次の世代へ受け渡していくことなのだと思います。
今回モンタナで学んだことと、現地で選定したギターや木材を、これからGibsonアコースティックをご案内する際に、店頭でも皆様へお伝えしていきます。
ギタセレを最後までご覧いただき、ありがとうございました。島村楽器アコースティックギター・バイヤー、古川でした。
銘器探訪の管理人 古川 惠亮プロフィール

京都府出身。大阪での歌い手としての活動を経て、「音楽の楽しさを届ける側になりたい」との思いから、2004年に島村楽器へ入社。
ギターへの深い愛情と幅広い知識を武器に、アコースティックギターの販売で10年連続トップセールスを達成。
現在はバイヤーとして、米国のMartin社での買い付けをはじめ、Furch、K.Yairi、Takamineなどのブランド、ならびに国内外のルシアーと共に、数々のカスタムモデルの企画・仕様策定・デザインを手がける。
プライベートでは3児の父として、家族との時間を大切にしている。
目下の悩みは、子どもとのゲーム対戦でなかなか勝てないこと。