結成14年のヴィジュアル系バンドに楽器を始めたきっかけと長く続くコツを聞いてみた

楽器やバンドに限らず、ひとつのことを続けるというのは簡単ではありません。今回はテレビアニメ『遊戯王』シリーズや『デュエル・マスターズ キング!』などのテーマソングを手掛けたり、毎年の結成記念日にはZepp Tokyoでワンマンライブを行うなど、さまざまなシーンで活躍するバンド・vistlip(ヴィストリップ)に、楽器やバンドを長く続けられる秘訣について、教えてもらいました。

それぞれの楽器との出会い方、それぞれの音楽の原点

ー 先日2021年7月7日に開催された結成14周年記念ライブも大盛況でしたね。結成以来、変わらず同じメンバーで活動されている皆さんに、これからバンドを始めたいと思っている人やバンド初心者、またバンド活動に悩んでいる人たちに向けて「バンドの楽しさや魅力」を語っていただきたいと思います。

まずは「vistlipはこんなバンドです」という紹介をお願いいたします。

vistlipのリーダーでギターの海と言います。智(トモ/Vo.)、Yuh(ユウ/Gt.)、海(ウミ/Gt.)、瑠伊(ルイ/Ba.)、Tohya(トーヤ/Dr.)の5人組でヴィジュアル系バンドをしています。

vistlipは、割と幅広い音楽を自由にやっているバンド、と言えるかな。事務所もレーベルも非常に理解がある関係に恵まれたので、やりたいことをやりたいように、やらせてもらってると思います。

なので、昔の曲や写真を見聴きすると、そのときどきで方向性が変わっているように見えると思うんですけど、根本はラップもラウドもありのミクスチャーバンド。その根本を崩さないように14年間で少しずついろんなものに手を出して、少しずつ(会場の)キャパも広げてきました。

ー ところで皆さんは、どのようなきっかけで楽器を始められたのですか?

Tohya

僕は中学校のときに吹奏楽部で。本当はサックス希望だったんですけど人気すぎて、第3希望のパーカッションになったんです。ドラムに触れたのはそこが最初ですね。バンドを始めたのは高校生のときかな。

瑠伊

僕は中2の夏休み明けに、同級生が学校にギターを持ってきてたのがきっかけです。それがやけにかっこよく見えて、その年の秋ぐらいにはギターを買いました。

1年間ぐらい練習したかな。中3のときに文化祭に出たいからバンドメンバーを探したんですけど、ギターをやっている子はたくさんいて。でもベースは全然いなかったので「じゃあやってみようかな」ってベースを始めました。

Yuh

俺は幼稚園くらいからずっと弦楽器を。でも、子ども心にクラシックはテレビとか表舞台に出られる機会が少ないんじゃないかと勝手に思ってたんですよね。

それで、小5のクリスマスに「テレビに出たいからギターやりたい」って言って、ギターを買ってもらったんです。中2ぐらいまではただ弾いて楽しむ感じだったんですけど、学校で自分のやりたいことを発表する時間があって、そこでレニー・クラヴィッツをコピーしてギターを弾いたのが、最初のギター披露経験かな。

うちは家にアコギがあったんですけど、小5くらいのときにLUNA SEAやhideに憧れて触ってみたものの「音が全然違うじゃん!」ってすぐにやめてしまいました(笑)。

中学校に入ってから、親に隠れてお金を貯めて、内緒でエレキギターを買いました。でも全然弾けなくて。X JAPANのコピーに挑戦したけど、(譜面に)何が書いてあるのかがわからなくて。それで「ギターの才能ないんだな」と思ってまたやめましたね(笑)。

Yuh

X JAPANは鬼門! 俺も中2くらいで『Silent Jealousy』を練習して挫折しました。海と全く一緒でした!

そのあとは、高校を卒業する前ぐらいのタイミングで自分がボーカルのバンドを組んでたんですけど、ギターの子が辞めちゃって、バンドが3人になった。「じゃあギターボーカルやろうぜ!」となって、家にあるギターを再び練習し始めましたね。

僕が一番最初に音楽に触れたタイミングは幼稚園生くらいのときかな。親が音大卒だったので、小さい頃からピアノも触れてたし、4人とかで歌のステージにも出させられてた。ちょっと普通の少年とは違う活動をしてたと思います。

小4のときには人前で歌うこと自体が嫌いになってしまったんだけど、小5のときにバンドと出会って。バンドやりたくて、一人で家で歌ってたから、ビブラートとかシャウトも全部家で練習したんです。

中3の始めくらいに久しぶりに人前で歌ったら、自分は人よりも歌えるんだなっていうことに気がついてた。それがきっかけになって人前で歌うようになったんです。

ヴィジュアル系バンドの魅力とは?

ー ヴィジュアル系の魅力ってなんですか?

「何でもできる」っていうのが一番の魅力だと思いますね。

ヴィジュアル系って、実は「音楽のジャンル」じゃないですからね。ラウドでもロックでもHIPHOPでもなんでも、お化粧していてバンド編成なら全て「ヴィジュアル系バンド」になるのが良いところ。

ー vistlipにとっては、ヴィジュアル系であることは、利点になっていると思いますか?

なってると思いますね。

Yuh

結果的に利点になった、ということかも。

自分たちのやりたいことは、時期によって変わります。そういうバンドの変化を受け入れられる懐の深さは、ヴィジュアル系で良かったと思います。

ただ、ヴィジュアル系バンドには世界観を視覚的に作る…二次元にも近いようなイメージがあるんですよね。そういうバンドイメージがない人は、ヴィジュアル系には向かないかもしれない。

ー vistlipの皆さんにとって、音やビジュアル、衣装などで自分たちの世界観を立体的に表現できるヴィジュアル系は、とても良いジャンルなんですね。

本当にそうですね。

特に、僕が打ち出す作品や世界観は、そういう作り方じゃないと相乗効果が出てこないものだから。ただ曲だけじゃなくて色々な手段を使っていかないと、表現したいものが表現しきれない。

アートのような要素が音楽の中でもしっかり表現できるジャンルだと思うんです。

僕は若い頃、服飾デザインの専門学校に通っていたんです。ヴィジュアル系って、音楽ができる、服を作ったり選んだりもするし、グラフィックデザインやジャケットデザインも、全部トータルでやらなきゃいけないジャンルなんですよ。「それって俺がやりたいこと全部できるじゃん!」って思ったんですよね。

だから、卒業するときに就職が決まってたんですけど、ヴィジュアル系バンドを続けるために就職を断っています。

ー ヴィジュアル系バンドの方が、勉強したことを全て活かせると思ったんですね。

服屋なら販売仕入れ、デザイナーならデザイン、どこかに所属したら1つのことしかできなくなってしまうと思ったんです。

それなら、やりたいこと全部できるヴィジュアル系をしっかりやればいいと思ったんですよね。

ー 衣装やヴィジュアルを含めたトータルプロデュース、そういったものを「面倒臭い」と思うバンドマンもいると思うので、vistlipがトータルプロデュースを楽しめるメンバーに恵まれたのは、幸運だと思います。

確かに、そうかもしれないですね。

バンドを長く続けるために、vistlipからのアドバイス

ー 今まで14年間活動を続けてきたvistlipから、バンドを長く続けるコツを教えてください。

瑠伊

縛られすぎなかったことが良かったんじゃないかなと思います。僕らにとってはやりたいことをやり続けてきただけなので。

みんなやりたい音楽をやるためにバンドを始めると思うんです。でも、途中で「やらなきゃいけない」とか「こうしなきゃいけない」みたいなのに、無意識に縛られちゃってる人は多いと思いますね。

そういうバンドマンは見ていてつまらなそうだし、愚痴しか言ってない。気付いたらやめたり解散したりしていることも多い。

あとは、メンバー間でちゃんと喋るってことは意識してると思います。

もちろん、14年もやってるからバンド内が嫌な空気になったこともあるし、他にもバンドの展望について話せない時期があったり…。

でも、そういう時期もみんなで話し合って乗り越えてきました。バンド内でのコミュニケーションも多い方だと思いますし。

瑠伊

メンバーのグループLINE、気付いたら100とか通知溜まってるとき、あるよね(笑)。

「結成14年のわりに異常に仲良いよね!」ってよく言われますね。

Tohya

よく音楽性の違いで揉めると言う話がありますよね。若いときは確かに「俺の方が」とか「悔しい」と言う気持ちもあったけど、今は「どんどん良い曲作ってください!」って感じ。余計なマイナス感情を持たないことが、バンドをうまくやっていくコツなのかなと感じます。

Yuh

もちろんお互いへのリスペクトもあるけど、変な曲持ってくると智が絶対に認めないからね。

変な曲を送ってきたら、誰もLINEの返事しないからね(笑)。

Yuh

俺たちは、性格も、好きな音楽性もバラバラなので、もしも似た感じの音楽が好きな人の集まりだったら、それこそ曲を作るときに「俺が俺が!」ってなってたかもしれないですね。

うちはそれぞれを認め合ってるし。だから、vistlipは音楽性の違いでの解散はないかなと思います。

ー それぞれの個性をリスペクトした結果として、長く続いているということですね。vistlipらしいなと思います。

最後に、今からバンドを始めたい、楽器を始めたい読者に、メッセージをいただければと思います。

バンドにはいろんな形がありますからね。プロになりたい人もいるし、音楽が本当に好きで一生続けたい人もいるだろうし。でも、プロミュージシャンになりたい人にとっては、最初が大事だと思います。

「俺が天才だ」ぐらいの自信を最初に持っていた方が良いです。勉強とか、人生経験とかは後でも積めるかもしれないけど、音楽や楽器のスキルだったり技術は、絶対に最初に身に付けておくべきだと思います。

瑠伊

バンドをやるのにビジネスっぽくしすぎないことが大事だと思います。語弊があるかもしれないけど僕は今でもバンドを「趣味の延長」だと思ってるから。

音楽を仕事だって、嫌なことみたいに考えちゃうと、どんどん嫌になっていくので、常に楽しむこと。

好きで始めてるわけだから、その気持ちがブレないようにするのは大事なんじゃないですかね。

Yuh

俺はギターを好きでいられるように、嫌いにならない努力が大事かな。

好きに弾けるようになれば好きになるし、がんばればがんばった分だけ上手くなるから好きになるし。

だからこそ、今から始める人は、練習には時間を惜しまず努力した方がいいと思います。

俺は10代の頃からギターをやってきたわけではないので、人より当然弾けないし、大人になって練習することが多いから、人より歩みは遅いと思っています。でも、人より劣ってる分努力をすればいいし、どれだけ練習が必要なのか、かかる時間、かかるお金、自分の生活にどれだけ影響出てくるか…やってみて初めてわかることも多いはず。

そういう意味でも、悩むぐらいならやった方がいいんじゃないかなって思いますね。

人よりも劣ってると思うなら、その分がんばれって思います。

今どきだったら多分仲間探しもインターネットでできるし、YouTubeとかもあるし。気軽にやってみたらいいんじゃないかなって思います。

ー vistlipの皆さんの仲の良さや音楽に対する思いを垣間見ることができ、それぞれの音楽のルーツからバンドを続けるコツまで為になるお話をたくさん聞くことが出来ました。今回はインタビューにお答えいただき本当にありがとうございました!

2021年10月17日(日)、Zepp Tokyoでの最後の公演"Screams under the Milky Way" 開催
会場:Zepp Tokyo 時間:OPEN 17:00 / START 18:00
詳細はHPにて
vistlip公式HP https://vistlip.com/
vistlip公式Twitter https://twitter.com/vistlipofficial

この記事を書いた人

戸崎 友莉

音楽大好きオタク母さん。2012年からストリート系ファッション雑誌でなぜかヴィジュアル系コーナーを担当。2014年にフリーランスとして独立し、多くのアーティストのインタビューやライブレポートをこなしてきた。アニメと漫画と音楽と自転車を愛す。