【延期のお知らせ】【ピアノフェスタ2020in大阪】~現役藝大生に訊く~ピアノレッスンのヒント 出演ピアニスト佐々木隆介さんインタビュー

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2020年03月26日

===z=== *ピアノを習っている方はもちろん、お子様がピアノをされている親御様も必見! 当社のお客様は「ピアノを始める方」「自身やご家族がピアノを習っている方」などピアノに向き合っている方が非常に多いのですが、そういったお客様にとって東京藝大に通っている佐々木さんの経験やお話は一例として参考にな […]

ピアノフェスタ 佐々木隆介インタビュー

ピアノを習っている方はもちろん、お子様がピアノをされている親御様も必見!

当社のお客様は「ピアノを始める方」「自身やご家族がピアノを習っている方」などピアノに向き合っている方が非常に多いのですが、そういったお客様にとって東京藝大に通っている佐々木さんの経験やお話は一例として参考になるのではないかと思い、こういった機会を設けさせていただきました。

Index

「ホロヴィッツみたいになりたい!」

ピアノフェスタ2020in大阪

※インタビューに応じて下さった東京藝術大学4回生の佐々木隆介さん

-まず最初にですが、ピアノを始めたのは何歳からですか?

佐々木 隆介(以下佐々木) 結構「2~3歳から習ってるんでしょ?」と言われる事が多いのですが、僕は遅くて小学校1年生の誕生日前後なので・・・6~7歳からです。特に音楽一家でも、親がピアノ教師というわけでもなく、たまたま近所に従兄弟が習っている教室が有って、遊びに行ったら楽しそうだったので始めました。

-小学校からとは、意外ですね!と言う事は、そこまで「絶対にピアニストになりたい!」と思って始めたのではないという事ですか?

佐々木 そうですね、本当に趣味と言うか習い事の一つとして始めました。同時にそろばんも習っていたのですが、そっちの方がよほど没頭していました(笑)

-どちらも指先は使いますけどね(笑) そんな気軽な気持ちで初めて今は東京藝大に通っているわけですが、どこにターニングポイントが有ったのですか?

佐々木 きっかけは2つ有って、1つは教室の発表会に出た時に「人前で弾くって楽しい」と思った事です。もう1つがホロヴィッツ(*1)との出会いです。小学校3年生の時にモーツァルトのピアノソナタKV.330を弾く事になって、参考にしようと偶然ホロヴィッツの演奏を聴きました。こんなに表現豊かな「ザ・ピアニスト」が居るのか!と衝撃を受けて、子供ごころながらに「ホロヴィッツみたいになりたい!」と思ったのですが、その気持ちはずっと持っていて、結果的にピアニストを志すきっかけになりました。

-小学生でホロヴィッツですか・・・! 先ほど発表会の話が有りましたが、小さい頃から人前に出る事が好きな性格だったのですか?

佐々木 人前に出ると言うよりは、表現をする事が好きだったと思います。例えば絵本を読み聞かせして貰ったりする事が有ると思いますが、僕は自分で出てくるキャラクターに成りきって読むのが好きでした。

-なるほど、表現をするのが好きという事にピアノという道具が加わって、そこにホロヴィッツとの出会いが有って明確な目標になったのですね。東京藝大を目指し始めたのはいつ頃からですか?

佐々木 小学校ながらにインターネットで色々と調べている中で東京藝大の存在は知っていて、割と同じ頃から意識していたと言うか、目指していたと思います。なのでピアノを始めるのは遅かったのですが、ピアニストの道を志すのと、音大への進学を決めたのは早かったと思います。

-そこから今までの間に他の選択肢は無かったのですか?

佐々木 まぁ、紆余曲折有りましたが・・・例えば練習がうまく行かない時、反抗期の時期などに「もうやってられるか」と思った事は有ります。ただ、何故かは分からないのですがピアノは辞めなかったんです。

「テクニックはその都度覚えたら良い、それよりも今弾きたい曲を弾こう」

取材場所:島村楽器グランフロント大阪店

※取材場所:島村楽器グランフロント大阪店

-ピアノを始めてからのレッスンについて、お伺いしたいと思います。始めたのは遅かったという事ですが、最初はどの様な教本からレッスンを始めましたか?

佐々木 バイエルではない導入の本から入って、小学校2年生の終わり頃にはツェルニー・インベンションに進みました。

-すごく早いペースですね・・・しかも、いきなりツェルニーとバッハに入ったのですね。

佐々木 ただ全て満遍なく弾くのではなくで、1曲に時間を掛けて仕上げてから少し飛ばして次の曲へ・・・といった感じでした。先生がその様に指導して下さったのですが、好きな曲や興味の有る曲を中心に弾いていました。先生としては「テクニックはその都度覚えたら良い、それよりも今弾きたい曲を弾こう」というスタンスでした。

-そのまま好きな曲を弾きたい様に弾き続けて受験に向かっていくのですか?

佐々木 そうですね、高校受験(大阪府立夕陽丘高等学校)の前は、課題曲が有ったのでその曲もやりつつですが、基本的に好きな曲を弾いていました。ただ高校2年頃からはさすがにテクニック的な練習の必要性を感じたので、例えばショパンのエチュードで苦手な曲を弾いたりしていました。

-とは言え、レッスンの中心に好きな曲を据えていた事が結果的に良かったという事ですね。

佐々木 そうですね、さすがに自由過ぎたので今になって「あれをやっておけば良かった」と思う事はたまにありますが(笑)、ピアノを嫌いにならなかった事、ずっと好きで楽しめた事はとても良かったと思いますし、そういう指導をして下さった先生方にも感謝しています。

「朝はどういう香りがして、どんな景色で、どんな気持ちか考えながら弾いてごらん?」

※佐々木隆介さん 演奏の様子

-親御さんとの関わりについてお伺いしたいと思います。親御さんは佐々木さんのピアノのレッスンに対して、どの様に関わっていましたか?

佐々木 例えば「一緒に頑張って努力して受験を乗り越えました」の様な答えが出来ると良いのですが、基本的にほったらかしでした(笑)

-(笑) じゃぁ「練習しなさい!」とか言われた事無いんですか?

佐々木 いや、さすがに全く弾いてなかったら「ちょっとは弾いた方が良いんじゃない?」と言われたりはしました。ただ「何時から何時まではピアノの時間!」の様な事は無かったです。親の関りと言うと・・・まだピアノを始めたばかりの頃に「朝のうた」という曲を弾いたのですが、父が「朝はどういう香りがして、どんな景色で、どんな気持ちか考えながら弾いてごらん?」と言ってくれた事が印象に残っています。あと、たまに「面白いかどうか聴いてよ」と言って聴いて貰っていました。曲の出来栄えとかではなくて、聴いていて面白いかどうかという感想を言ってもらっていました。

-「面白くなかった」と言われたりもしたんですか?

佐々木 そうですね、「全然集中してへんやん!」とか「ノッて無いで」とか言われた事も有りますし、逆に「今のは良かったんちゃう?」と言って貰ったり。言われた事を守って弾いているか?という点に関してはノンタッチでしたね。さすがに藝大を受験する時は母が心配してくれて介入して来ましたが・・・基本的にはのびのびとさせて貰えて、個人的にはすごく嬉しい関わり方でした。

「自分の求めている練習に100%応えてくれるピアノ」

※佐々木さんが使用していたKAWAI RX-1。当社で整備の後、奈良県に有るイギリス料理店で今日もその音色を響かせている


-楽器についてお伺いしたいと思います。最初に練習で使っていた楽器はどの様な物でしたか?

佐々木 そこまでちゃんとやるつもりでは無かったので、最初は家に有ったカシオのキーボードを弾いていました。そこからピアノを習い始めてヤマハの電子ピアノを買って貰いました。それが小学校3年生の頃に調子が悪くなってしまって、カワイのお店にピアノを見に行ったんです。そこにカワイの小さいグランドピアノ(KAWAI RX-1)が展示されていて、「絶対にこれにする!」と夜まで粘って(笑) 両親は「アップライトで良いんじゃないの?」と言っていましたが、結局了承して貰ったと言うか根負けしたと言うか、そのピアノを自分の部屋に入れて貰って、高校2年生まで使っていました。

-その後高校2年生の時に、私と佐々木さんが出会うきっかけでも有った買い替え(YAMAHA S6Bへ)が有ったと思いますが、どういうきっかけだったのですか?

佐々木 高校3年の春に、今も藝大で教わっている先生のレッスンを受けた事が有って、「音色に対する関わり方」「良い響きの作り方と聴き方」とか、自分にとってカルチャーショックな事を教えていただいて。それが楽器の上でも自分のピアノ演奏においても大きなターニングポイントになりました。

-それは、どういう点がこれまでとは違う視点だったのですか?

佐々木 それまでの演奏は「自分がこう弾きたい」「自分が表現したい」という所で終わっていたのですが、「それが音になっているかどうか」まで責任を持って、弾きながら実行しなければならないというのが衝撃的でした。その為には、自分がパッションが高くなった時にのめり込みすぎるのではなく、冷静に判断する自分と判断した上で身体を動かす自分と、両方が一緒に居なければならないという指導でした。

-演奏する時に、主観だけでなく第三者的な視点を持つ必要が有ると。

佐々木 そうですね。最初に先生に言われたのが「熱狂的に音楽を演奏する自分」「それに100%従う手足」「大きいホールの一番良い席に座っているいやらしい毒舌の批評家としての自分」を全て持つという事でした。客観的に聴くという事だけでなくて、手足と自分の脳も切り分ける必要が有るという点も衝撃でした。

-それが大きなグランドピアノへの買い替えのきっかけになったのですか?

佐々木 そうです。先生に教わった事を実行する為に、家のピアノでは思った音が出せなくて、限界を感じてしまいました。その思いが生まれたら我慢出来なくなって、ピアノを探し始めました。

-因みに、当社に来ていただいたのはどんな経緯だったのですか?

佐々木 実は最初にネットで調べてこちらのお店(島村楽器 グランフロント大阪店)に来たのですが、ちょうどイベントの後だから明日たくさん入って来ますと言われて、別の楽器店に行きました。そこで「ヤマハのSシリーズが良いよ」という話をたくさんして貰って興味を持ったのですが、入荷の予定を聞いたら半年はかかると言われて。そして翌日にグランフロントに来たら店頭にS6Bが有って「有るやん!」って(笑)。弾いたらその時の自分の求めている練習に100%応えてくれるピアノだと感じて、すぐに決めました。

-そんなタイミングだったのですね!すごい縁ですね・・・。

「クラシック音楽が"オシャレな物"として認知される様にしたい」

ピアノフェスタ2020in大阪

-現在の事、これからの事についてお伺いしたいと思います。現在、藝大ではどんな事を学んでいますか?

佐々木 もちろん大学なので単位が有るのですが、レッスンが単位に組み込まれているのでほぼ半分くらいは演奏で単位が取れます。他は語学とか音楽史とかソルフェージュですが、やはり演奏に特化しているのですごく恵まれた環境だと思います。レッスンは、言ってしまうと普通のレッスンですが内容はすごくハイレベルだと思います。弾き方はもちろんですが、曲に対する解釈とか向き合い方とか・・・。

-来年の春で卒業となりますが、今後の目標や卒業後に考えている事はありますか?

佐々木 実は1年生の時に椎間板ヘルニアを発症してしまって、一時期ピアニストの道を諦めるか?と思った事が有りました。手術を経て今はだいぶ良くなったのですが、ピアノが弾けない時も有り自信を無くしてしまっていました。それでも辞めなかったのは、やっぱりピアノが好きだからというのが根っこにあったのですが、弾けない間にこの先の事も含めて色々と考えました。その中で「クラシック音楽業界自体が限界なんじゃないか?」という思いが大きくなりました。

-どういった点からそう感じましたか?

佐々木 例えばベートーヴェンを弾くなら楽譜を見て、その思想を追及して、音に変えて伝えるという、言わばメッセンジャーの様な役割を演奏家は担うと言われる事が多く有りますが、単純にそれで素晴らしい物だったら、もっとクラシックのコンサートを聴く人は増えているのではないか?という疑問を持ちました。何でクラシックは衰退しているのだろう?こんなにも素晴らしい曲がたくさんあって、素晴らしい演奏家もたくさん居るのにと思った時に、魅力的じゃない・面白くないのではないか?もっとエンターテイメント性を高めなければならないのではないか?という思いが生まれました。音楽を聴きたい人が求めているエンターテイメント性と、今のクラシック業界が打ち出している魅力にギャップが有るのではないかと思っています。

-なるほど・・・。

佐々木 例えばコンサートのチラシを1つとって見た時に、出身校や受賞歴・師事歴などが書いてありますが、昔の人はそんな事書いてたか?みんながホロヴィッツの経歴を見てコンサートに行っていたのか?と思って。そういった権威主義的なところが余計に受け入れ辛いところになるのではないかと思います。学問としての音楽と言う側面も有るのですが、数学などとは違って音楽はやはり人に聴いて貰っての物なので、聴いて貰えなかったらそもそも意味が無いと思っています。もちろん、オーバーアクションに手を上げたり脚を踏み鳴らしたりする様なエンターテイメント性を持っても、それでは意味が無いですが・・・。どうすれば良いのか・・・。

-どうすればもっとクラシック業界が良くなるのか、その為に自分に何が出来るのかを模索している状況という事ですね。

佐々木 そうです。クラシック音楽は素晴らしい物ですし、作曲家が残してくれた楽曲や旋律は素晴らしい物だと思いますので、その素晴らしさや魅力を多くの新しい人に伝える使命を演奏家は持っていると思います。もちろん僕自身の修練は死ぬまで必要で、それはやり通す覚悟でいますし、小さい頃からも夢だったホロヴィッツの様な「確立されたピアニストになる」という目標は持っています。ただそれに加えて、クラシックが街中でも聞かれるし、クラシック音楽がオシャレな物として認知されるし、例えばアイドルのライブを見に行く様にクラシックを聴く様な世の中、そんな世の中にする為にクラシック業界を変えられるような演奏家になりたいと思っています。

-当社も「音楽を楽しむ人を1人でも多く作る」という理念を持っていますので、当社とご縁の有る方がそういった目標を持っている事は本当に嬉しく思いますし、今後も応援して行きたいと思っています。本日はありがとうございました!

佐々木 ありがとうございました。

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佐々木隆介さんも出演されるピアノフェスタ2020in大阪のコンサート情報はこちらのページをご覧ください。


佐々木隆介さんプロフィール

ピアノフェスタ2020大阪コンサート

佐々木隆介(ささきりゅうすけ)

1998年生まれ、7歳よりピアノを始める。大阪府立夕陽丘高等学校を経て東京藝術大学音楽学部器楽科4年に在学中。これまでにピアノを井手 薫子、妹尾 恭子、延時 幸子、東 誠三の各氏に師事。Dag Achatz、Alexander Vershinin、Jean-Claude Pennetierの各氏によるマスタークラスを受ける。
第26回日本クラシック音楽コンクール 第4位、第10回エレーナ・リヒテル国際ピアノコンクール 第1位。第30回宝塚ベガコンクール入選。

聞き手のご紹介

島村楽器 ピアノフェスタ

太田将人(おおたまさひと)

島村楽器ピアノ事業部ピアノ営業推進課主任 東北・北陸・東海・関西・中国・四国・九州・沖縄エリア担当。
ピアノ教室の家に産まれ、幼い頃からピアノに囲まれて育つ。2008年島村楽器入社。
現在は各エリアの営業推進、法人営業をしつつ年間に300台以上のピアノを買い付けるバイヤー業務も担う。


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*1: ウラディミール・ホロヴィッツ。”鍵盤の魔術師”と呼ばれる伝説的なピアニスト。

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