皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。
先日の特集記事でご紹介した1961 ES-335 Reissue Pelham Blue Light Aged “Double Stinger to Match Body”もそうですが、ナッシュヴィルのギブソンを訪問するとたくさんの素敵なギターに出会います。
それこそ、仕事であることを忘れ夢中になって
毎回、島村楽器のバイヤーとしての自覚を持って品定めをするのですが、今回は現地で一目惚れしたスペシャルなギターを皆様にご紹介したいと思います。月並みな表現ですが、ルックス、サウンドともに申し分のない魅力的な一本です。
Gibson Custom Shop 1957 Les Paul Special Single Cut Ebony Murphy Lab Ultra Heavy Aged


こちらはギブソン・カスタムショップが展開するリミテッド・モデル”Greatest Hits Volume II”の1957 レスポール・スペシャル・リイシューで、通常ラインナップには無いエボニー(ブラック)カラーを採用しています。
シングル・カッタウェイは現地でこの個体しか見かけていませんので、恐らく日本国内にはこの1本しか流通していないと思います。
1950年代のレスポール・スペシャルでブラック・フィニッシュの個体は見たことはありませんが、レスポール・スタンダードやESではごく稀に存在するカラーですので、「50年代のスペシャル(シングルカッタウェイ)で存在していたとしても不思議ではない」と思わせる通好みな仕様です。
仕上げは長年のステージによるダメージを再現したマーフィー・ラボのウルトラ・ヘヴィ・エイジドで、最もエイジング・レベルの高い仕上げとなっています。こちらも現在(2026年10月時点)1957 レスポール・スペシャル・リイシューには用意されていないものとなります。

通常のレスポール・スペシャルは3オン・ア・プレート(3パー・プレート)のクルーソン・チューナーが搭載されていますが、このモデルにはグローバー・ロトマチック(ミルク・ボトル / 102)チューナーが搭載されています。これにより、通常のモデルよりもやや押し出しが強く伸びのあるサウンドになっています。

ヘッドストックのGibsonロゴ。部分的に白く見えるのはトップコートのラッカーが剥離しているためで、ヴィンテージに見られる経年変化を意図的に再現したものになります。
Gibsonロゴは白蝶貝で作られており、ヘッドストックの表面はホリーウッド(ひいらぎ)、ロゴと木の隙間にはパテが使用されています。
素材が異なれば温度や湿度による収縮の仕方や量も異なるので、素材の境界線になるロゴのアウトラインにはウェザーチェックが入ります。それに加え、白蝶貝は木材よりもニトロセルロース・ラッカーが食いつきづらいため、結果的にロゴの上のラッカーが剥がれるというわけです。

ヘッドストック中央の「Les Paul SPECIAL」の文字はトップコートの上からシルクスクリーンで印字されるため、時間の経過と使用にともない薄れていきます。今回のプロダクトは最もエイジング・レベルの高いウルトラ・ヘヴィ・エイジドですので、ほとんど消えてしまった様子が再現されています。
画像では分かりませんが、目を凝らして現物を見ると文字が入っていた跡を確認することができます。

トラスロッドカバーの外周(白い部分)も変色や汚れが再現されています。ヘッドストック外周の傷、塗装の剥がれ方も自然で良い感じです。

ライムドマホガニー(TVイエロー)では黒いインクでスタンプされるシリアル・ナンバーですが、エボニー・カラーではレスポール・カスタムと同様にイエローのインクが使用されます。
シリアルナンバーは1950年代と同じ5桁(~6桁)の表記で、一番左の「7」が1957年モデルの7、少しスペースを空けて右隣りの「6」が製造年である2026年の6を表しています。

ローズウッドの指板にはレスポール・スタンダードと同様にバインディングが施されていますが、ポジション・マーカーはスタンダードのトラペゾイド・インレイに対しスペシャルはドット・インレイが採用されています。

サイド・ポジション・マーカーもオリジナルに準じてべっ甲柄が採用されています。が、この個体は色味が濃いため画像だとブラックのドットに見えてしまいますね。

マーフィー・ラボ・コレクションではヴィンテージギターの滑らかな握り心地を再現するロールド・バインディングが採用されています。12フレットのサイド・ポジション・マーカーの上半分付近を境に、バインディングの地の色が出ているのがお分かりいただけますでしょうか。


長年の演奏による塗装の剥がれ(消失)が再現されています。露出したマホガニーの色、フィニッシュの残り方など非常にリアルです。塗装の残る部分と木部が露出した部分の段差はほとんどありませんので、見た目以上にスムーズに演奏できると思います。

ネック・ジョイント付近、1弦側ボディの角とヒールのエッジの塗装が掌で擦れてマホガニーが露出している様子が再現されています。最も当たる部分のマホガニーが濃く変色しています。


ピックアップはオリジナルに準じてシングルコイル構造のP-90 Soapbarが搭載されています。
ハムバッキング・ピックアップに比べ非力なサウンドを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、ほぼ同じ巻き数(約10,000ターン)、直流抵抗値(平均7.25kオームから8.25kオーム程)ですので、特別非力に感じる事は無いと思います。ハムバッキング並みの出力と、オリジナルさながらの明瞭でキレとコシのあるサウンドが堪能できます。

ラップアラウンド・ブリッジ(スタッド・バー・ブリッジ・テイルピース)は軽量なアルミ合金製で、ボディに固定するスタッドはスティール製となります。弦を留めつつ乗せるこのパーツのサウンドに与える影響は大きく、ラップアラウンド・ブリッジ特有のサウンドは多くのギタリストに支持されています。

各弦ごとにオクターブ調整は行えませんが、側面に見えますイモネジでラップアラウンド・ブリッジを前後させ、おおよその調整を行います。他社からTune-o-matic並みの調整ができるバダス・スタイルのブリッジも発売されていますが、個人的にはオリジナルのルーズな響きに旨味や魅力を感じます。

現在のリイシューにはトゥルーヒストリック・パーツが搭載されています。コントロールノブは年代に準じたトップ・ハット型ノブで、窪みのある上面やスカートのラインなど、当時のノブの形状を丁寧に再現しています。目盛りの色合いも自然で、ウェザーチェックの入ったボディにとても良く似合っています。

ウルトラ・ヘヴィ・エイジド仕様のため、エルボー部も大きくマホガニーが露出しています。前出のネック・ジョイント付近同様、最も腕が当たるであろう部分は色味が濃く仕上げられています。長年衣類や肌が擦れてきた木部の滑らかさ、それに伴う光沢、色味などリアルに再現されています。

周知の通り、マーフィー・ラボでは当時のニトロセルロースラッカーを科学的に解析し、新たに開発した専用のラッカーを使用しています。ヴィンテージのような硬い塗料のため、ウェザーチェックのみならず、打ち傷などによるトップコートの割れ方もさながらヴィンテージのようです。

ピッキングによる6弦側ボディトップの傷の再現。最も繰り返し当たったであろう部分は木部が露出し、頻度が低い部分は傷がトップコートに留まっています。


ボディバックを正面から撮影してみました。好みにはなりますが、エボニー・カラーのレスポール・スペシャル・ヘヴィ・エイジドとして理想的な仕上がりです。
傷一つ一つの完成度が高く、理にかなったディスドレッシング(長年弾かれてきたことで摩耗した状態、使用感を再現する作業)が施されているため、引きで見ても不自然さを感じません。
表だけでなく、後ろ姿も自慢したくなるギターです。

コントロール・キャビティのエッジの様子。ボディとキャビティカバーの表面に高低差があるために生じた傷を再現しています。

コントロール横、ボディサイドも素晴らしい出来です。ジャック付近は挿したケーブルのプラグが突起物となって対象物がぶつかるのを防ぐため傷が少ないですが、その数cm横にはしっかりと傷が入ります。


ハードケースはGeib社(楽器ケース製造メーカー)がギブソンに提供していたChallenge Case(アリゲーター・ケース)を意識したものが付属します。当時のChallenge Caseはチップボード(紙)で作られたリーズナブルなもので、スペシャルやジュニア、後年にはメロディメーカーなどのエントリーモデルに良く使用されていました。

もちろん、現在のケースは木製の本体に十分な厚みのクッションが用意されていますので、保護性や耐久性についてはばっちりです。


さて、Gibson Custom Shop 1957 Les Paul Special Single Cut Ebonyをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
ナッシュヴィルでのハンドピック(完成品の買い付け)は何日かに分けて行われていますが、今回ご紹介したレスポール・スペシャルはこちらの「ギブソンの海」の中からピックアップしました。

用意されたギターはどれも素敵なものばかりでしたが、特に目に留まったのが今回のレスポール・スペシャルでした。2021年03月10日にリリースが発表されたマーフィー・ラボ・コレクションですが、着実にアルティザンの技術レベルは上がっている印象で、その見事な出来栄えに一目惚れしました。
塗膜が硬く木部が露出している分(=塗装している部分が少ない分)本体が良く振動するのですが、こちらの個体で一番のポイントになっているのがグローバー・ロトマチック・チューナーを採用していること。通常のプラスティック・ボタンのクルーソン・チューナーよりも重くヘッドの振動を抑えますので、大味過ぎず、遠達性も確保した魅力的なサウンドに仕上がっています。ぜひとも一人でも多くの方に手に取ってお試し頂きたい1本です。
今回の記事に登場しましたGibson Custom Shop 1957 Les Paul Special Single Cut Ebony Murphy Lab Ultra Heavy Agedの詳細につきましては、この下にご用意させて頂きました商品ページをご覧ください。
お近くの店舗での試奏も承っておりますので、ご希望の方は展示店の島村楽器 新宿PePe店(担当:野原)までお気軽にご連絡ください。それではこの辺で。


