島村楽器 Update!をご覧の皆様、こんにちは。
アコースティックギター・バイヤーの古川です。
今回、私が訪ねたのは、国産アコースティックギターの歴史の中で、長い歩みを重ねてきたブランド、タカミネのギター工場です。
「エレアコといえばタカミネ」。
そう言われることの多いタカミネですが、その背景には、ステージで使えるエレアコを作るための技術だけでなく、アコースティックギターそのものの生音を大切にしてきた歴史があります。
今回の取材では、木材の管理から木工、塗装、仕上げ、電装、完成検査まで、タカミネのギターができるまでの工程を追いました。
工場を歩いていてまず感じたのは、ギターづくりには、完成したギターからは見えない時間がたくさん含まれているということでした。
木材が工場へ届き、状態を整えられ、必要な時間を過ごし、さまざまな工程を経て、ようやく一本のギターになります。
ギターは、完成した姿だけを見ると、木材と金属と塗装で作られた楽器に見えるかもしれません。
しかし、その一本の中には、素材が落ち着くまでの時間、職人やスタッフの判断、機械の精度、そして演奏現場を知る人たちの経験が積み重なっています。
この記事では、タカミネの歴史と製作工程、工場で聞いた木材にまつわる話、そして島村楽器でご案内しているおすすめモデルについてご紹介します。




タカミネの歩みと、エレアコの歴史

タカミネの歩み


タカミネのルーツは、1959年に岐阜県坂下町、現在の中津川市坂下で創業した大曽根楽器製作所にあります。
創業者は名古屋で弦楽器製作の修行を積んでいましたが、伊勢湾台風をきっかけに、奥様の実家がある坂下町へ移住。そこでアコースティック楽器の工房を立ち上げました。
当時は演歌や歌謡曲が音楽の中心にあり、工房ではガットギター、いわゆるクラシックギターが多く作られていました。
1962年には社名を高峰楽器製作所へ変更し、1965年には株式会社へ移行。その後、輸出やOEM生産を通じて、ギター専門メーカーとしての歩みを進めます。
1970年代半ばには自社ブランド「Takamine」を立ち上げ、海外への輸出を本格化しました。
坂下は木工業が盛んな地域でもあり、木材を扱う技術や職人が身近にいたことも、タカミネのギター作りを支える基盤になっていきました。
エレアコの転換期と現在の技術

タカミネにとって大きな転換点となったのが、1970年代後半から始まったエレクトリック・アコースティックギター、いわゆるエレアコの開発です。
当時、コンサートの大規模化に伴い、アコースティックギターの音をPAシステムから自然に、そして十分な音量で届けることが課題になっていました。
タカミネは、ギターにピックアップを後付けするだけでなく、ブリッジやピックアップ、プリアンプまで含めて、エレアコとしての楽器全体を設計しました。
その中で生まれたのが、タカミネ独自のパラスティック・ピックアップです。
ブリッジサドルの真下に配置し、弦振動を直接捉える構造によって、各弦の信号を明瞭に出力します。弦同士の振動干渉にも配慮され、大音量のステージでも扱いやすいエレアコサウンドを実現しています。
1978年には試作機が完成し、国内外のアーティストから意見を取り入れながら改良を重ね、1979年には海外でエレアコを発売しました。
その後、タカミネはエレアコの分野で世界的に知られるようになり、ステージやレコーディングで使用するプレイヤーも増えていきました。
1988年には、プリアンプとバッテリーをひとつのユニットにまとめた「1ユニット・プリアンプ」を発表。1998年には2ウェイ・トラスロッドや、オンボード・デジタル・プリアンプ「DSP」を発表するなど、エレアコの音作りとメンテナンス性を広げてきました。
エレアコの技術で世界に知られるようになった一方で、タカミネが大切にしているのは、電気を通した音だけではありません。
ステージで使いやすいことと、アンプを通さずに弾いたときのアコースティックサウンド。その両方を大切にしていることが、現在のタカミネのものづくりにつながっています。
タカミネギターができるまで
数字で見るタカミネ工場――約50人の現場から生まれるギター





タカミネの工場で働くスタッフは、取材時点で約50人。生産本数は、平均すると1日約40本、月間では多いときで約800本に達します。
この数字だけを見ると、同じ製品を効率よく作り続ける工場を想像するかもしれません。しかし、タカミネのギターは、すべてが同じ工程で進むわけではありません。
木材の種類やモデル、塗装、仕様によって確認するポイントが異なり、一本ごとに調整が必要になります。機械で安定した精度を出しながら、最後は人が木材や仕上がりの状態を見て判断する。その積み重ねによって、毎日の生産が支えられています。
取材時点では、国内生産モデルの約8割が海外向けとのことでした。
高峰楽器製作所としては、取材時点で64年目。長い歴史を持つメーカーですが、現在の工場では、機械による精密な加工と、人の経験による最終判断が組み合わされています。
材料管理――ギター作りは、木材を待つところから始まる





ギターの材料となる木材は、仕入れてすぐに加工できるわけではありません。タカミネでは、北米やカナダ産のスプルース、インドや南米産のローズウッドをはじめ、ハワイアン・コア、ハカランダなど、さまざまな木材を専門業者から仕入れています。
木目や厚み、乾燥状態など、ギター用の材として適した条件を確認しながら、現在は海外であらかじめ製材され、左右の木目が鏡像状になるように組み合わされたブックマッチ材を購入することが多くなっています。
仕入れた木材は、含水率を約7%の目安に整え、材の種類や状態に応じて自然乾燥、強制乾燥、シーズニングを組み合わせながら、製作場所の環境に馴染ませていきます。工場内には、最大約24,000セットを収容できる保管設備があり、なかには10年以上、長いものでは30年以上にわたって出番を待つ木材もあります。
工場内は、蒸気とエアコンを併用して温度と湿度を管理しています。木材の種類によって性質が異なるため、乾燥にかける時間や保管方法も一律ではありません。木材が落ち着くまでの時間を大切にしながら、製作に適した状態へ少しずつ整えていきます。
また、ネックやボディの加工、材料の一部の加工や乾燥などは、専門性を持つ関連会社や協力会社と連携して進められています。多くの人がそれぞれの技術を生かして工程をつなぎ、最後にタカミネのスタッフが一本ごとの状態を確認して仕上げる。木材がギターになるまでの長い時間そのものが、タカミネのものづくりを支えているのです。
ギターづくりは、木を削る前から始まっています。木材が工場へ届き、状態を整えられ、必要な時間を過ごし、ようやく一本のギターへと姿を変えていく。その過程を知ると、完成したギターを手にしたときの見え方も少し変わってくるように感じます。
トップ材・バック材の板厚調整――ブックマッチ材をギター用の板材へ整える


シーズニングを終えたブックマッチ材は、大型ワイドサンダーにかけ、各モデルに必要な板厚へと調整します。
ブックマッチとは、二枚の材を本を開いたように組み合わせ、左右の木目が鏡像状に見えるようにする方法です。木目の流れや色合いを生かして組み合わされた材は、トップ材やバック材として使われます。
板厚は、ボディの強度だけでなく、トップ材やバック材の振動、音の立ち上がり、楽器全体の反応にも関わる要素です。モデルごとの設計に合わせて、必要な厚みに整えられていきます。
ブレーシングの成形と調整――強度と振動を支える内部構造


表板と裏板の裏側には、補強と振動設計のためのブレーシングが取り付けられます。表板は弦の張力を受けながら振動するため、薄く作られている一方で、十分な強度も必要です。
ブレーシングは、その強度を支えながら、表板や裏板の振動を整える役割を担います。各モデルの設計に応じた配置を再現するため、ブレーシング材を専用の治具に所定の位置で配置します。その後、専用の真空プレス装置を用いてブレーシングを圧着し、表板や裏板に強固に接着します。



接着後は、職人がブレーシング材を一本ずつ削り、モデルごとの設計に沿って形状を整えていきます。
ブレーシングは、強度を高めればよいというものではありません。厚く残しすぎると表板や裏板の振動を妨げる一方、削りすぎると必要な強度を保てなくなる可能性があります。
どの部分を残し、どの部分を削るのか。構造の強度と振動特性のバランスを見極めながら仕上げる、職人の経験と技術が生きる工程です。
ボディ成形――平面の木材を立体的なボディへ



ボディ成形では、側板をボディ金型にセットし、ネックブロック、エンドブロック、ライニングなどを取り付けます。
ライニングは、表板や裏板と側板を接着するための内側の部材です。完成後は外から見えにくい部分ですが、ボディ全体を安定させるうえで欠かせません。


側板を専用の金型に沿わせて固定し、ボディの輪郭を保った状態でディスクサンダーを使い、外周の形状を整えます。こうして表板・裏板を取り付けるための輪郭を仕上げた後、それぞれに設けられた曲面や接合面の状態を確認します。



表板・裏板を側板に正確に接合し、ボディを一体化させます。接合時にブレーシングやライニングが干渉しないよう、専用治具を用いて必要箇所を精密に加工します。各部材の位置関係や接着面の状態を確認しながら組み上げる、精度が求められる工程です。
バインディングの取り付け――ボディを保護し、輪郭を整える




成形されたボディのエッジには、バインディングが取り付けられます。
バインディングには、ボディの縁を保護する役割と、外観を整える役割があります。ボディの輪郭に沿って溝を切削し、バインディング材を接着していきます。


曲面に沿って材を正確に合わせる必要があるため、接着には丁寧な作業が求められます。
ギターを構えたときに目に入るボディの縁は、楽器全体の印象を大きく左右します。音に直接関わる内部構造だけでなく、触れたときや眺めたときの感覚まで考えられている工程です。
インレイワーク――機械の精度と職人の感性



タカミネのギターを手に取ったとき、印象に残る意匠の一つが、ロゼッタやヘッド、指板、ボディに施されたインレイです。
アバロンやパールシェルなどの貝材は、図柄に合わせて職人が一片ずつ切り出します。さらに、パーツの形状や配置を確かめながら、所定の位置へ手作業で丁寧に埋め込んでいきます。素材の表情を生かし、細部まで緻密に仕上げる職人の技が、ギターに独自の存在感を与えています。




現在では、CNCルーターやレーザーカッターも活用されています。人の手では切り出しにくい細かなパーツを、安定した精度で加工できることは、現代のギター製作を支える重要な要素です。
一方で、機械が自動的にインレイの美しさを決めるわけではありません。どの材を選び、どの木目を生かし、どのような色を組み合わせるのか。装飾全体のバランスを見極めるのは、スタッフの知識と感性です。
さらに、加工されたパーツを所定の位置に一つずつ合わせ、丁寧に埋め込んでいくのも職人の手作業です。機械による精密な加工と、職人の目と手による細やかな仕上げが合わさることで、インレイは楽器の個性を形づくります。
ネックジョイント加工と指板の取り付け――弦の張力を受け止める構造




ボディとネックの接合には、ダブテイルジョイントと呼ばれる接合方法が用いられています。専用工具でボディ側とネック側の接合部を加工した後、職人が仮合わせと微調整を繰り返します。接合面の当たりや密着状態を確認しながら、適切なネック角度に仕上げる、精度が求められる工程です。
ネックとボディの接合部は、弦の張力を受け止めるとともに、弦振動をボディへ伝える重要な部分です。接合角度や密着状態は、演奏性や音の伝わり方にも関わります。
ネックにはトラスロッドが組み込まれ、その上に指板が接着されます。タカミネでは、順反りと逆反りの両方向に対応できる2ウェイ・トラスロッドも採用されています。弦の張力や環境変化によってネックの状態が変わった場合に、調整の幅を持たせるための構造です。
塗装――薄さと美しさを両立する



木工が終わったボディは、塗装工程へ進みます。塗装には、木材を保護するとともに、楽器の外観を整える役割があります。一方で、アコースティックギターはボディ全体が振動する楽器です。そのため、必要な保護性能を確保しながら、楽器の響きを生かすバランスが求められます。
塗装に入る前に、塗装しない部分をマスキングで保護します。まず目止めを行い、木材の導管や表面の凹凸を整えます。モデルや仕上げによっては、着色成分を含む目止め材を用いて、目止めと着色を同時に行う場合もあります。
目止めの後は、ポリウレタン系塗料を下塗りとして薄く吹き付け、乾燥させます。この作業は一度では終わらず、薄く吹き付けて乾燥させる工程を、合計で6回ほど繰り返します。下塗りを重ねた段階でも表面には細かな凹凸が残るため、研磨を行い、少しずつ平滑に整えていきます。
着色を別工程で行うモデルでは、表面を整えた後にモデルに応じた色を施し、クリア塗装を重ねて仕上げます。ナチュラルカラーでは木材の表情を生かし、バーストやブラックなどのカラーでは、色の境目や濃淡を確認しながら塗装します。


木材の導管や表面の凹凸を整えながら、必要な保護性能を確保し、塗装面を滑らかに仕上げていきます。各工程の合間には、職人がギター全体を手作業で目視し、塗膜の状態や細かな凹凸、研磨の仕上がりを丁寧に確認・調整します。
塗装は、ただ色を付ける工程ではありません。木材の状態やモデルの仕上げに合わせて、吹き付ける量や研磨の加減を見極める必要があります。こうした細部にわたる確認と調整が、完成時の外観や質感を大きく左右する重要な要素です。


塗装後は、まず水研磨を行い、塗膜の表面に残る細かな凹凸を整えます。研磨では工程に応じてペーパーの番手を使い分け、表面の状態を確認しながら少しずつ仕上げていきます。使用する番手は工程によって異なり、最終仕上げでは1,500番程度のペーパーを使うこともあります。
水研磨の後は、バフ研磨によって表面を磨き上げ、塗装面の艶を整えます。光の反射や手触りを確かめながら丁寧に仕上げることで、滑らかで均一な塗装面が生まれます。完成時の艶や質感は、塗装だけでなく、こうした研磨工程の積み重ねによって形づくられています。
指板の調整とフレット打ち――演奏性を決める仕上げ



塗装後は、指板の表面を専用のサンダーマシンで調整します。まず、レーザーポインターを用いて指板の状態を一本ごとに確認します。その測定結果を踏まえ、個体ごとの状態に合わせて、指板表面を0.1ミリ単位でサンディングしていきます。
同じモデルであっても、木材の状態や塗装後の変化によって、ネックにはわずかな個体差が生じます。そのため、決められた寸法に一律に合わせるのではなく、それぞれの状態を見極めながら表面を整えることが重要です。指板の仕上がりは、フレットを正確に取り付けるための土台にもなります。
指板を整えた後、フレットを打ち込みます。フレットの高さや並びは、音程の安定や演奏性に関わるため、打ち込み後も一本ずつ状態を確認します。高さを調整し、端部を滑らかに仕上げることで、演奏時の引っ掛かりを抑え、スムーズな弾き心地へと整えていきます。
ブリッジ、ナット、ピックアップの取り付け

ブリッジを表板上の所定の位置に合わせ、専用の治具を用いて固定しながら接着します。接着面が表板にしっかり密着するよう圧着し、ブリッジを強固に取り付けます。弦振動を受け止めて表板へ伝えるブリッジを確実に接合するため、位置決めと圧着が重要となる工程です。




ブリッジの接着面は、塗装前にマスキングで保護しておきます。塗装後にマスキングを剥がして表板の木地を露出させることで、塗膜を介さず、ブリッジを表板に直接接着できるようにします。ブリッジは、弦振動を表板へ伝える重要な部品です。





ナットは一本ずつギターに仮合わせし、職人がサンダーで少しずつ研削しながら高さを調整します。研削のたびに収まりや高さを確認し、各ギターの状態に合わせて微調整を重ねて成形します。
ナットの形状を整えた後、専用機で弦溝を加工します。弦溝の位置や深さは、弦高や演奏性、音程の安定に関わるため、成形と溝切りの各工程で精度が求められます。




プリアンプ・ユニットを取り付ける開口部は、専用機を用いてボディに加工します。その後、タカミネ独自のパラスティック・ピックアップをはじめとする電装パーツを組み合わせ、各モデルに対応したプリアンプ・ユニットを取り付けます。
エレアコの電装部分は、単に音を拾うための装置ではありません。どのような演奏環境で使うのか、どの程度の音量で鳴らすのか、どのような音作りをするのかまで考慮して構成されています。
弦を張り、一本ごとの状態を確認する



ペグやブリッジサドルを取り付け、弦を張ると、ギターはようやく楽器としての姿になります。
しかし、ここで完成ではありません。
ネックの状態、弦高、フレットの具合、各弦の音量バランス、電装系の動作などを一本ずつ確認し、必要に応じて調整が行われます。
ギターは木材で作られているため、一本ごとに個体差があります。機械で数値を確認することは大切ですが、最後には人が実際に音を出し、手で弾き心地を確かめる必要があります。数値と音の両方を確認しながら、出荷される状態へ仕上げられていきます。
出荷――ギターが演奏者のもとへ

最終確認を終えたギターは、一本ずつ丁寧に梱包され、各楽器店へ発送されます。工場で多くの工程と確認を重ねて完成した一本は、店頭を経て、演奏者のもとへ届けられます。
タカミネギターのこだわり
パラスティック・ピックアップが生む明瞭な出力



タカミネ独自のパラスティック・ピックアップは、ブリッジサドルの真下に配置され、弦振動を直接捉えます。
この構造によって、音の分離がよく、各弦の輪郭が明瞭なサウンドを作りやすくなっています。また、大音量のライブでもハウリングを抑えやすい点は、長年にわたって多くのプレイヤーに支持されてきた理由のひとつです。
スティール弦用とナイロン弦用で、それぞれの弦の特性に合わせたピックアップが用意されていることも、タカミネの細かな配慮です。
交換やメンテナンスを考えた1ユニット・プリアンプ



タカミネでは、1ユニット・プリアンプに対応したモデルにおいて、プリアンプと電池ボックスをひとつのユニットにまとめています。
対応するユニットであれば、プリアンプの交換やアップグレードを行いやすく、トラブル時にもユニット単位で対応できる点がメリットです。
また、電池ボックスと一体になっているため、電池交換時に弦を緩める必要がない点も実用的です。
※TSPシリーズに搭載されているCTⅢN(TSP)は、薄胴モデル専用のプリアンプです。1ユニット・プリアンプの共通互換対象ではないため、交換やアップグレードを検討する場合は、モデルごとの対応状況を販売店またはメーカーへご確認ください。
木材を管理する環境




木材は、ギターの音や強度、外観を左右する重要な素材です。タカミネでは、木材の種類や状態に応じて乾燥方法や管理方法を変え、自然乾燥と強制乾燥、シーズニングを組み合わせながら、製作に適した状態へ整えていきます。
自然乾燥室では、時間をかけて木材を乾燥させます。強制乾燥室では、木材の種類や状態に応じて乾燥を進め、含水率を調整します。
乾燥を経た木材は、温度と湿度を管理した専用のエアコン室でシーズニングされます。乾燥方法を組み合わせるだけでなく、一定の環境で保管して材を落ち着かせることも、木材を安定した状態に整えるための大切な工程です。
スプルース、シダー、マホガニー、ローズウッドなど、それぞれの材が持つ性質を見極めながら、モデルに適した組み合わせが考えられます。材料を仕入れて加工するだけではなく、材が安定するまで待ち、状態を見極めて次の工程へ進める。その時間の使い方も、タカミネのギターづくりを支える大切な要素です。
機械を使いながら、最後は人が判断する

CNCルーターやレーザーカッターによって、精密な加工や均一なパーツ製作が可能になっています。
一方で、どの材料を選ぶのか、どの程度加工するのか、仕上がりをどう判断するのかは、スタッフの経験と感覚に委ねられています。
機械加工によって基準を作り、職人が木材の状態を見ながら仕上げる。この組み合わせによって、安定した品質と、木材ごとの個性が両立されています。
ダブル・サドルによるピッチ調整

タカミネでは、ナイロン弦、一部モデルを除く現行製品に、1・2弦側と3〜6弦側でサドルを分けたダブル・サドルが採用されています。
弦ごとのスケールを微調整しやすくすることで、安定したピッチを実現するための構造です。
アコースティックギターでは、弦高や弦の太さ、張力によって音程感が変わることがあります。見た目には小さな違いですが、演奏時の自然なピッチ感を支える設計です。
エンドピン・ジャックの耐久性

ジャックとエンドピンを一体化し、ギター本体へしっかりと固定する構造もタカミネの特徴です。
シールドケーブルを使用するステージでは、ケーブルが引っかかったり、引っ張られたりすることがあります。ジャック部分のぐらつきや脱落を抑え、接触不良にも配慮した設計になっています。
ステージで使われる楽器にとって、音質だけでなく、トラブルを減らす構造も重要です。
島村楽器おすすめモデル

今回紹介するモデルでは、ピックアップの構成が機種ごとに異なります。
タカミネの確かな品質をベースに、ボディサイズや使用する木材、ピックアップ・プリアンプの仕様に個性を持たせたモデルを紹介します。
コンタクト・ピエゾを搭載したモデルやナイロン弦を採用したエレガット、薄胴で扱いやすいモデルなど、演奏スタイルや使用シーンに合わせて選べるラインナップです。
Takamine DMP50S カラーNAT/WR


DMP50Sは、タカミネの500シリーズをベースに、島村楽器向けの仕様を加えたコラボレーションモデルです。
カラーは、木材の表情を楽しみやすいナチュラル「NAT」と、ステージで印象的なワインレッド「WR」をラインナップしています。
ボディトップにはスプルース単板、バックにはローズウッド単板を採用。500シリーズらしいボディ容積を確保し、エレアコとしての使いやすさだけでなく、アンプを通さない生鳴りにも配慮されています。
指板にはストライプドエボニーを採用。音の立ち上がりや輪郭に加え、外観上のアクセントにもなっています。
DMP50Sの大きな特徴は、パラスティック・ピックアップとコンタクト・ピエゾ・ピックアップを組み合わせたデュアルピックアップ仕様です。今回紹介する島村楽器おすすめモデルの中で、コンタクト・ピエゾ・ピックアップを搭載しているのはDMP50Sのみです。ここからは、それぞれのピックアップとプリアンプの特徴をご紹介します。
パラスティック・ピックアップ

ブリッジサドルの下に配置されたパラスティック・ピックアップは、弦振動を明瞭に捉えます。
音の分離がよく、大音量のライブでもハウリングを抑えやすいため、ストロークやバンドアンサンブルでも扱いやすいサウンドです。
コンタクト・ピエゾ・ピックアップ

コンタクト・ピエゾ・ピックアップは、ギタートップの振動を捉えます。
パラスティック・ピックアップが弦の輪郭を明瞭に出力するのに対し、コンタクト・ピエゾはボディトップの振動や箱鳴り感を加えます。また、ボディを叩くパーカッシブな奏法にも対応しやすく、演奏表現の幅を広げます。
CT4-DX(DMP)プリアンプ――18V駆動による広いダイナミックレンジ

プリアンプにはCT4-DX(DMP)を採用し、9V電池2本による18V駆動を実現しています。
広いダイナミックレンジを備え、優しく弾いたときの繊細なニュアンスから強いストロークまで、演奏の音量差を生かした音作りが可能です。
2系統のEQに加え、ピックアップのミックス・バランスやノッチフィルターを備え、演奏や会場に合わせた調整ができます。ノッチフィルターは、選択した周波数を−6dBまたは−12dBカットでき、ライブ会場ごとの鳴りに合わせる際にも役立ちます。
一人で弾くときと、バンドの中で弾くとき。小さな会場と大きなステージ。奏法や音量が変わっても、音作りの方向を調整しやすいところが、このギターの魅力です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カラー | NAT(ナチュラル)/WR(ワインレッド) |
| トップ | スプルース単板 |
| サイド | ローズウッド |
| バック | ローズウッド単板 |
| ネック | マホガニー |
| 指板 | ストライプドエボニー |
| スケール | 644mm |
| ナット幅 | 42mm |
| プリアンプ | CT4-DX(DMP) |
| ピックアップ | パラスティック・ピックアップ+コンタクト・ピエゾ・ピックアップ |
| ポジションマーク | オリジナルダイヤ |
| 付属品 | セミ・ハードケース |
Takamine TSP10NCS

TSP10NCSは、タカミネと島村楽器のコラボレーションによるエレガットギターです。
シンライン構造による薄胴ボディと、42.5mmのネック幅を採用。クラシックギターのネック幅に難しさを感じていた方や、アコースティックギター、エレキギターからナイロン弦ギターへ持ち替えたい方にも扱いやすい設計です。
スプルース単板のトップとローズウッドのサイド&バックを組み合わせ、ナイロン弦らしい柔らかな響きに加え、音の輪郭や余韻も感じやすいサウンドに仕上げています。
VIのポジションマークやアバロンロゼッタなど、外観にもこだわりが見られます。
ナイロン弦ギターを始めたい方はもちろん、弾き語りやソロ演奏、ライブで使用できるエレガットを探している方にもおすすめです。
| メーカー | Takamine |
|---|---|
| 型名 | TSP10NCS |
| カラー | N |
| 販売価格 | ¥178,200(税込) |
| JAN | 4582270005115 |
| オンラインストア | 商品ページを見る |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カラー | N(ナチュラル) |
| トップ | スプルース単板 |
| サイド | ローズウッド合板 |
| バック | ローズウッド合板(ARCHED) |
| ネック | マホガニー |
| 指板 | ローズウッド |
| スケール | 644mm |
| ナット幅 | 42.5mm |
| プリアンプ | CTⅢN(TSP) |
| ピックアップ | パラスティック・ピックアップ |
| ポジションマーク | VI |
| 付属品 | セミ・ハードケース |
Takamine TSP10CS

TSP10CSは、TSPシリーズの薄胴構造を採用したスティール弦エレアコです。
ボディが薄いため、エレキギターからの持ち替えにも違和感が少なく、立って演奏する際にも取り回しやすいモデルです。
薄胴ギターでは低音の量感が控えめになりやすい傾向がありますが、ローズウッドをサイドとバックに採用することで、音の輪郭と響きのバランスを整えています。
グレイ・ブラック・バーストのカラーに、J-Cアイボリーのピックガード、スクエアのポジションマークを組み合わせ、ステージ上でも印象に残るデザインに仕上げています。
音色だけでなく、抱えたときの軽快さや、エレキギターに近い操作感を重視する方に向いたモデルです。
| メーカー | Takamine |
|---|---|
| 型名 | TSP10CS |
| カラー | GBB |
| 販売価格 | ¥174,900(税込) |
| JAN | 4582270005108 |
| オンラインストア | 商品ページを見る |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カラー | GBB(グレイ・ブラック・バースト) |
| トップ | スプルース単板 |
| サイド | ローズウッド合板 |
| バック | ローズウッド合板 |
| ネック | マホガニー |
| 指板 | ローズウッド |
| スケール | 630mm |
| ナット幅 | 42.5mm |
| プリアンプ | CTⅢN(TSP) |
| ピックアップ | パラスティック・ピックアップ |
| ポジションマーク | スクエア |
| 付属品 | セミ・ハードケース |
Takamine TLD40S

TLD40Sは、630mmスケールを採用したコンパクトな400シリーズのエレアコです。
ボディが体にフィットしやすく、取り回しのよさを重視する方や、小柄な方にも扱いやすいサイズ感です。
トップにはシダー単板、サイドとバックにはサペリ単板を採用。シダーらしい温かみのある音色と、サペリのまとまりのある響きを組み合わせています。
オール単板仕様で、木材本来の響きを楽しみやすいことも特徴です。
サテン・ヴィンテージ・サンバーストの塗装は、木材の表情を生かしながら落ち着いた雰囲気を演出。エンドピン一体型のTLDプリアンプや、ソリッドヘッドによるメンテナンス性への配慮もポイントです。
ボディサイズ、音色、演奏時の扱いやすさをバランスよく求める方におすすめしたいモデルです。
| メーカー | Takamine |
|---|---|
| 型名 | TLD40S |
| カラー | SVS |
| 販売価格 | ¥172,700(税込) |
| JAN | 4582270005122 |
| オンラインストア | 商品ページを見る |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カラー | SVS(サテン・ヴィンテージ・サンバースト) |
| トップ | シダー単板 |
| サイド | サペリ単板 |
| バック | サペリ単板 |
| ネック | マホガニー |
| 指板 | ローズウッド |
| スケール | 630mm |
| ナット幅 | 42.5mm |
| プリアンプ | TLD-2 |
| ピックアップ | パラスティック・ピックアップ |
| ポジションマーク | ダイヤモンド(5フレット〜) |
| 付属品 | セミ・ハードケース |
Takamine PTU70CS

PTU70CSは、500シリーズよりひと回りコンパクトなボディサイズを採用したエレアコです。
スプルース単板のトップとメイプルのサイド&バックによって、音の立ち上がりや粒立ちを感じやすいサウンドに仕上げています。
ボディカラーには、特注仕様のブルー・マジェスティック・サンバーストを採用。メイプルの杢目と組み合わせることで、光の当たり方によって表情が変わります。
パールのピックガードや糸巻、ダイヤモンドのポジションマークなど、ステージ上で映える装飾も特徴です。
プリアンプにはCT-48Ⅱ(PTU)を搭載。操作が分かりやすく、音量や音色を調整しながらさまざまな演奏環境に対応できます。
ボディサイズの扱いやすさと、メイプルらしい明瞭な音色を求める方に向いたモデルです。
| メーカー | Takamine |
|---|---|
| 型名 | PTU70CS |
| カラー | BMS |
| 販売価格 | ¥180,400(税込) |
| JAN | 4582270005085 |
| オンラインストア | 商品ページを見る |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カラー | BMS(ブルー・マジェスティック・サンバースト) |
| トップ | スプルース単板 |
| サイド | メイプル合板 |
| バック | メイプル単板 |
| ネック | マホガニー |
| 指板 | ローズウッド |
| スケール | 644mm |
| ナット幅 | 42.5mm |
| プリアンプ | CT-48Ⅱ(PTU) |
| ピックアップ | パラスティック・ピックアップ |
| ポジションマーク | ダイヤモンド(5フレット〜) |
| 付属品 | セミ・ハードケース |
Takamine PTU80CS

PTU80CSは、630mmスケールとシダー単板のトップを採用したエレアコです。
シダーらしい温かみのある音色と、サテン仕上げによる落ち着いたルックスが特徴です。ピックの強さや指先のタッチに対して柔らかく反応しやすく、弾き語りやフィンガースタイルなど、細かなニュアンスを生かした演奏にも向いています。
サイドにはサペリ合板、バックにはサペリ単板を採用。ボディ全体の響きをまとめながら、音に適度な厚みを加えています。
サテン・ハニー・サンバーストのカラー、DOT IN DOTのポジションマーク、J-Cタイプの赤茶ピックガードなど、落ち着いた中にも個性を感じられるデザインです。
プリアンプにはCT-48Ⅱ(PTU)を搭載しており、ライブやアンプを使用した演奏にも対応します。
温かみのある音色と、長時間弾き続けやすい扱いやすさを重視する方におすすめしたいモデルです。
| メーカー | Takamine |
|---|---|
| 型名 | PTU80CS |
| カラー | SHS |
| 販売価格 | ¥168,300(税込) |
| JAN | 4582270005092 |
| オンラインストア | 商品ページを見る |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カラー | SHS(サテン・ハニー・サンバースト) |
| トップ | シダー単板 |
| サイド | サペリ合板 |
| バック | サペリ単板 |
| ネック | マホガニー |
| 指板 | ローズウッド |
| スケール | 630mm |
| ナット幅 | 42.5mm |
| プリアンプ | CT-48Ⅱ(PTU) |
| ピックアップ | パラスティック・ピックアップ |
| ポジションマーク | DOT IN DOT |
| 付属品 | セミ・ハードケース |
まとめ――木材と技術、人の手が音をつないでいく

今回の取材を通じて感じたのは、タカミネのエレアコが、ピックアップやプリアンプだけで成り立っているわけではないということです。
木材を安定させ、表板や裏板を加工し、ブレーシングやボディを組み立て、塗装や仕上げを行う。その一つひとつの工程があるからこそ、アンプを通したときにも、タカミネらしい明瞭な音が生まれます。
機械による精密な加工と、木材の状態を見極める職人の判断。その両方が組み合わさることで、安定した品質と楽器としての個性が形づくられていました。
DMP50Sには、タカミネが長年培ってきたエレアコの技術と、島村楽器ならではのデュアルピックアップ仕様が詰め込まれています。
TSP10NCS、TSP10CS、TLD40S、PTU70CS、PTU80CSには、それぞれ異なるボディサイズ、木材、カラー、プリアンプが組み合わされ、演奏スタイルに合わせた選択肢が用意されています。
スペックだけでは分からない音の立ち上がりやネックの感触、弾いたときの反応は、実際に手に取ることで感じられる部分です。
タカミネのギターに興味をお持ちの方は、ぜひ島村楽器の店頭でお試しください。
タカミネの工場で働く皆様、今回の取材にご協力いただき、ありがとうございました。
島村楽器アコースティックギター・バイヤー、古川でした。
銘器探訪の管理人 古川 惠亮プロフィール

京都府出身。大阪での歌い手としての活動を経て、「音楽の楽しさを届ける側になりたい」との思いから、2004年に島村楽器へ入社。
ギターへの深い愛情と幅広い知識を武器に、アコースティックギターの販売で10年連続トップセールスを達成。
現在はバイヤーとして、米国のMartin社での買い付けをはじめ、Furch、K.Yairi、Takamineなどのブランド、ならびに国内外のルシアーと共に、数々のカスタムモデルの企画・仕様策定・デザインを手がける。
プライベートでは3児の父として、家族との時間を大切にしている。
目下の悩みは、子どもとのゲーム対戦でなかなか勝てないこと。