【バイオリンインストラクター西尾のブログ】『バイオリン名曲紹介vol.8 ピアノとバイオリンのためのソナタ第5番「春」/L.V.ベートーヴェン』

2023年11月17日

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島村楽器 音楽教室
バイオリンインストラクター 西尾 聡子

こんにちは!
バイオリンインストラクターの西尾です。

「名曲紹介」では、「多分有名なはず」「バイオリンを演奏するならこれは知っておいてほしい!」という曲を、独断と偏見と経験と知識による解説を交えつつご紹介してまいります。

バイオリン名曲紹介vol.8

ピアノとバイオリンのためのソナタ第5番「春」

vol.8では、「のだめカンタービレ」のドラマ化で有名になった1曲、ベートーヴェンの「ピアノとバイオリンのためのソナタ第5番『春』」通称「スプリングソナタ」の第1楽章をご紹介します。

動画を撮るときはいつも「3分くらいの長さで」と心がけているので、今回は提示部(※1)から再現部(※1)に一気に飛ぶ、という荒技でだいぶ省略したバージョンになっています。ソナタで一番おいしい展開部(※1)を…泣く泣く…省きま…した…。

気をとりなおして…。
レッスンでもたびたび会員さんに選ばれるくらい人気の曲ですが、レッスンで一番最初にお伝えしていることが「この曲は『バイオリンソナタ』ではないんですよ」ということです。いや、バイオリンソナタなんですが、独奏曲じゃない(※2)というか。
↓見ていただければ一目瞭然です。

はい。私物のヘンレ版ソナタ集1巻です。拡大してみましょう。

『Sonaten für Klavier und Violine』なんです。
知ってる人からすると「なーんだ」ですが、ピアノが先に表記されているのは大きなポイントです。

鍵盤楽器が流行した古典期(モーツァルトやベートーヴェンの時代)のソナタは、この形が主流だったようです。鍵盤楽器+バイオリン、つまりバイオリンのほうがサブ扱いなんですね。ロマン派以降では鍵盤楽器とバイオリンが対等にアンサンブルできる作品が増えていきます。ブラームスの「雨の歌」やフランクのバイオリンソナタなど、とても美しいバランスだと思います。大好き。
それでも、ベートーヴェンのバイオリンソナタは多くがバイオリンとピアノの呼応の形式を大切にしており、バイオリンがサブとは言い切れない形式になっています。ベートーヴェンの時代はピアノが普及しだしたり、オペラが流行して現在の形のバイオリン弓が発明されたり、音楽的な過渡期にあった時代というのをひしひしと感じますね。

実際、この撮影の時もアンサンブルを楽しんで演奏しておりました!
どこのフレーズもバイオリンとピアノが交互にメロディを奏でるような構成になっていますが、とくに今回気をつけたのが最初のテーマ。「ラドファド~♪」から始まるバイオリンの伴奏形がピアノの右手(メロディ)と左手(1拍目のベース音)の間に綺麗になじむような音量、音色に聴こえたら嬉しいです。

逆に小西に気をつけてもらったのは、スービトピアノ(0分39秒、1分38秒など)と、アルペジオが長調→短調に変わるところ(上昇形のバイオリン1分50秒/下降形のピアノ1分55秒)。
スービトピアノはバイオリンは弓の勢いを殺すための間があるので、ピアノにスルッと入られると合わなくなってしまうんですね。アイコンタクトしてないように見えますが、ちゃんと見合ってますよ!
また、同じラドミのアルペジオでも、長調の時より短調の時は少し長め(弓の勢いを少なめ)に弾いて調整の変化を表現しています。ピアノの演奏も、そのバイオリンの弾き方に寄せてもらいました。

※1)ソナタの構成:すごい雑に説明すると、提示部(第一主題→移行部→第二主題)→展開部→再現部(第一主題→第二主題→コーダ)、というのが大体の流れです。さらに雑にルールを説明すると、「展開部は転調が激しい」というのがあります。そのため展開部は特にテンションが高く、曲の中でも盛り上がりを見せる部分になっています。
スプリングソナタ1楽章だと展開部はニ短調、かなり熱量の高い短調なので、弾いていて一番楽しいところです(私見です)。
※2)独奏曲じゃない:コンチェルト(協奏曲)や小品など、独奏の色合いが強い曲はソリストは譜面を見ません。逆に、ソナタ、シンフォニー(交響曲)、コンチェルトグロッソ(協奏組曲)などアンサンブルの曲、オーケストラの曲は楽譜を見て弾くのが通例です。



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