別室 野原のギター部屋 Vol.64 “ナッシュヴィルの楽器店を巡る Part2”

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別室 野原のギター部屋 Vol.64 “ナッシュヴィルの楽器店を巡る Part2”

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Music City Vintage Guitars

グルーン・ギターズ及びカーター・ヴィンテージ・ギターズで20年以上に渡り真贋鑑定、査定、買取業務を専門としてきたボウ・ハドソン氏が独立し、2023年に開業したミュージック・シティ・ヴィンテージ・ギターズ。ヴィンテージのみならず近年のカスタムショップ製品なども品揃えしています。

雰囲気の良いギターに囲まれるように、ショップの中央には大きなソファが置かれています。ゆったりと腰をかけながらのギター選び、最高ですよね。確かこの前の買い付け時にルシアー駒木がこのソファに腰掛けて記念撮影していたような。

そんな素敵なソファーの横には古いFenderアンプが8台も並んでいます。今回は買い付けを行わないため中の状態まではチェックしていませんが、状態も悪くなさそうです。「この台数は無理だとしても、1959年あたりのTweed Deluxe 5E3が自分の店に置いてあったら素敵だよなぁ」などと妄想していましたが、コンディションの維持などを考えると少し考えてしまいます。

アンプの前に並んだギターも負けていません。特に左の2本、オリジナル・ペルハムブルーのES-330とオリジナル・ブラックのES-335は非常にレアです。今でこそ様々な色のギターが店頭に並びますが、1950年代、1960年代のカスタムカラーはとても希少で、特にGibsonはFenderに比べても数が少ないです。

プライスタグを見ていないので写真からの判断になりますが、ペルハムブルーのES-330はナット幅が1964年(1965年途中)までの広いタイプで、トラスロッドカバーがワイドベベル(外周の白い部分が広い形状)ではないもの(1965年以降)が取り付けられていることから1965年製と推測されます。

ブラックのES-335はヘッドストック中央のクラウン・インレイが2弦、4弦の位置よりも下にありますが、ピックガードの面取りが広いものが取り付けられていることと、まだfホールが大きいサイズになっていないことから1966~1967年製だと思います。もしかしたらBigsbyはファクトリー・オリジナルではないかもしれませんが、魅力的な見た目をしています。

Fenderのカスタムカラーはオリジナルかどうかの判断が非常に難しく、バラして時間をかけて検証してみないことには確実なことは言えません。が、良い雰囲気ですね。恐らく左の白いストラトキャスターは(1965~)1966年辺りに作られたもので、ボディはリフィニッシュではないかと思います。

Gibsonのエレクトリックを見てみましょう。チェリーのレスポールは2013年に100本製作されたGibson Custom Shop 1957 Les Paul Harrison-Clapton “Lucy”。モデル名の通り、かつてジョージ・ハリスンとエリック・クラプトン(敬称略)が所有した1957年製のレスポール”Lucy”のレプリカです。”Lucy”について語ると大変な文字数になってしまうため割愛しますが、やはり一番に思い浮かぶのはRainbow ConcertとWhile My Guitar Gently Weepsのイメージでしょうか。

写真のES-335はナローネックに変更される前の仕様(1964スペック)の1965年製ですが、ある箇所を見て違和感を覚えました。それが理由で$12,500と相場よりもかなり安い値付けがされているのですが、お分かりになりますでしょうか。

正解はネック(指板)のバインディング。オリジナルよりも厚みがあり新しく見えます。

お聞きしてみると1980年代にファクトリーでネックリセット(リネック)された個体だそうで、裏面はオーバースプレーされていました。ネックリセット前後で音は変わりますが、リセット後の音が気に入れば$12,500はありではないでしょうか。

一見すると新しいレスポールに見えますが、ヒストリック・リイシューでもレプリカでもない独特な雰囲気を感じます。

気になってタグを見てみたら、やはり。1956年製のコンバージョンでした。

1956年のレスポール・モデル(スタンダード)はP-90ピックアップ+ABR-1ブリッジ搭載のゴールドトップ(もしくはオール・ゴールド)で、ゴールドの下のメイプル材はセンターから外れた位置で貼り合わされていることがほとんどです。こちらのメイプルはセンターの位置で左右のメイプルが貼り合わされているので、リトップ(=ボディトップ材を新しいメイプルに貼り直す)が施された個体となります。

こちらは1953年製オリジナルフィニッシュのFender Esquire。オリジナルのブリッジ・ピックアップはリンディ・フレーリン氏によって巻き直され、オリジナルのネックはバフ掛けされて光沢が出された状態だそうです。ケースは1950年代後半のフェンダー社製ツイードケース(センターポケット)が付属しています。

オール・オリジナル(フル・オリジナル)の個体に比べれば市場価値は劣りますが、オリジナルに敬意を払った手の加え方から前オーナーの人柄が伺えます。「ヴィンテージは是が非でもオリジナルを尊重しなくてはならない」というわけではありませんが、愛情が注がれてきたであろう楽器は見ていて幸せな気持ちになります。

Fanny’s House of Music

イースト・ナッシュビルのファイブ・ポイント地区、サウス11番街とホリー通りの角にある小さな楽器店”ファニーズ・ハウス・オブ・ミュージック”。2009年にパメラ・コール氏とリー・メイプルズ氏が創業したショップで、特に女性、お子様、そしてビギナーの方々が快適に過ごせる楽器店をテーマにされているそうです。

白い窓枠がアクセントになったブルーグレーの外壁にグレーの屋根、椅子の置かれたウッドデッキと青い芝、看板に使われた差し色のマゼンタ、女性オーナーならではのセンスでしょうか、とにかく素敵です。

幅広い年代のエレクトリックとアコースティックが品揃えされていますが、エレクトリックはレイアウト変更中だったためアコースティックを中心に見ていきます。

古いGibsonのマンドリンやバンジョーなど、カントリーミュージックの中心地として有名なナッシュヴィルらしい楽器が並びます。飾られた写真やポスターもお店のコンセプトに合った雰囲気の良い物ばかり。

楽器店として作られた内装ではないので、音楽好きのお宅にお邪魔しているような気分になります。日本で例えるならば、古民家で琴や大正琴、三味線などを並べて商売している感じでしょうか。

年代物のMartinとGibsonのフラットトップが並べられた一角。年季の入ったルックスにそそられ一番手前の1926年製のMartin 0-18を鳴らしてみましたが、12フレットジョイントであることを差し引いても鳴りが良く、とても良い音色でした。状態はブリッジのリプレイスとネックのリシェイプ(Vからフラット)が施されていました。

年代やモデルによっては大変な値段で取り引きされているヴィンテージMartinですが、0-18あたりは比較的お買い求めやすいのでおすすめです。

年季の入ったチェストを利用した弦(販売用)のレイアウト。チェスト自体がお店の雰囲気に合っているのもありますが、とても素敵なアイディアですよね。

Carter Vintage Guitars

2012年11月、ウォルター・カーター氏とクリスティ・カーター氏が設立したカーター・ヴィンテージ・ギターズ。2024年に現在の場所に移転したばかりなのでとても綺麗です。コアなギターファンであればご存じだと思いますが、ウォルター・カーター氏は『Gibson: 100 Years of an American Icon』、『Gruhn’s Guide to Vintage Guitars』、『The Guitar Collection』の著者としても有名です。

ソメラ・ロードにある「パセオ・サウス・ガルチ」内の歴史あるアンティークビルの最上階にカーター・ヴィンテージ・ギターズがあります。現在の場所では2024年3月1日から営業しており、移転する前は通りの向かい側で営業していました。ちょうど旧店舗が手狭に感じてきた時に現在のアンティークビルの再生の話があり、移転されたそうです。

新しい店舗は12,500平方フィートの広さに2,000本以上のギターを展示しており、グレッグ・エリス氏が率いる「カーター・ヴィンテージ・リペア」ショップを擁しています。以前よりも広くなった店舗スペースには、クリエイター向けの専用スペース「カーター・スタジオ」、ライブイベント用ステージ「Live from Carter’s」、プライベート・アポイントメント用の個室、オフィススペースが設けられています。

お店の入り口はこんな感じ。右側奥、階段状の屋根の下に「STRINGS」「Gibson」と黄色い字でペイントされています。これを見てニヤリとした方は相当なGibson通。

これは1930年代~1940年代のGibson Mona-Steel String Display Cabinet(販売弦の店頭用ディスプレイ)のデザインで、左右逆ですが実際のディスプレイ・キャビネットも階段状の形状となっています。さすがカーター・ヴィンテージ。

入り口を入って直ぐのスペースにはカーター・ヴィンテージのオリジナル・グッズが販売されています。アパレルをはじめ様々なグッズを展開していますのでお土産にもオススメです。

今回は訳あって店内の撮影ができなかったため、『ルシアー駒木のギターよもやま話 その138』から店内の画像を借りてきました。広々とした開放感のある店内、これだけの量のギターをゆったり見れるのもアメリカならではです。

掘り出し物でもあったのでしょうか。ルシアー駒木の視線の先が気になります。

The Gibson Garage

2021年6月9日にオープンしたギブソンの世界観が体験できる施設。ギブソン、エピフォンはもとより、クレイマーやメサ・ブギーなどギブソン・ブランズの各製品を試すことができたり、関連グッズやアクセサリー、アパレルなども購入できます。

既に各メディアでご覧になっている方も多いと思いますが、入り口を入るとギブソン・ガレージを象徴する大きなサインが出迎えてくれます。

奥に見えるのはコンベアベルトに並べられた約190本のギターで、ゆっくりとガレージを回っています。ファクトリーを見学すると分かるのですが、フィニッシュ行程を終えたギターはコンベアベルトに並べられ頭上高くを移動します。これにヒントを得たのがガレージのコンベアベルトで、大量の在庫を直ぐに見ることができます。

正面に見えるカスタムショップ製品や木材が展示されているカスタムショップ・ルームに入ってみましょう。

ネックレストが置かれた台の一部がショーケースになっており、マエストロ・ヴァイブローラ、ビグスビー、ABR-1ブリッジ、ピックアップ・マウントリング、クルーソン・チューナーなど、ギブソン・ファンにはお馴染みのハードウェアやプラスティック・パーツが綺麗に並んでいます。

上段の引き出しの中にはアニリンダイで着色されたネックのサンプルと、バーストカラーのサンプルが収納されています。

その下の引き出しには美しい杢の出たメイプル材とレスポール・シェイプの透明の板が収納されています。透明の板は完成時の仕上がりをイメージし、どの位置で木材を使用するか決めるためのもので、木材のふしやミネラル・デポジットをボディ外や、パーツ下などに逃せるかを確認しながら好みの表情を探します。

ということで、このカスタムショップ・ルームでは一般のお客様でも材を選んだり仕様を決め、自分だけのギターをオーダーすることができます。多くの著名アーティストが愛用する歴史あるブランドで、自分だけの一本を作るのは夢がありますね。

こちらにはアパレルやグッズが多数取り揃えられています。この中にはギブソンガレージでしか販売していない商品もあり、毎回何かしらお買い物をしています。ちなみに今回はウインドブレーカーを購入しました。

正面に見えるのはアコースティックルーム。Vol.34 “Gibson Brands Partner Experience in Nashville 2023 現地レポート(前編)”でご紹介した1907年製の貴重なハープ・ギターも展示されています。ウォルター・カーター氏の名著”Gibson Guitars 100 Years of an American Icon”の表紙になったあのギターです。

ガレージの中央に雰囲気の良いギターが3本展示されていました。こちらは2023年2月に正式にローンチした直販認定中古プログラム「Gibson Certified Vintage」の3本で、ギブソン社が自ら本物のヴィンテージ・ギターを鑑定し、販売しています。

ギブソン・ガレージでの受け取りか米国内への発送が基本となっているため私たちの利用は条件的に難しそうですが、老舗ブランドの取り組みとしてとても素敵です。

1962 Gibson ES-335TD
1960 Gibson ES-355TDSV
1969 Gibson Crest Gold

こちらはガレージ内にあるステージ。その時々で展示されている内容は変わるのですが、今回はGibson Custom Limited Edition Collectionが並べられていました。この記事が公開される頃には国内市場にも姿を現し始めているかもしれません。もちろん、島村楽器にも入荷する予定です。

どれも魅力的なモデルですが、特にこの2本に目を奪われました。

1964 SG Standard Korina Antique Natural Maestro Vibrola VOS

ボディとネックにコリーナ材を使用した1964 SG Standard Reissueです。

コリーナ(ホワイトリンバ)と言えばオリジナルのフライングVやエクスプローラー、コンソレット(1952~1957年/スティール・ギター)やスカイラーク(1957年~/ラップ・スティール)で使用されていた木材で、アタックの早さやキレの良さ、明るく広がりのある響き、解像度の高さ、適度な暴れ具合とバイト感など、一度鳴らすと忘れられない魅力があります。もともと単板のモデルで使用されていた木材ですので、SGとの相性も抜群です。

1959 ES-345 Varitone Bigsby Ebony Heavy Aged

2本目はエボニー(ブラック)カラーの1959 ES-345 Reissue。ちょうどAuthentic ’61 Skinny C-Shape(ネックグリップ)とショート・ピックガードで同じ仕様のES-345をM2Mで作ろうとしていました。

1950年代特有のやや細身のBigsby B-7トレモロユニット、テールピースのスタッドアンカーを隠すパールのインレイ、そして実際の1959年製ES-345にも存在するカスタムカラー(ブラック)とマーフィーラボのエイジング、とても胸が躍るパッケージです。

ちなみに、1959年のES-345はサンバースト446本、ブロンド32本、チェリー・レッド6本の出荷記録が残っているのですが、5本のファクトリー・ブラック・フィニッシュを確認した有識者の文献が存在します。その内の1本を写真付きの記事で見たことがありますが、ファクトリー・オーダー・ナンバー(FON)から初期の個体でした。

最後に、少し前のものですがGibson TVにThe Gibson Garageを紹介する映像がございましたので、ぜひご覧ください。

さて、2回に渡りナッシュヴィルの楽器店をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

現地に行くと伝わってくる音楽やギターが日常に溶け込んだ本国特有の楽器店の雰囲気。今でこそ皆様に海外出張の機会を与えていただいておりますが、楽器店に勤めるまでは書籍やインターネットで眺めるばかりで、その雰囲気を知ることはできませんでした。

この記事を通して、少しでも現地の楽器店の雰囲気を皆様にお伝えできたなら幸いです。それでは今回はこの辺で。

ギター部屋の管理人 野原 陽介プロフィール

学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。
のちにギタークラフトを学び、島村楽器に入社。
入社後は米国Gibson社、Fender社への買い付けなどを担当。
甘いもの好き。

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