ローランド新製品「FANTOM」がアツい! 前編

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2019年09月23日

こんにちは。三宮店シンセサイザー担当のフクシマです。 本当は発売当日に書きたかった…! ということで、少し遅ればせながら9月5日発表、翌日発売となったローランドの本格派シンセサイザー「FANTOM」のファーストインプレッション記事でございます。 あまりにもFANTOMが魅力的なもので、書き進めていた […]

こんにちは。三宮店シンセサイザー担当のフクシマです。

本当は発売当日に書きたかった…! ということで、少し遅ればせながら9月5日発表、翌日発売となったローランドの本格派シンセサイザー「FANTOM」のファーストインプレッション記事でございます。

あまりにもFANTOMが魅力的なもので、書き進めていたら凄まじいボリュームになっていました… この記事は前編として、FANTOMの生い立ちとピアノ音色周りのことに絞ることにします!

FANTOMとは

このたびめでたく発売となった、ローランドのフラッグシップシンセサイザーの名前です。

実は2001年にもFANTOMという製品が発売されており、以降Fantom-S (2003年)、Fantom-X (2004年)、Fantom-G (2008年)とラインナップが続きました。ゼロ年代シンセの牽引ブランドだったわけです。

そして初代FANTOMは76鍵モデル一種のみ。その型番はFA-76。あれ? FAといえば…

新生FANTOMが出るまでフラッグシップだったFAシリーズと同じ型番ではありませんか! (写真はFA-07) なんて紛らわしい命名なのd…おっと。

ともあれ、このたびのFANTOMはフラッグシップの正当な血筋を引いた、由緒ある製品というわけです。

収録波形について

そのサウンドの大半を占めるPCM波形は、古くは1992年発売(!!)のJV-80/JV-880から、脈々と当時のフラッグシップ機に受け継がれ、継ぎ足されているもので構成されています。うなぎや焼鳥のタレみたいですね。フクシマこういうの大好きなのでひたすら調べました。

JVシリーズのその後から初代FANTOMまで

鍵盤ラインナップは

  • JV-80 → JV-1000 → XP-50 → XP-80/XP-60 → XP-30

音源モジュール(プロの現場に置いてある、でっかい箱みたいなやつ)のラインナップは

  • JV-880 → JV-1080 → JV-2080

と続きます。

JV-1080 (同期: XP-50)で一気に波形とプリセットが拡張され、JV-2080 (同期: XP-30) でも増加、2000年に入って処理エンジンを一新しさらに波形を増量した音源モジュールXV-5080とその弟分モデルXV-3080、そして88鍵ピアノタッチモデルXV-88が登場します。

このXV-88をベースに、収録波形はそのままプリセットを一新しつつ、キーボードを76鍵に替えたものが(概ね)初代FANTOMにあたります。

さすがにドラムの音は今の基準ではしょっぱいと判断されたのか、新生FANTOMではオミットされましたね。興味のある方は実機を中古で探しましょう!

ややマニア向け、拡張ボードのおはなし

JV時代はSR-JV80、XV/FANTOM時代はSRXという名前で、波形とプリセットを増やす拡張ボードが売られていました。INTEGRA-7ではSRX全タイトルが収録されたことが注目されましたね。これらのボードに入っているうち、少なくともいくつかの波形は名前を変えたりしつつ新生FANTOMにも収録されているようです。好きな人は好きな「Romantic Tp」もそのままの音が入っています(FANTOMでの波形名は「Tp Vib」、オリジナルのSR-JV80-18での波形名は「Tp Vib MariA」)

RD-2000キラー!? 鍵盤とピアノエンジンにも注目

FANTOM8には電子ピアノ各種やステージピアノRD-2000と同じ、PHA-50鍵盤が積まれています。この鍵盤は各鍵の側面が木製になっているおかげで指の汗や脂をよく吸うことが特徴です。全部樹脂でできている鍵盤ってベタベタしがちなところが少し惜しくて… とピアノタッチシンセを敬遠していた方も安心。弾き込むことでどんどん手になじむこと請け合いです!

なお、FANTOM6とFANTOM7では新開発(!)のおもり付き鍵盤が採用されているとのこと。弾き心地の良さはモチベーションの維持に繋がりますから、これは嬉しいですね。

さすがシンセサイズのローランド! ピアノをその発音機構から再現するV-Pianoテクノロジー

FANTOMが内部に持つ16パート(「ゾーン」と呼ばれています)のうち、1パートだけはローランドのステージピアノ(RDシリーズ)や電子ピアノ(DPシリーズ、HPシリーズ、LXシリーズなど)に脈々と受け継がれてきた「V-Pianoテクノロジー」による音源エンジンを呼び出すことができます。

往年のRolandフラグシップステージピアノV-Pianoでは「ハンマーが弦を叩き、音が屋根との隙間から出ていく」までの機構をすべて計算することで発音を実現していました。通常の電子ピアノやシンセサイザーが、サンプリング = 88すべての鍵について強弱を付けつつ録音するという「数の暴力」作戦を基本としていることから考えればかなり画期的です。たくさんダンパーペダルを使っても、同音で連打をしても、音切れの心配はほとんどありません。FANTOMではこのV-Pianoで培ったノウハウを一部含んだ「V-Pianoテクノロジー」音源を搭載しています。

設定画面です。Lid (屋根)やDamper Resonance (ダンパー踏み込み時に他の弦が共鳴する、その成分)といった項目が並んでいますね。

カスタマイズの幅も大きな魅力。通常ピアノは低音側ほどより低く、高音側ほどより高く、と大げさ目にチューニングするのですが(ストレッチチューニングと呼びます)、その程度を鍵盤ごとに調節できます。「鍵盤ごと」というところがミソですね。Characterをいじれば、低域はパリッパリのロックピアノ、中高域はおしとやかなクラシックピアノ、なんて音作りもできますよ。

後半の予告

FANTOMを視野に入れるユーザーさんに向けたということもあり、結構濃いめの記事になりました。

後半ではいよいよ音作りやFANTOM単体での打ち込みについて解き明かしていきますよ!

興味をお持ちいただいた方はぜひフクシマをご指名の上、当店までお越しくださいませ。アツくお待ちしております。

ローランド新製品「FANTOM」がアツい! 後編

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この記事を書いたスタッフ

投稿者: フクシマ
まあまあコテコテのDTMerです。現役でゲームサウンドの制作に携わりながらDJを少々嗜みつつ、某女性声優に触発されてMIDI検定1級を取得するなど、多方面で精力的に活動中。実をいうと専攻分野は音響効果。デジタル制作ライフのご相談はお気軽にどうぞ! 頑張ります!

著作権について

過去製品写真はRolandホームページより引用しました

一部更新: 2019/12/28

FANTOMのピアノ音色にはV-Pianoテクノロジーの技術が投入されていますが、かつてのV-Pianoの音源エンジンをそのまま積んでいるわけではありません。同様に直近の電子ピアノに搭載されているPureAcousticやSuperNaturalも、V-Pianoと全く同様の物理モデリングができるわけではありません。誤解を招く表記を認めたため更新いたしました。

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