ヤマハクラリネットSE・CSモデル別 違いと魅力をざっくり解説!
日本のみならず世界でその名を知られるYAMAHA。
ジャパンクオリティのプライド溢れる美しい仕上がりと吹き心地の安定性で、ビギナーからベテランまで幅広い層に支持されています。
吹き方が安定していない、少しの変化で音が昨日と変わってしまう、そんな方にとって「安定していること」の安心感は他にはない魅力と言えます。
今回はそんなYAMAHAクラリネットのSE系・CS系それぞれの違いと全体的に持つ特性をピックアップし、ざっくり魅力を解説します。
特性を元に考えたお勧めセッティングもありますので、楽器選び・マウスピース選びの参考のひとつにしていただければと思います。
※モデルによってはCS系ですが少し抵抗が軽めであったり、SE系ですが粒立ちが良くすっきりと表現できる楽器もあります。
ぜひ試奏でその違いを体感してください。
CONTENTS
ヤマハ2大系統 SE・CS
ヤマハには2つの大きな系統に分かれます。それが、SE系とCS系。
設計の違う2つの系統は下のように大きく特徴が分かれます。
柔らかく広がる豊かな音色【SE】系 | クリアで伸びのある力強い音色【CS 】系 | |
特徴 | 温かく柔らかな響きと太く豊かな音色。 管の内側がなだらかに広がる設計のため、ふくよかな音が広がるのが特徴。 CS系に比べ息の抵抗が少なく柔軟な表現力がある反面、それをコントロールするにはある程度の熟練度が必要。 | 遠達性に優れパワフル、クリアで明るい音色。 管の内側がストレート部の多い設計のため、まっすぐで芯のある通る音が特長。 SE系に比べやや息の抵抗があり力強いため、組み合わせを誤ると音が硬くなりがちに。 |
モデル一覧 | YCL-650、YCL-853Ⅱ、YCL-SEV、YCL-SEVm、SE-Artist、SE-GT | YCL-255、YCL-450、CX、YCL-852Ⅱ、YCL-CSV、YCL-CSVm、CSVR、YCL-CSGⅢ |
吹奏楽向き、ソリスト向きはプレイヤー次第
よくSE系は吹奏楽向き、CS系はソリスト向きと言われます。
確かにSE系は音がまろやかなので良く周りと馴染みますし、CS系は音が立つのでソロでもホールでまっすぐ音を響かせることができます。
そのため、吹奏楽などのクラリネットパートのように大人数で吹く場合はSE系、オーケストラなどパート人数が少なくソロも多い場合はCS系が向くと言われます。
しかしでは、SE系がホールでまっすぐ音を響かせられないのかと言うとそうではありません。
またCS系だからと言って、周りと音が馴染まない訳ではありません。
SE系はセッティングがまろやか過ぎると音が霧散してしまいますし、CS系に5RVは音がきつくなり過ぎてしまうことも。
(しかしプロでCS系に5RVの方もいるので、絶対にきつくなるとは言えないのです)
いきなり記事のタイトル「ざっくり魅力解説」のざっくり部分を否定していますが、「SEだから」「CSだから」に囚われず、大体何となくこういう傾向があると言う意味で「ざっくり」特性を把握して頂きたいというのがこの記事の狙いです。
そして、奏者一人一人ちがう音つくりのお役に立てていただけましたらと思います。
元々持っている特性を活かし弱点をカバーして、奏者の演奏環境に合わせた理想の音を目指して試行錯誤することも楽器を楽しむ醍醐味と言えるのではないでしょうか。
CS系の魅力
CS系が全体的に持つ特性をピックアップし、ざっくり魅力を解説します。
①コントロールのしやすさ | ヤマハが初めての1本にと推している255、450はCS系です。 ストレートでSE系より抵抗があると言われますが、実はその方がコントロールはしやすくなります。 トーンホールがSE系よりやや小さいので、押さえやすいとも言われます。 また、音の粒立ちが良く息に素早く反応してくれるのがCS系の魅力。 スタッカートや繊細な表現など、奏者の想いに鋭敏に反応してくれる楽器です。 |
---|---|
②遠達性 | 遠達性、遠鳴りとは、広いホール等でも霧散することなく音が響き渡ること。 内径がストレートなので、ホースの水が出ている口を潰すと水が遠くまで飛ぶように、音がまっすぐ響きます。 音が立つので演奏に説得力があり、プロに好まれやすい特徴です。 |
③クリアな音色 | 無駄な雑音がなく明るく澄んだ音色が自然に出ること、それはCS系の大きな魅力です。 低音から高音までむらなく均一に鳴るヤマハらしさに、音色の透明感が加わっています。 |
お勧めのセッティング案
CSの特徴を元に、魅力を活かすことができるお勧めのセッティング案をまとめました。
※お勧めの組み合わせは吹き方や経験などにもよりますので、ぜひお試しいただきお好みの組み合わせをお選びください。
クリアで伸びのある力強い音色【CS 】系 | |
マウスピース | マウスピース:バンドレンM30 5RVとB40の間に位置するM30は、B40のようなふくよかさを持ちつつ息が入りやすい上にコントロールもしやすいという優れもの。 楽に手っ取り早く音をまろやかにしたい、そんな方にもお勧めです。 良くも悪くも奏者の実力を素直に表すCS系、音が硬くなってしまうという方はマウスピースの先端が広めのものをお勧めします。 B40やB40ライヤー、ブラックダイヤモンドも、CS系の遠達性やクリアさの相乗効果で太く遠くまで飛ぶ印象に。 |
リード | リード:硬さは中位、しなやかなタイプ M30などは硬めのリードでも柔らかめのリードでも柔軟に鳴ってくれます。 V12やダダリオのレゼルヴクラシックなど、しなやかかつ温かな音色でコントロールしやすい物などがお勧めです。 B40など先端の開きが広いマウスピースには、3や2.5などの少し柔らかめのリードの方が良く振動し鳴ります。 |
SE系の魅力
SE系が全体的に持つ特性をピックアップし、ざっくり魅力を解説します。
①温かく太い音色 | クラリネット吹きの理想とする、まろやかな甘い音色を実現しやすい設計です。 SE・CS共通である低音から高音まで均一に鳴る感覚に、音色の太さが加わっています。 |
---|---|
②溶けこみやすさ | 音の輪郭に角が少なく、他の楽器の音にも柔らかく溶け込みます。 音に含まれる倍音も多く、豊かで立体的な音が周囲に広がり包まれるような感覚になります。 ヤマハのクラリネットは音程も取りやすいので、奏者も聴いている人にも心地良いハーモニーが生まれやすい楽器です。 |
③豊かな表現力 | 強弱の幅が大きく、多彩な表現力を持ちます。 息をたっぷり使うことで、奏者の表現したいことを実現してくれる楽器です。 |
お勧めのセッティング案
SEの特徴を元に、魅力を活かすことができるお勧めのセッティング案をまとめました。
※お勧めの組み合わせは吹き方や経験などにもよりますので、ぜひお試しいただきお好みの組み合わせをお選びください。
柔らかく広がる豊かな音色【SE】系 | |
マウスピース | マウスピース:バンドレン5RVライヤー 定番中の定番と言われる5RVは、マウスピースの先端の開きが狭く少ない息でも安定して鳴らすことができます。 5RVライヤーはそんな5RVの特徴を活かしつつ音量・抵抗を増やし、SE系の柔軟さをコントロールする手助けをしてくれます。 またバンドレンのB40やブラックダイヤモンドにすることで、SE系本来のふくよかで豊かな響きを引き出すことができます。 |
リード | リード:やや硬め、太く鳴るタイプ 5RVなど先端の狭いマウスピースの場合、リードは3.5など少し硬めにし、たっぷり息を入れられると本来の柔らかな音色に。 息が苦しい、うまく鳴らせないなどの場合は無理せず2.5からスタートしましょう。バンドレンのV12などもお勧めです。 B40など先端の開きが広いマウスピースには、3や2.5などの少し柔らかめのリードの方が良く振動し鳴ります。 |
カスタムモデルとスタンダードモデルの違い
どの楽器・メーカーにも言えますが、最上位に位置するカスタムモデルはそのメーカーのもつ最高の技術とノウハウの結晶です。
ヤマハの場合はスタンダードモデルが「学生向け」とよく言われる分、カスタムモデルとの印象の違いに驚く方も多いでしょう。
家族向けファミリーカーとスーパーカーをイメージしていただくと分かりやすかもしれません。
ヤマハの素晴らしいところは、家族向けファミリーカーであるスタンダードモデルでも、高品質で吹き心地も安定していて丈夫であること。
そしてスーパーカーであるカスタムモデルには、スタンダードモデルの安定性に「表現力の幅」「上質な音色」「美しいデザイン」などが追加されています。
ぜひその違いも体感していただけると、YAMAHAクラリネットの魅力を更に感じていただけるでしょう。
ヤマハクラリネットの魅力を体感できます!
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この記事を書いた人
管楽器修理担当 神戸(ごうど)
錦糸町マルイクラシック店に常駐する管楽器技術者の神戸(ごうど)と申します。
リペアの仕事柄、楽器の調整崩れ、特性やマウスピースとの相性、熟練度など様々なことが絡まって「上手く思うような音が出ない」と悩む方のお声を毎日耳にします。
そんな方々にリペア以外の1つの視点としてお伝えしたいと思ったことを、本当にざっくりとまとめさせていただきました。
ざっくり大まかな内容なので、本当はこのモデルのここがこうなっている所の凄さをもっと語りたい!という思いは我慢しました。
ぜひお店にお越し頂いた際は、ここに書き切れなかった沢山の魅力を体験していただけましたらと思います。
リペア稼働スケジュールはコチラ
お問い合わせ
店舗 | 島村楽器 丸井錦糸町クラシック店 |
---|---|
住所 | 東京都墨田区江東橋3-9-10 丸井錦糸町店 6F |
電話番号 | 03-5600-3888 |
担当 | 木村・延藤(のぶとう) |
総武線錦糸町駅下車、徒歩3分です。
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