【Paul Reed Smith】PRSギター徹底解剖シリーズ!Vol.3 ~Modern or Vintage~

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2021年06月14日

*PRSギターを徹底解剖!その魅力に迫ります! 店長の平林です。皆さま、いつも島村楽器 静岡パルコ店をご利用頂き、誠に有難うございます。 徹底した品質管理と新たなアイデア、芸術的なフィニッシュで現代のギターシーンを牽引するPaul Reed Smithギターを徹底解剖し、その魅力に迫る不定期連載のV […]

PRSギターを徹底解剖!その魅力に迫ります!

店長の平林です。皆さま、いつも島村楽器 静岡パルコ店をご利用頂き、誠に有難うございます。

徹底した品質管理と新たなアイデア、芸術的なフィニッシュで現代のギターシーンを牽引するPaul Reed Smithギターを徹底解剖し、その魅力に迫る不定期連載のVol.3です。Signature DealerとしてPRS製品を多数取り扱ってきたことと、自身でも長年PRSギターを使用してきた経験を通じ、皆さまと情報共有していきたいと思います。

PRSギター徹底解剖シリーズ!まとめサイト

The Rules Of Tone

2006年にPaul Reed Smithは“The Rules of Tone”と呼ばれる資料を書き出しました。 “The Rules Of Tone”とは、Paul Reed Smithがこれまでの経験から基づいたギター作りにおいての言わば秘伝書のようなものでポールのギター製作に対する哲学の塊です。ここには木材、木材の乾燥について、フレット、ナット、ピックアップ等ギターを構成するありとあらゆる部分への拘りやポール自身の考えが書かれております。これらはポールリードスミスギターを知っていただく上で非常に重要な事であると同時に、ギター作りの全容を明かすこととなります。

Rules of Toneに基づいてこれから少しずつポールリードスミスギターズを紐解いていきたいと思います。

シリーズ第3回目は、ヴィンテージPRSと呼ばれる1980年代~90年代前半に生産されたモデルの中から「Singature」シリーズにスポットライトを当て、2020年に発売された35周年アニバーサリーモデルとの比較を通じて、各々の違いを検証していきます。静岡パルコ店で同じVintage Yellowカラーの個体を入手出来た為、PRSファンの方々には既知の事項も多く含まれますが、その比較を楽しんで頂ければ幸いです。

PRS社の歴史とヴィンテージモデル

1985年がPRS社の創設元年で、メリーランド州アナポリス・バージニア・アベニュー・ファクトリーでその歴史がスタートします。1985年以前に生産されていたギターがプリファクトリー・モデル。1985年~1989年迄を80'sモデル、90年~96年のケント・アイランドへ移転する迄のモデルを含めて、一般的にはヴィンテージPRSと呼んでいます。(仕様が大きく変わる91年迄という方もいらっしゃいます。)

結論から申し上げると、ヴィンテージとモダン、どちらか一方が優れているという訳ではなく各々に良さがあり、ルックスやサウンド、プレイスタイル等に応じて、最終的には皆さんの好みに応じてセレクト頂くことがベストです。本記事はその参考になれば幸いです。

Signatureシリーズとは

今回、ご紹介するSignatureシリーズは、1986〜1990年前半までで1,000本のみ限定生産されたPRS初の「最高級ウッド」シリーズで、その後のARTISTシリーズ、Dragonシリーズ、現在のPrivate Stockへ繋がるベースとなった記念碑的モデルです。Custom(93年に22Fモデルが登場するまでは24Fモデルのみ)をベースにPaul Reed Smith自身が設計し、アーティスト・グレードのメイプル・トップボディ、バード・インレイを使用し、当時のPRSがハイエンドギター・マーケットの中でも突出し始めるきっかけとなったモデルです。

Custom24 35th Anniversary Modelとは

2020年にPRS Guitarsは35周年を迎え、その記念としてTCIのチューニングによるピックアップや、新しいニトロ・フィニッシュなど数々のアップデートを行った35th Anniversary Custom24をリリースしました。

それでは、2機種を比較しながら細部に迫っていきます。

Body Section

まず初めに、ボディトップのアーチ形状です。

左が35thモデル、右がSignatureです。

↑Signatureのボディトップは、ハンドカービングによるボディエッジ付近で跳ね上がる様な形状が特徴的です。

↑35thモデルです。95年にCNCルーターが導入されており、現在のボディトップの方が、なだらかにアーチが付けられていることがお分かり頂けます。

ホーンの形状もSingatureの方が丸みを帯びています。

35thモデルになると、よりシャープな印象です。

初期のハンドカービングデータをベースにして、CNCマシーンで製作される様になっていきます。

同じ様に見えるシェイプも、ブラッシュアップを続けながら、洗練されたデザインになっています。

ボディバックのコンターもSignatureは浅いです。

35thモデルのコンターは深くなっており、プレイヤーとギターとのフィット感が増しています。

Head Stock

次にヘッドです。

上が35thモデル、下がSignatureです。

ヘッドストックフェイスですが、SignatureシリーズにはPRS氏のハンドサインが入ります。

ヘッド裏は手書きのシリアルナンバーと、1,000本限定モデルの通し番号です。91年からはゴールドのペンで手書きされています。

35thアニバーサリーモデルには、1985年以前のプリファクトリースタイル・バードインレイを採用しています。

ヘッド裏のシリアルナンバーがゴールドペンで手書きなのは、現在も続くPRSのスタイルです。

85年~96年迄のペグは、ドイツのシャーラー製ウィングペグです。機能性を持たせながらバードに統一する辺りがトップブランドたる所以です。ヘヴィゲージが張れない等、幾つかの理由がありPhaseⅡ(Schaller)、PhaseⅢ Locking Tuner (Gotoh製)へモデルチェンジされます。

McCarty594を始めとして、2020年からはCustom24にも標準搭載された、TWEAKEDタイプのPHASE IIIチューナーを搭載しています。

PRSのペグに関する深堀は、連載のVol.1をご覧下さいませ。

Neck Heel

次はネックヒールの違いです。

Signatureのネックヒールは、スモールヒールと呼ばれる小さなヒールが特徴で、ハイポジションのアクセスが容易です。

95年から一回り大きいヒールに変更され、ポール本人がストロングなサウンドになったと語っています。

こういった新しいトーンを求めるテストが日々行われていることでPRSギターが進化し続け、30年も後発ながらGIBSON、FENDERと並び称されるブランドに成長しています。

Finger Board & Inlays

フィンガーボードを見てみましょう。

91年(Signature~ArtistⅠ)まではブラジリアンローズウッドモデルが使用されており、ヴィンテージPRSの人気を支える一因になっています。サウンドも硬質でタッチレスポンスが良いです。

現在は上質なイースト・インディアン・ローズウッドが使用されています。適度な硬さのマテリアルである為、個人的にはサウンドメイクがし易い印象です。

続いてはPRSの象徴とも言えるバードインレイです。

Signatureシリーズにはマザーオブパール(白蝶貝)が使用されており、埋め込み後の溝はブラックのエポキシ樹脂が充填されています。

35thモデルのマテリアルにはGreen Ripple Abaloneが使用されており、Old School Birdsタイプのインレイです。アバロンの輸出規制によって、年代やモデル毎にバードインレイには仕様が存在しています。

PRSのインレイタイプは以下を参照下さいませ。

Bridges

ブリッジです。

70年代末からブラス材から切削加工して成形されたブリッジが登場し、92年頃までジョン・マンズ・カンパニー社のブラスワンピース鋳造可能で成形されたブリッジが使用されています。サドルはニッケルポリッシュ仕上げです。

ブロックと一体型であることがお分かり頂けます。

ブロックの刻印からオリジナルパーツであることが確認出来ます。

35thモデルに使用されるPRS Patented Tremolo Gen IIIは、Excel Machine & Fabrication社製です。サドルの弦が触れる個所はメッキが剥がしてあり、ブラスと弦が接することで、弦振動を最大限に活かす構造になっています。サドルはニッケルサテン仕上げです。

2ピース構造で上部はメッキしていますがどちらもブラス材です。ブリッジ部分とブロック部を強固に固定しています。

Pickups&Aassembly

次はピックアップです。

Signatureは、1989年から搭載されたHFS(Hot Fat Scream) & Vintage Bassがマウントされています。セラミックマグネット(HFS)とアルニコマグネット(Vintage Bass)というキャラクターの異なるピックアップを組み合わせた、この仕様が好きな方も多いですね。

P-90や一部を除き、殆どが自社工場で生産されるPRSピックアップですが、その多くがマウントされるモデルに合わせて専用に開発され、ポッティング処理もファクトリー内で行っています。

↑35thモデルです。

前述のピックアップに対して、幅広いサウンドをメイクを可能にした85/15 TCIです。TCIによりシングルコイルのサウンドも劇的に向上しています。ボビン形状もハウリングに強い形状に変わっています。

続いて、コントロール関係です。

Signatureのコントロールは1Vol、ロータリーPUセレクター、Sweet Switchです。

91年までに採用されていたSweet Switch(プリセットトーン)はブラックボックスに入れられています。スイッチの切り替えでワウの半止めサウンドの様な、甘いサウンドが得られます。

初期PRSの特徴的な仕様ともいえるSweet-SWが、こちらの黒いボックスパーツです。

35thモデルは3-WayトグルSWと、2つのMiniSWです。各PUを独立してコイルタップ出来る為、8種の組み合わせを可能にしています。指板のアールと同じアーチ状になっていることと、TCIによりシングル時のサウンドが飛躍的に向上しました。

ピックアップはPRSの中で近年最も改良されたパーツです。PRSギター徹底解剖シリーズ!Vol.2では、PRS歴代ピックアップ仕様リストを公開していますので、是非ご覧下さいませ。

ピックアップキャビティには様々な情報が詰まっています。

フロントPUキャビティから正確なデイトが確認できますが、初期は手書きで入れられています。

現在はキャビティのサイドで確認することが出来ます。

Signature、35thモデル、どちらも所謂ディープジョイントを採用しています。ピックアップキャビティには、ボディサンディングやネックアングル加工担当者のイニシャルが入ります。

続いて、指板とネックの接地面です。

↑Signatureはエスカッションが乗る箇所に木部を残しています。

どちらも所謂スラブ貼りで、ネックとフィンガーボードの接着面が平面です。

ノブの落とし込み形状も深く変わっています。

↓2010年代からより深くなっていきます。

最後に、こちらのSignatureの付属品ですが、オリジナルケースだけでなく、前オーナーが一式揃った状態で大切に保管されていました。

出荷時のタグまであるのは珍しいですね。

如何でしたでしょうか。

それぞれに違いがあり、皆さまの好みに合わせてセレクト頂く参考になれば幸いです。

今後も、PRSファンの皆様と様々な情報が共有の場として、不定期更新していきます。

島村楽器静岡パルコ店は国内に30数店舗程しかない、Paul Reed Smith Guitarsの日本国内Signature Dealer認定店でございます。

知識豊富な専任スタッフが国内外でオーダー、買い付けを行ったモデルを中心に、Private Stock,Csutom,McCarty,Singlecut,CE,S2,SEシリーズを豊富に品揃えしています。お客様のお好みに合わせたギター選びのお手伝いをさせて頂きますので、お気軽にご相談下さいませ。

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