多くのアーティストやクリエーターが愛用する老舗DAWソフトであるMOTU Digital Performer の6年ぶりのメジャーアップデート「DP12」が発売されました。早速チェックしてみました!
- Dolby Atmosのミックス、レンダリング、納品をDAW内で完結
- AIによるステム分離
- MusicXMLの読み込み・書き出しに対応
- フリーズ、アレンジメントストリップ、コンテンツブラウザ等の拡充
Digital Performer(デジタルパフォーマー:DP)はアメリカのMark of the Unicorn(マークオブザユニコーン:MOTU)社製のDAWソフトウェアです。1985年にMIDIシーケンスソフトである「Performer」が発売され、その後1992年にMIDIとオーディオを扱えるようになったDAWソフトとして「Digital Performer」が誕生しました。
世界中で多くのクリエーターやアーティストが愛用する老舗DAWソフトです。特にシーケンス・チャンクという複数のプロジェクトを管理・編集・再生できる独自の機能は、ライブでのマニピュレートや映像の分野などでも多くのユーザーが存在する理由の一つだと思います。
DAWソフトは基本的には同じような機能を持っているわけで、かくゆう私もProToolsを始めLogic、Cubase、Liveのユーザーでもあるわけですが、仕事ではDPをかれこれ30年以上愛用しています。
理由はいくつかあるのですが、簡潔に挙げるとすれば以下となります。
- チャンク(Chunk)機能
- 1つのプロジェクトファイル内で複数のシーケンス(楽曲や別アレンジ)を管理でき、ライブのセットリスト管理や曲のアイデア比較に最適です。
- 圧倒的なMIDI編集の柔軟性
- 四分音符あたり最大2兆という超高分解能を持ち、演奏ニュアンスを正確に再現・キャプチャできます。また、ピアノロール上でノートを直接別のトラックへドラッグ&ドロップして移動できるなど、作業効率が非常に高い仕様です。編集バリエーションも豊富!
- プロフェッショナルな譜面作成(クイックスクライブ)
- 本格的なオーケストラスコアからパート譜、歌詞入力まで対応できる、高い譜面浄書能力を備えています。
- ステージや現場での高い安定性
- 大規模なライブコンサートのプレイバックや、シビアな映像同期(ムービー機能)が求められる現場で長年信頼されています。
個人的には、楽曲制作で生楽器をシミュレーションすることも多いため、細かなMIDI編集機能は手放せません。新機能ではありませんが、DPをあまりご存じない方に向けて、私が個人的に重宝している機能もあわせてご紹介します。
おなじみのイベントリスト画面。私は通常はTPQN=480で十分なんですが、DPは実際には裏でさらに細かいレゾリューション(最大2兆)でデータを記録しているそうです。
※キャプチャー画面は日本語と英語が混在していますがご了承ください。

クオンタイズ一つとっても非常にバリエーションが豊富で、4ビートジャズやハネモノシャッフル系の曲を制作する場合、テンポ、曲調等によって完全に3連や6連のノリではないスイング(跳ね)のノリも自由に設定することが可能です。これは本当に素晴らしい機能です。
ちなみに4ビートジャズでもビル・エヴァンスとチック・コリアでは全く違うスイングなわけです。エヴァンスは割と3連に近いハネ方ですが、チックはよりイーブン(8分)に近い気がします。もちろんテンポによってもハネ方は変化しますが、テンポが早くなれば3連からイーブンよりになる傾向が多いのではないかと思います。
こう押した微妙なノリも自由に設定できるのが嬉しいですね。

ヒューマナイズも自由自在。メロディーやソロなど、人間味を加える際にも重宝します。

ビューフィルター設定では各種情報のフィルタリングを設定できます。例えばイベントリストで任意のMIDIコントロールチェンジだけを表示させて編集したいといった場合にフィルター設定を保存しておけば、瞬時に自分の見たいデータだけを表示・編集することができます。

サーチ機能
自分が編集したいデータの検索がフレキシブルに行なえます。例えば「ハイハット16分ウラウラのノートデータのうち、ベロシティーが62未満のノートデータ」といった選択が可能です。

自分はノートデータは一つづつじっくり編集するタイプなので、検索機能はそれほど多用はしていないのですが、ベロシティースイッチで音色が変わる様な音源を使用している際なども重宝すると思います。
無論MIDIだけでなくオーディオ編集も非常にフレキシブル・直感的で他のプラグインとの相性もいいです。
下図ではiZotopeのOzoneをインサートしています。

主な新機能
それでは今度はDP12の新機能をかいつまんで紹介していきましょう。
フリーズ
ワンクリックでの実行: [トラックリスト]の「FRZ(フリーズ)」列をワンクリックするだけで、対象トラックのフリーズおよび解除が行えるようになりました。
フリーズボタンの追加: 各トラックに直接フリーズボタン(下図)が配置され、直感的な操作が可能です。

CPU負荷の軽減とロック: 負荷の高いプラグインやインストゥルメントを一時的にオーディオ化してパソコンの処理を軽くしたり、不用意な変更を防ぐためにトラックをロックしたりする手段として非常に有効です。
ちなみにDP11では下記のようにメニューから実行するオペレーションでした。もちろんDP12にもメニューで実行可能です。

アレンジメントストリップ

アレンジメントストリップでは、イントロ、Aメロ、サビ、ブリッジといったセクションを色分けして表示させることができるようになりました。
さらにバーをドラッグすると、セクションに含まれる全トラックのデータが連動して移動します。OptionキーまたはAltキーを押しながらドラッグすればセクションを複製可能です。
複製、移動、順序変更、切り取り、削除をセクション単位で行えるため、楽曲の展開を比較しながらアレンジを組み立てる作業に役立ちます。
仮に「Intro-A-A-B-B-C-D-A-B-C-E-Ending」のような構成の曲であれば、あとから構成を変えたいときなどもあっという間に組み換えが可能になります。小節管理がきっちりされているデータ構造にしておく必要はありますが、曲構成を迅速に編集できるのは嬉しいですね。
入力デバイスを指定可能
複数の外部MIDIコントローラーを使う場合、メインMIDIコントローラーメニューからプライマリ入力デバイスを指定可能です。

私も複数のMIDIキーボードやシンセをMacに接続して作業するのですが、すべてのデバイスがONになっている環境だと、たまに使用していない機器からの不要なMIDIデータが入ってしまう場合があります。しかしここで任意のデバイスだけを選択すれば通常のレコードモードとマルチレコードで入力管理を進められます。MIDIパッチベイの感覚でしょうか、細かい点ですが嬉しい機能ですね。
AIステム分離

ついにDPにもAIステム分離機能が搭載されました!
いままで自分はステム分離はLogicProで行っていたのですが、これでDPで完結できるようになりました。カラオケデータ制作者にもDPユーザーは多いと思いますが、耳コピの際にもこれは非常にありがたいのではないでしょうか?

ステレオ音源を解析し、ドラム、ベース、ボーカル、ギター、ストリングス、ブラスのトラックへ分離します。取り込んだ楽曲から特定パートを抽出し、リミックスやマッシュアップの素材として扱えるほか、任意のパートをミュートして演奏練習に用いることも可能です。
実際に某洋楽曲(打ち込みドラム、ギター、ベース、ヴォーカル、シンセ等で構成された曲)を分離してみました。
「精密モード」にチェックを入れて試してみると結構時間がかかりますね。曲にもよりますが、実時間の約3倍程度の時間がかかるかもしれません。

分離が終了すると楽器ごとに新たなオーディオトラックが作成されます。オプションでオリジナルファイルをミュートにすることもできます。

同じ曲をLogic Proでも試してみましたが、特にギターやベースの分離明瞭度は、まだ正直言ってLogicのほうが音楽的に精度が高いのかな?と感じました(個人の感想です)。これは曲調にもよるのだと思いますので、もう少しここは試してみたいと思います。
Dolby Atmosのミックス、レンダリング、納品をDAW内で完結

DP12がDolby Atmosのミックス、レンダリング、納品ファイルをDAW内で完結できるようになりました。
ADMファイルの書き出しが可能
完成したミックスは、空間オーディオ配信サービスや他のDolby Atmos対応スタジオへそのまま納品できる「Dolby Atmos ADMファイル(ADM BWF)(※)」として書き出すことができます。外部のDolby社製レンダラーを使う場合も、このADMファイルを介して連携できます。

※立体音響のオーディオチャンネルと、空間上の位置や動きを記録したパンオートメーションなどのメタデータを1つにまとめた、放送・配信用の高音質オーディオファイル(WAV形式)です。
MusicXMLの読み込みに対応、楽譜作成ソフトウェアとの双方向連携を実現
従来からあるMusicXML(異なる楽譜作成ソフトの間で楽譜データを共有・移行するための標準化されたオープンなファイル形式)の書き出しに加え、DP12では読み込みにも対応しました。

したがってDorico、Sibelius、MuseScoreなどの楽譜作成ソフトウェアとの間で、データ交換が可能になります。
MusicXMLファイルはチャンクリストへのドラッグ、または「ファイル」>「読み込み」から取り込めます。ダイナミクス、アーティキュレーション、小節の反復記号、テキストなど、DPがMusicXMLとして書き出せるすべての要素の読み込みに対応しています。
ただし現時点ではソフト間で100%同じ見た目にはならないようです。レイアウトや装飾の崩れが生じてしまい、ページ余白、音符間のスペース、強弱記号やテキストの位置が重なったりズレたりすることが起きるようですね。昔もSMF(Standard MIDI File)で同じようなことが起きていましたが、これは今後の課題かもしれません。
トラックプリセット
各種トラック設定やプラグインチェーン、オーディオトラックのフェード情報等々、ありとあらゆるトラック設定をコンテンツブラウザで表示可能になりました。

コンテンツブラウザからドラッグアンドドロップで既存トラックに設定を反映させたり、新規トラックっを作成できます。
「例えばベースの半音づつ下がるスライドの奏法データ」や「ギターの半音チョーキング」「サックスのしゃくりあげ」といったベンドを含むフレーズなどを「クリッピング」で保存しておくと、都度打ち込むのではなく簡単にペーストできるので非常に便利です。
というわけで駆け足でレビューしてきましたが、ここだけの話、30年経っても自分はDPの機能の半分も「使っていない」のではないかと思います。それだけ豊富で高機能なDAWソフトだと思います。
もし使用中のDAWソフトから乗り換えてみようかなと思う方は、1ヶ月試用することもできるのでぜひ試してみるのはいかがでしょう。なおキーコマンドはPro Tools、Cubase、Nuendo、Logic、Liveのキーセットを読み込むこともできるので安心ですよ。
※2026年10月時点では、何箇所か名称やコマンド名の日本語訳が間違っている箇所があるようですが、これは今後バグフィックスされていくことでしょう。
DP12新機能まとめ
- Dolby Atmosイマーシブミックス:制作から納品までDP12で完結
- 最大128チャンネルの3Dパンニング
- レンダラーを内蔵、ADMファイルの書き出しに対応
- AIステム分離:既存の音源から楽器別トラックを生成
- アレンジメントストリップ:楽曲構成をセクション単位で再構成
- トラックプリセット:トラック設定の保存と再利用
- 他のDAWのキーコマンド読み込みとキーセット切り替え
- MusicXMLの読み込みに対応、楽譜作成ソフトウェアとの双方向連携を実現
- タグと検索機能の強化
- トラックフリーズとフラットンの強化
- MIDIコントローラー管理
- その他のワークフロー/ユーザーインターフェース改善
- インラインヘルプ:チュートリアルとフライオーバーヘルプ
- 付属コンテンツの拡充
DP12 主な仕様
- 製品の仕様やデザイン、動作環境などは予告なく変更することがあります。
| 対応OS | macOS 12.7以降 Windows 11 24H2以降 |
| 対応プロセッサー | Intel Core i3以上 AMD CPU Appleシリコン Appleシリコンを推奨 |
| RAM | 4GB以上、8GB以上を推奨 |
| コンピューターディスプレイ解像度 | 1,024 × 768以上、1,280 × 1,024以上を推奨 |
| 基本機能 | シーケンス数:無制限 |
| ソング数:無制限 | |
| V-Rack数:無制限 | |
| トラック数:無制限 | |
| オーディオボイス数:無制限 | |
| アンドゥ履歴:無制限 | |
| 最大モノラルバス数:2,048 | |
| 最大ステレオバス数:1,024 | |
| チャンネルあたりの最大センド数:20 最大物理入出力数:制限なし(ハードウェアに依存) オーディオエンジン解像度:32-bit float | |
| Dolby Atmos | 最大128チャンネルの3Dパンニング、Dolby Atmos Renderer内蔵、Dolby Atmos ADM BWFの読み込み・書き出し、バイノーラルモニタリング |
| ファイルのインポート | AudioDeskファイル Standard MIDIファイル Final Cut Pro 7 XML MusicXML OMF/AAF Dolby Atmos ADM BWF |
| ファイルのエクスポート | Standard MIDIファイル(タイプ0、タイプ1) Digital Performer 11.03、10.1、10.01、7~9、6.0、5.12、5.1、4.6、4.5、4.1、3.1 AudioDesk 2.0、1.0 Final Cut Pro XML MusicXML OMF/AAF Dolby Atmos ADM BWF |
| 対応オーディオファイル形式 | AIFF WAV Broadcast WAV(non-MPEG) Sound Designer II MP3 ACID Apple Loops(AIFF、CAF) REX RCY Core Audio Format(CAF) QuickTimeムービー AVIムービー オーディオCDファイル MuLawファイル 3G2 3GP AIFC AAC M4A MP4 Dolby Atmos ADM BWF |
| タイムフォーマット | 小節単位(小節|拍|チック) リアルタイム(時:分:秒:1/100秒) フレーム単位(時:分:秒:フレーム) サンプル単位 |
| SMPTEタイムコードフォーマット | 30 non-drop、30 drop、29.97 non-drop、29.97 drop、25、24、23.976 |
| ハイフレームレート(HFR)フォーマット | 47.952、48、50、59.94 Drop、59.94 Non-Drop、60 Non-Drop、100、119.88 Drop、119.88 Non-Drop、120 Non-Drop |
| オーディオビットデプス | 16-bit整数、24-bit整数、32-bit float |
| オーディオサンプルレート | 44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz |
| チャンネルフォーマット | モノラル、ステレオ、クアッド、LCRS、5.0、5.1、5.1.2、5.1.4、6.1、7.0、7.1(SDDS)、7.1、7.0.2、7.1.2、7.1.4、9.1.4、9.1.6 |
| プラグインフォーマット | Audio Units(Macのみ)、VST2、VST3、MAS、ARA |
| 対応コントロールサーフェス | Akai APC40mkII Akai APC Key 25 Akai APC Mini EuCon対応コントロールサーフェス Avid S1 Avid S3 Avid Controlアプリ Mackie HUI iCON QCon G2 iCON QCon EX G2 iCON QCon Pro X iCON QCon Pro XS iCON Platform Nano NI Komplete Kontrol M32 NI Komplete Kontrol A25 NI Komplete Kontrol A49 NI Komplete Kontrol A61 NI Komplete Kontrol S49 mk2 NI Komplete Kontrol S61 mk2 NI Komplete Kontrol S88 mk2 Novation Launchpad Pro mk3 Novation Launchpad X Novation Launchpad Mini mk3 Mackie MCU Pro Mackie XT Pro Softube Console 1 Softube Console 1 mkII Softube Console 1 Fader MCU互換モード対応コントロールサーフェス Open Sound Control(OSC)対応コントロールサーフェス |
| 対応オーディオハードウェア | Mac:内蔵オーディオ、Core Audio対応ハードウェア、Core MIDI対応ハードウェア Windows:Windows 11オーディオ対応ハードウェア、ASIO対応ハードウェア、Windows 11対応MIDIハードウェア |
発売日
2026年9月19日
販売価格・ご購入はこちら
| 品名 | 販売価格 | リンク |
|---|---|---|
| DP12 JANコード:4580101328808 | ¥87,780(税込) | オンラインストアで探す |
| DP12 クロスグレード版 JANコード:4580101328815 | ¥69,850(税込) | オンラインストアで探す |
| DP12 アカデミック版 JANコード:4580101328822 | ¥69,850(税込) | オンラインストアで探す |
デジタル・アドバイザー 坂上 暢(サカウエ ミツル)

作編曲家/キーボーディスト/シンセサイザープレーヤー。
これまで幅広い音楽制作に携わり、TV・ラジオCMやゲーム音楽をはじめとする楽曲を手がける。音楽専門学校の講師を務めるほか、『キーボード・マガジン』『DTMマガジン』などの音楽専門誌での連載執筆や著作活動も行う。
その後も、企業Webサイト向け音楽コンテンツの制作、音楽プロデュース、楽器メーカーのシンセサイザー内蔵デモ曲の制作、音色作成、デモンストレーション、セミナーなど幅広く手がける。趣味・特技は耳コピ。一般社団法人 日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員。