「ピアノ習って、よかった!」ハラミちゃん×大内孝夫【後編】

「ピアノ習って、よかった!」対談の【前編】では、ハラミちゃんのピアノを習っていた経験がとても役立った話や、ピアノを楽しく学ぶコツについて話したお二人。大内孝夫さんの著書『「ピアノ習ってます」は武器になる』の内容を自然に実践していたかのようなリアルなお話が満載でした。後編では、ハラミちゃんがどんな風にしてピアノと共に歩んできたのかを振り返りながら、「ピアノを習うことの良さ」についてさらに考えていきます!

写真/大久保惠造

ピアノ漬けだったハラミちゃんの子ども時代

大内

子どものころ、ハラミちゃんがピアノを習われていたときのことについて聞かせていただけますか。

ハラミちゃん

4歳からピアノを始めて、それはもうピアノ漬けの日々でした。水曜日と土曜日にレッスンに通っていたのですが、まず水曜日は学校帰りに最寄駅で母と待ち合わせをして、電車の中でランドセルを下敷きにして宿題を全て終わらせるんです。それからレッスンを受けていました。家に帰ってきたらもう午後10時、11時でそこからお風呂に入ってちょっと復習して……という感じでした。次に土曜日は午後2時から10時まで。 

幼少時代、ピアノを弾くハラミちゃん
大内

うんうん……え? 午後2時から10時!? (思わず聞き返す大内さん)

ハラミちゃん

そうなんです(苦笑)。ほぼ1日の半分以上ってびっくりですよね。レッスンは前の週に宿題として出された曲から始まり、その後「お茶タイム〜」という時間がありまして。紅茶を淹れるのが得意な先生で、本格的なお茶を入れてくださっていました。 美味しいおせんべいやマフィンなんかと一緒に。そしてその後にもう1回、宿題の曲をやります。それが終わると今度はソルフェージュ(音の聞き取りやリズム、和声感など音楽の基礎能力を養う訓練)や絶対音感の訓練をして、ようやく午後10時に全てのレッスンが終わります。こんな週末を送っていたので、土日って唯一学校が休める日のはずなんですけど、学校がむしろ休憩というか(笑)、毎週水曜日と土曜日に向けての準備をしながら人生を送る!みたいな感じでした。私にとっては水曜日と土曜日が生活の軸だったんです。

大内

すごいなぁ。水曜日から土曜日までは2日しか空いてないから大変でしょう。

ハラミちゃん

そうですね。しかも両方違う先生だったので、要望されることも練習する曲も違うから「人生って大変だな〜」って思いながら(笑)。

上には上がいても“ピアノのハラミちゃん” でいたかった

大内

小学生ですでに人生についてそんな風に思っていたとは(笑)。幼少期からピアノを一所懸命にがんばってこられたハラミちゃんですが、続けるなかで壁を感じた瞬間はありましたか?

ハラミちゃん

壁かぁ、やはりありましたね〜。ピアノを習っていくうちに、ピアノ教室のなかでそこそこ上手いと「コンクール出てみない?」と先生に勧められるんです。先生がそう言ってくださるということは、それなりに見込みがあるんだろうな、と思ってすごく嬉しかったんですよ。でも、いざコンクール会場に足を踏み入れてみると……「同世代に自分より上手な子たちがこんなにいる!」という現実を目の当たりにしちゃって。私も教室では上手なほうでチヤホヤされていましたが、その会場にいた子たちは技術や表現力が私とは圧倒的に違いました。

大内

わかるなぁ。ボクも銀行の同期が優秀な奴ばかりで、「こいつらとまともに勝負しても絶対勝てない」って思いましたもん。

ハラミちゃん

どの世界も同じなんですね。教室では、自分はSやAクラスだと思っていたのが、コンクールに出てみるとCやDクラス。「私も相っ当練習しているはずなのに、この子たちは果たしてどんな練習してるんだろう」と、もう“スーパーすごい人たち”に出会って自分のランクが可視化されたというか……。上には上がいるんだな、と思い知りました。それでも毎年コンクールに挑戦するなかで、自分のやりたい演奏をするのではなく、審査員に届ける演奏をしなくてはいけない、ということを学びました。

大内

コンクールで思うような成績が出せないときもありますよね? そんなとき、何が支えになりましたか?

ハラミちゃん

私のなかには「自分にはピアノしかない」という気持ちが何よりも強くあって。人からの励ましよりも、「自分からピアノを奪ってしまったら何が残るんだろう?」という思いや、自分のアイデンティティを失うことへの恐怖を強く感じていました。例えば学校でもいますよね、「顔が可愛い子」、「頭が良い子」、「リーダーに向いている子」……みたいな。自分にもそういうのが欲しかったんですよ。

大内

キャッチフレーズみたいな?

ハラミちゃん

そうそう!当時周りからは、やはり「ピアノの子」として見られてました。学校で合唱大会があると、「ピアノはハラミちゃん」と言ってもらえていたんですよね。そんなピアノを、辛いからといってやめちゃったら、私にはなんのキャッチフレーズもつかないと思ったんですね。それでピアノだけはどんなに辛くても、自分から手放してはいけないものという感覚がありました。

練習に「遊び」も取り入れながら楽しく!

大内

ハラミちゃんは、先ほどのお話でも小さいころから相当ストイックにピアノに向き合ってこられて、音大でもクラシックを学ばれました。今ではポップスピアニストとして活動されていらっしゃいますが、ポップスに触れられたのはいつごろからでしたか?

ハラミちゃん

小学校1年生のころからです。ジブリが流行っていたときに、私としては普通にただ聞こえてきた音を音楽室で弾いたら、ワーー!!っと友達がピアノの周りに集まってきて、とても喜んでくれたんですね。「え~~~!! 何で弾けるの?」みたいな。そんな友達の反応を見て、「あ、これ(みんなの知っている曲を耳コピして楽譜なしで演奏すること)はこんなに喜んでもらえることなんだ」ということをようやく自覚しました。

大内

なるほど。そういう今の活動につながる原体験があったのですね。

ハラミちゃん

当時から自己流でやっていました(笑)。

大内

普通、クラシック音楽だけを学んでいると、どうしても「即興ができない」「コードが分からない」「アレンジができない」という方が多いですよね。ピアノを習うお子さんたちにもやはりポップスを習うのはオススメでしょうか?

ハラミちゃん

そう思う反面、実は私が育った環境では、ポップスを演奏すること自体はあまり良いとはされていませんでした。だからこそ、基礎がしっかり染み付いている感覚もあるんです。ピアノを勉強中であれば休み程度にポップスを弾くぐらいの感覚がちょうどいい気がします。

大内

「練習」と言って真剣に構えるのではなく、ピアノを弾いて「遊ぶ」感覚ですかね。

ハラミちゃん

そうですね。私も学校の音楽の授業の前後にポップスを弾いていました。 家で耳コピしてポップスを弾くときは、ゲームやアニメと同じ感覚で「これはあくまで休み時間だから」と言い聞かせていましたね。「休み時間にポップスを弾いているんだから、怒られないぞ」って(笑)。

ピアノは一度やめてもまた戻ってこられる!

大内

いくつもの挫折を味わいながら、またジャンルの壁をも乗り越え、これまで培ってきた武器を大切に磨き続けるハラミちゃんの姿勢は、本当に素晴らしいと思います。ハラミちゃんが様々なところで活躍されているのを見て「ハラミちゃんのようにピアノが弾きたい!」という方はたくさんいるはずです。ハラミちゃんの活動は、「ピアノを習おう」という気持ちを強く後押ししてくれる気がします。ハラミちゃんのお話は、まさにボクがこの本のなかで考えていたことと重なるところが多かったです。

『「ピアノ習ってます」は武器になる』(大内孝夫・著)より
ハラミちゃん

ピアノをはじめとする音楽って、長く続けられるともちろんいいですが、もし途中でやめなくてはいけなくなっても、私みたいにいつか戻ってきたりとか。それが比較的簡単にできますよね。

大内

そう! そして戻ってきたら、またその場所でクラシック、ポップス問わず色々な人とつながるきっかけにもなると思います。そういう風に楽しんでいらっしゃる方がうらやましくて。

ハラミちゃん

そうですね。人間関係を構築するうえでも素晴らしい作用があると思います。だからこそ、あまり考えすぎずに気軽に楽しんでいただきたいなと思います。

大内

先ほどのハラミちゃんのお話にもあったように、ピアノを習おうとすると、ついみんなピアニストになるためや音大へ行くために、と考えがちですが、ボクも決してそれだけではないと思うのです。豊かな人生を送るために、ピアノや音楽があると視野がぐんと広がるはずです。ハラミちゃんの掲げていらっしゃる「ピアノを身近にする」という目標にもつながるかもしれません。

ハラミちゃん

今回の対談を通じて、みなさんがピアノやピアノを習うことにアクセスしやすくなってくださると嬉しいですね。

対談を終えて…

ホンモノのハラミちゃんの笑顔は、テレビで見るよりさらにすてきだった。特に弾いているときの笑顔は最高! 今や人気芸能人だから、お高い感じや我儘な面もあるのかな、なんて、じつはお会いする前は心の中で大変失礼なことを思っていたのだけれど、そんなものは微塵もなかった。ピアノへの思い、お米さんへの感謝……それらがひしひしと伝わってくる。今も練習に手抜きは一切ない。自分で自分を強く律しているからこそ、あのすばらしい演奏ができるのだろう。彼女のピアノと向きあう姿勢、それをどう表現したものか……答えは私の本の中にあった。「真摯さ」―――ピアノの神様が与える最高のプレゼント―――その言葉がハラミちゃんにピッタリとあてはまる。そしてボクは、お米さんから大お米さんになった。

最後に、ハラミちゃんのユニークなキャリアの築き方が気になった方へ。
このインタビューにはおさまりきらなかったエピソードは以下の記事で紹介しているので、併せて読んでみてほしい(大内)。

「ハラミちゃんと考える音大とキャリア ハラミちゃん×大内孝夫」(Web音大ガイド)

~おわり~

このインタビューの前編はこちら

ハラミちゃん プロフィール

「ピアノを身近な存在にする」を目標に掲げ、YouTubeを中心に活動しているポップスピアニスト。活動開始から約2年半でYouTube登録者数184万人、総再生回数4.1億回(2021年10月現在)を突破。ストリートピアノの他にも数々のアーティストとのコラボなども実施、来年1月4日には初の日本武道館単独公演の開催が決定している。
オフィシャルサイト:harami-piano.com
YouTube : www.youtube.com/channel/UCr4fZBNv69P-09f98l7CshA
Twitter:twitter.com/harami_piano


大内孝夫(おおうち・たかお) プロフィール

1960年生まれ。みずほ銀行にて本部次長、支店長などを歴任後、武蔵野音楽大学を経て2020 年より名古屋芸術大学芸術学部音楽領域教授。日本証券アナリスト協会検定会員、ドラッカー 学会会員、全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)キャリア支援室長/組織運営委員/ピアノ指導者経営相談窓口担当。これまでにない視点に立った進路・キャリア関連著書が音楽教育界で 大きな話題を呼ぶ。著書に、下記書籍や、本邦初! 大人のための音楽教室ガイド『そうだ! 音楽教室に行こう』、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』(音楽之友社)、『「音大卒」は武器になる』(ヤマハミュージックメディ ア)など多数。

問題解決能力を養うのに、ピアノはとても良い!

『「ピアノ習ってます」は武器になる 』
著:大内孝夫
■定価:1,540円 (税込)
出版社:音楽之友社
詳細はこちら:https://gakufubin.shimamura.co.jp/ec/pro/disp/2/mtg0110495
《本書について》
ピアノを習わないと大損!!―――幼児期からピアノや音楽を習うと「音感・リズム感がつく」、「感性を育む」、そして「脳にいい」という効果はよく知られていますが、じつは、それだけではありません。AIネイティブの子どもたちに、“生きる力”を授ける最強の習い事ともいえる「ピアノ」を習うメリットを、改めて各方面に取材・調査。豊富なデータをもとに検証し、教室の探し方、習い方のコツなどとともに紹介しています。

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この記事を書いた人

KANA

クラシック音楽を中心に、Webメディアでアーティストのインタビューなどを多数行う音大卒のフリーライター。「世の中にクラシック音楽との接点を増やす」を目標に活動中。