トゲナシトゲアリの初ライブレポ! メンバーに音楽や楽器のことをあれこれ聞いてみた

©東映アニメーション

アニメーションと現実のバンド活動を融合させたオリジナルアニメ『ガールズバンドクライ』。その劇中バンドである“トゲナシトゲアリ”が、9月14日(木)東京・代官山SPACE ODDにて<トゲナシトゲアリ修行中 公開練習ライブ>を実施しました。練習の模様と共に、初ライブを終えたメンバーのインタビューをお届けします!

全身全霊のパフォーマンスを見せた公開練習ライブの模様をレポート

『ガールズバンドクライ』は、東映アニメーション、音楽×総合クリエイティブカンパニー・agehasprings、レコード会社・ユニバーサル ミュージックによる共同企画のオリジナルアニメ。2023年4月に本格始動すると、劇中バンド“トゲナシトゲアリ”のミュージックビデオが続々と公開され、多くのアニメファンと音楽ファンの注目を集めています。

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また、トゲナシトゲアリの声優を担当するメンバーが実際にバンド活動を行っている点も、『ガールズバンドクライ』の特徴です。メンバー兼声優は2021年のオーディション <Girlʼs Rock Audition>で選出された、理名(井芹仁菜役/Vo)、夕莉(河原木桃香役/Gt)、美怜(安和すばる役/Dr)、凪都(海老塚智/Key)、朱李(ルパ/Ba)の5名。彼女たちは2023年7月にシングル「名もなき何もかも」でデビューを果たしました。

「爆ぜて咲く」のMVがYouTube再生回数420万回を突破するなど(※2023年9月末時点)、すでに多くのファンを獲得しているものの、結成からまだ日が浅いトゲナシトゲアリ。そんな5人がライブ活動に向けた修行を行うべく、9月14日(木)に公開練習ライブを実施しました。トゲナシトゲアリにとって一生に一度の、貴重な初ライブ。その勇姿を見届けようと、抽選で招待された多くのファンが代官山SPACE ODDに集い、期待に胸を膨らませた様子で開演を待ちます。

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定刻になると、会場に観客による大きな歓声と拍手がこだまする中、メンバーが登場。雑踏のSEと共に、ステージ後方のスクリーンには『ガールズバンドクライ』のキャラクターたちが街を歩くアニメーションが流れます。アニメの登場人物たちがライブ会場に向かっている――そんな想像もかき立てられる演出です。

メンバーの緊張が伝わってくるかのように会場にはどこか張り詰めた空気が漂っていましたが、美怜さん(Dr)のカウントから「理想的パラドクスとは」の演奏が始まると雰囲気が一転。5人は凛とした佇まいでパフォーマンスを行います。凪都さん(Key)によるダイナミックなキーボードの調べや、美怜さんの粒の揃ったドラムの音色、リズムを牽引しつつ流れるようなプレイを展開する朱李さん(Ba)のベース、バンドサウンドをきらびやかに彩る夕莉さん(Gt)のギター、そして声を限りに歌う理名さん(Vo)の力強いボーカル。初ライブとは思えない安定感は、彼女たちがこのステージに立つまでたゆまぬ努力を続けてきたことを物語っています。一方で、思い切りのある演奏は初期衝動を感じさせ、瑞々しいアンサンブルとパフォーマンスに観客は大いに熱狂していました。

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2曲目は疾走感のあるナンバー「気鬱、白濁す」。フロアの熱気に触発されるように、5人のプレイもさらに熱を帯びていきます。凪都さんのはじけるような笑顔や朱李さんのフロアを見渡す姿からは、存分にライブを楽しんでいるのが伝わります。バンドでのライブ経験が少ないと自身の演奏で精一杯になってしまいがちですが、トゲナシトゲアリのメンバーはアイコンタクトを取りながら互いの呼吸を感じあうなど、抜群のチームワークを見せていました。

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2曲歌い終えたところでMCへ。理名さんが「楽器を持って、音楽を通して皆さんとお会いするのは初めてなので、緊張もありますが、それよりも会えてうれしい気持ちでいっぱいです」と喜びを伝えます。「疲れたって思ったときもあったけど、がんばってきた甲斐があったなって、今すごく思います。今日は公開練習ライブということで、皆さんにこれまでの練習の成果をお見せする機会をいただきました。私たちの始まりの目撃者になってください」

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そしてメンバー紹介で和やかな空気に包まれたのち、新曲「黎明を穿つ」を披露。陰のある楽曲の世界観をバンドサウンドで表現するなか、夕莉さんが堂々とギターを奏でる姿や、ドラムを叩く美怜さんのしなやかな動きが目を引きます。「偽りの理」では朱李さんの骨太なベースサウンドが勢いを再加速させる中、楽器隊がヘドバンを行うなど激しいステージングで魅了しました。

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ここで理名さんは「これから私たちは『ガールズバンドクライ』での声優としての活動とともに、リアルでのトゲナシトゲアリのライブを始めていきます」と述べ「初めてのことばかりで戸惑うとともに、ワクワクしています。どうぞ、見守って、応援してくれたらうれしいです」と宣言。決意を胸に人気曲「爆ぜて咲く」を演奏しました。凪都さんの駆け巡るような鍵盤の音色や夕莉さんのエモーショナルなギターサウンドがフロアを煽り、観客が飛び跳ねたりクラップをしたりと、会場の熱は最高潮に。そこに理名さんのエネルギッシュな歌声が響き渡ります。ラストは、デビュー曲でありバンドの始まりの楽曲「名もなき何もかも」。全身全霊で演奏する5人とスクリーンに映し出されたMVのキャラクターたちの姿がリンクし、最高潮のクライマックスを迎えました。

約30分、全身全霊でパフォーマンスするさまを観客の目と心に焼き付けたトゲナシトゲアリ。「音楽を心の奥底まで届けたい」と理名さんがMCで述べていましたが、その言葉通り目の前の観客一人ひとりに音楽を伝えたいという実直さが感じられました。トゲナシトゲアリの楽曲を聴き込んで会場に訪れたであろうファンの方たちも、リアルなライブ会場ならではのグルーヴを感じ取ることができたことでしょう。『ガールズバンドクライ』という作品とともに成長し続ける5人のこれからに、より期待が高まる一夜となりました。

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セットリスト
1.理想的パラドクスとは
2.気鬱、白濁す
3.黎明を穿つ
4.偽りの理
5.爆ぜて咲く
6.名もなき何もかも

公開練習ライブを終えたメンバーにインタビュー

公開練習ライブを終えたばかりのトゲナシトゲアリのメンバーに、インタビューを実施。これまでの楽器経験や、ライブの感想、ファンへの想いについて伺いました。

――公開練習ライブのMCで、朱李さんは中学時代にベースを弾いていたとおっしゃっていましたが、バンドは初めてですか?

朱李(Ba)

中学の吹奏楽部でベースに出会ったんですが、それ以外ではないですね。本当に人生初めてのバンドです。

――他のみなさんは、これまでに楽器を弾いた経験や人前で演奏した経験はありますか?

美怜(Dr)

私は高校1年生の15歳からドラムを始めて今に至ります。そのきっかけになったのが、高校の軽音楽部です。たまたま見学に行って“ドラム、カッコいいなぁ”と思ってやってみたらハマってしまいました。

理名(Vo)

中学2〜3年生のときに1年間くらいボイストレーニングに通っていて、発表会で30人くらいの前で歌ったことがあります。生演奏をバックにして歌ったのもその一回きりでしたし、私たちの音楽を聴くために来てくださった方に歌を届けるのは、今回が初めてでした。なので、今日はとてもいい経験になりましたね。

凪都(Key)

私は3歳のときからピアノを習っていて、高校の軽音楽部でキーボードを弾いていました。やっぱり一人でピアノを弾くのと、バンドの中でキーボードを弾くのはまったく違うので難しいなと思います。でも、ピアノを長くやった経験は今も生きていますね。

夕莉(Gt)

高校を選んだ決め手が軽音楽部で、“ギターって超カッコいい! 絶対やりたい”と思っていましたが、人気パートなんですよね。それで結局ボーカルになりまして…(笑)。高校1年生のときからギターは弾いていたんですけど、バンドの中で弾くのはトゲナシトゲアリが初めてなんです。だから今日も始まる前はすごく緊張しました。でも、お客さんが盛り上がってくれてすごくうれしくて、1曲目から緊張はなくなりましたね。全力でライブができて楽しかったです。

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――公開練習ライブの感想を教えてください。

理名(Vo)

始まる前は緊張したんですけど、ステージに立ったときに皆さんの楽しそうな顔やノってくれる姿を見て、すごく楽しく歌えました。だから練習のときよりも動いちゃって。歌詞を間違えたり小さな失敗もいっぱいあったんですけど、最高の時間だったなと思います。

朱李(Ba)

普段は落ち着いているタイプなんですけど、今日はすごく緊張して、(開演前は)ステージ裏で飛び回ったり走ったり踊ったり全然落ち着きがなくなってしまいました(笑)。でも、影アナがあった後にお客さんがヒュー!と盛り上がってくれて、そこで緊張が解けたというか、すっきりと本番を迎えられました。あと、ステージで見るメンバーみんなの顔が本当にカッコよくて、泣きそうになりましたね。

美怜(Dr)

私は緊張というよりも、“始まるんだ”というフワフワした気持ち、地に足がつかないような感覚で準備していました。でも、始まる前にステージ裏からお客さんの盛り上がってくれている声を聞いて、それが力になって。ステージに上がったときもフロア一面にお客さんがたくさんいらっしゃったし、皆さんがすごく応援してくれているんだ、みんな味方なんだと感じられたので、心地よく楽しめました。

――バンド活動をする上で、アニメのキャラクターに影響された部分はありますか?

凪都(Key)

私が演じている海老塚智ちゃんは、アニメのトゲナシトゲアリで最年少なんですけど、音楽に対して思っていることや演奏面での指摘をしっかり面と向かって言える子なんです。私は練習中に気づいたことや気になったことを今まで(トゲナシトゲアリの前)は言えなかったんですけど、智ちゃんを演じたことがきっかけで、バンドが成長していくために気づいたことは言わなきゃなって思えるようになりました。最近はバンド練習でも“ここを揃えたい”とか“ここは一体になって演奏したい”など、少しずつ言えるようになりましたね。

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――ファンの方や読者の皆さんにメッセージをお願いします。

夕莉(Gt)

私たちトゲナシトゲアリも、作品と一緒に成長していきたいです。この作品を見た方が“自分もバンドをしてみたい”と思ったり、キャラクターの音楽に対する熱い想いに共感してくれたりしたらうれしいですね。今日のライブではファンの方に支えられているなってすごく感じたので、これからもファンの方をがっかりさせないようにがんばりたいです。

朱李(Ba)

音楽やアニメは私にとって希望を与えてくれるものなんですけど、この『ガールズバンドクライ』や私たちの活動が、たくさんの人の心に寄り添って手を差し伸べられたらいいなと思います。音楽を聴いてくれたり、今日みたいにライブのためにスケジュールを空けてくれたりするのは本当に幸せなことで、ファンの方には感謝しかありません。私たちもお客さんにパワーを与えられるようにがんばりたいなって思います。

理名(Vo)

トゲナシトゲアリの活動を通して、音楽やバンド、楽器に興味を持ってくださる方がいればいいなと思います。そういった方が将来バンドを組んで、何年後・何十年後とかに対バン(共演)できたらすごくうれしいなって。実は私も、1週間くらい前にエレキギターを買ったんです。私も毎日練習しているので、アニメをきっかけに楽器を始めた方と一緒に成長できたらなと思っています。

今日のライブで皆さんのノリ方や盛り上がり方を見たときに、すごく曲を聴き込んでくれているんだなと思って、楽しさが10倍20倍くらいになりました。応援していただけることは当たり前じゃないと思っているので、感謝の気持ちを忘れずに、皆さんと一緒に音楽を楽しんでいきたいです。

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この記事を書いた人

神保未来

編集者、ライター、時々カメラマン。『Go!Go!GUITAR』の編集を経て、現在は音楽媒体を中心にフリーランスで活動中。趣味はフィルムカメラで写真を撮ること。