こんにちは！ 弦楽器リペア担当の吉村と申します。
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弦楽器リペア便り Vol.12 弦楽器の長期保管方法

久しぶりに楽器を弾いてみよう思ってケースを開けたら、弓の毛が切れていたり、弦が切れていたりすることがあります。他にも、駒が倒れていた、魂柱が倒れていたという場合もあります。弦楽器に限らず、楽器は触らなければ状態が変わらない、というものではありません。使わない時でも最低限の環境を整えておかないと、残念ながら楽器のコンディションはだんだん悪くなっていきます。長年楽器をご自宅にしまってらっしゃる方は、一度ケースを開けて楽器の状態を確認してみてくださいね。

よくある症状

虫やカビの繁殖

• ケースはぼろぼろになっている
• 弓の毛が何本も切れている
• 楽器表面がざらざらしている（ホコリっぽい）]
  ]上記のような症状がみられる場合は、（例外もありますが）虫やカビが繁殖している可能性が高いです。顔の近くで使う楽器なので、衛生面から一度楽器のクリーニングをされることをお勧めします。また、弓毛が虫に喰われている場合は、できればケースを交換していただくことをお勧めいたします。虫やその卵が残っていたりすると、毛替えをしてもまたすぐに毛が喰われてしまいます。

音を出せない状態になっている

• 駒や魂柱が倒れている
• 駒がずれたり傾いたりしている（＝調弦すると駒が倒れてしまいそうな状態）
• 弦が切れたりペグが止まらなかったりして、調弦できない状態になっている]
  ]上記のような症状で問題になるのは、ずれたり外れたりしたパーツが変形してしまうことです。繊細に調整されているため、パーツがずれたり外れままになると、次に元の位置に戻したときにうまく機能してくれない可能性があります。駒はともかく魂柱がずれたり倒れたりしている場合はお客様自身では直せませんので、技術者のいる楽器店へ楽器をお持ちください。

しばらく楽器を弾かないときは…

• 湿度調整剤や防虫剤を入れたケースの中で保管する

• 人が生活しやすい環境に置いておく（直射日光を避け、湿度40～60度くらい）

↑ 季節で若干の違いはありますが、当店のリペアルーム内はこんな環境になっています。

• 1ヶ月に1度は楽器を外に出して、表面を軽く掃除したり、駒の傾きを直したりする。

使用期間の長い弦は、完全に調弦すると切れてしまう可能性があるので完全に音程を合わせる必要はありません。駒がしっかり固定できるくらい（表板に圧力がかかり、魂柱が倒れないくらい）にバランス良く弦が張れていればひとまず大丈夫です。

駒の傾き（角度）が修正されないまま時間が経つと、↑のように駒が曲がったまま固定され、変形してしまいます。元々薄い木の板なので、定期的に修正を行わないとすぐ曲がってしまうことが殆どです。駒のテールピース側が、表板に対して垂直に近くなるように、かつ駒足が浮かないように立ててください。

⇒ 駒の立ち方について詳しく知りたい方はこちら（⑤大体の位置に駒を立て、緩めに弦を張る 参照）

おわりに

いかがでしたか？　これを行ったからといって全ての状態変化を防止できるわけではないのですが、そのまま置いておくより駒・ペグの寿命が格段に長くなります。ずっとご自宅に楽器を眠らせている方は、ぜひ今回ご紹介した保管方法をお試しいただければと思います。

それでは、次回のリペア便りもお楽しみに♪
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