「子育て×音楽」~女性の本音リモート座談会~

子育てを通して感じる、私たちの本音、音楽の魅力

子育て中でも、音楽は続けたい。今回はプロ、アマのクラリネット奏者でありながら子育て中でもある3名の女性にお集まりいただき、「子育て×音楽」というテーマで本音座談会を開催しました。

子育てを通して見えた音楽の魅力など、女性のリアルな本音トークをお伝えします!

【参加者】
郡 尚恵  神奈川県在住。クラリネット奏者。小学3年生男子の母。
大城 涼子 沖縄県在住。クラリネット奏者。中学3年生女子の母。
高橋 希  北海道利尻島在住。趣味でクラリネットを演奏。小学5年生女子の母。

郡 尚恵さん
大城 涼子さん
高橋 希さん

子育てしながら音楽するって、綺麗事ばかりじゃない

──郡さんや大城さんは、プロの演奏家として活動をされていますが、女性にとって「子育て」をしながら「音楽」をする上で、難しい部分ってどんなところですか?

郡さん

演奏家ってコンサートが土日にあったりするので、一般の保育園だとなかなか預けられなかったりして、子どもを預ける場所に一番苦労しましたね。夫も演奏家なので、息子が小さいころは夫と自分のコンサートが重ならない様にスケジュールを組んだり、重なった時は演奏先の場所で託児所を探したり、ベビーシッターさんにお願いしたりしていました。

大城さん

私も知り合いの方に、謝礼をお支払いして子どもを見ていただいたことがありますね。県内での仕事の時は、両親に頼んだり、夫にお願いしたりしますが、子どもが小さいと授乳もあるので、県外に演奏に行く時は娘も一緒に連れてって、リハーサルの合間に授乳して、楽屋にいる仲間に預けてまたリハーサルに出て……なんてこともありました(笑)。

──高橋さんはいかがですか?

高橋さん

私は趣味で音楽を続けていて、結婚してからもしばらくは地元の吹奏楽団に入っていたんですけど、出産してからはやはり夜遅い練習が難しくて……。団体としての活動はやめて、気が向いたときに独りで演奏したり、たまに誰かと一緒に演奏しながら細々つづけています(笑)。私は演奏家じゃないですけど、仕事をしながら育児をしていたので、働く女性の大変さはわかります。

郡さん

働きながら子育てするって綺麗事ばっかりじゃなくて、やっぱりお金も大変だよね(笑)。日本もベビーシッターの会社は増えてきましたけど、まだまだ高いんですよ。認可の保育園に預けるよりお金がかかっちゃう。例えばそういうシッター代は税金が控除されるような国の補助もあると、女性も今より働きやすくなるのかなって思います。

大城さん

あとはやっぱり、一緒に子育てをするパートナーとの関わりですね。私の夫は音楽経験がない人なので、毎日練習する時間が必要だと理解してもらうのが大変でした。本番近くなったりすると無意識にピリピリしていることがあるみたいで、「何怒ってんの?」って言われたり(笑)。

──パートナーの理解も重要ですよね。

大城さん

そうですね。パートナーとの関わり合いが一番難しかったかも (笑)。男性と女性の子育ての感覚ってどうしても違うじゃないですか? だから子供の自主性を尊重する部分と、叱る部分が逆の考えだったり。でも娘には嫌われたくないから私に叱って欲しかったり(笑)。

郡さん

甘いパパなんだ(笑)。うちの場合は逆で、夫が厳しくて私が甘い(笑)。

高橋さん

うちは私が口うるさくて、夫がのびのびですね(笑)。

──意外とそういう両親のバランスが、子どもにとっては重要なのかもしれないですね(笑)。

郡さん

どっちも厳しかったらやっぱり子どもは息できないですよ。私は子どもに「一番信頼してくれているのは両親」だと思って欲しいから、もちろん子どもが大事なんですけど、育児と仕事は同じ天秤にはかけられないし、どちらかを犠牲にするようなことはしたくないよね。

──子育てをする中で、時間の管理が大変そうですが、普段の練習はどのように?

郡さん

子どもを産む前は自分のペースで練習してることもあったんですけど、子どもを産んでからは休憩なしで2時間バシッと集中して練習して、その間夫に子ども面倒見ててもらったりしていますね。

高橋さん

限られた時間に何かをしなきゃいけないから、時間の使い方は上手になりますよね(笑)。私は娘が学校に行ってる間に集中して練習しています。

大城さん

ママさんバンドで指導してる仲間がいるんですが、そういうママさんバンドだと、子どもたちを練習に連れてきながら合奏してるみたいで、練習してる周りで子供たち同士が遊びまわっているところもあるみたいですね。

音楽は美容と健康にも良い!?

──子育てをしながら音楽をはじめるって一般的に敷居が高いのかなとも思いますが、そういう方におすすめできる「音楽の魅力」とは?

高橋さん

私はアマチュアだから、音楽を演奏するって「非日常」なんですよね。普段の生活とは全然違う世界に自分が没頭できて、リフレッシュできる場所。練習してフレーズを吹けるようになった達成感とか、日常生活とは違う喜びが見つけられたりするのかなって……。気分転換とか喜びみたいなものが、趣味としての音楽にはあるのかなと思います。

郡さん

音楽を趣味でやっている方って、気持ちが豊かですよね。みんな楽しそうにしてる。そういうのを見ると「やっぱり音楽っていいなぁ」って思います。

高橋さん

自分の好きな曲を吹けるだけでも喜びなんですよね。それこそ今は島村楽器さんの音楽教室だったり、気軽にはじめられる窓口がたくさんあると思います。

郡さん

そうそう! ステージで演奏するとかじゃなくて、カラオケ店で好きな曲をカッコよく吹きたいみたいなはじまりで良いんだよね!

大城さん

好きなことをやってるときって、やってる本人も自分のことが好きになれる瞬間ですよね。やりたいことを我慢している自分がいると、つい子どもや夫に当たっちゃったり……。私自身、自分のメンタルを健康に保つために音楽に関わってる部分もあって、行き詰まったときも音楽があったから乗り越えてこれた。心が病んじゃうと体にもきちゃうし、自分を責めちゃうこともあるから、好きなことをやれるっていうのはやっぱり“心の健康”にも繋がるんじゃないかな。

──それはプロアマ関係なく、音楽をやってよかったと感じる共通点ですね。

郡さん

それに美容にもいいですよ。私の生徒さんで「ほうれい線が気になってるからクラリネットはじめたい」っていう人もいます(笑)。

大城さん

確かにそれはおすすめできるかも(笑)

郡さん

管楽器は口周りの筋肉を使うので、特に金管奏者でほうれい線がある人ってほとんど見かけないですよね。それに「楽器を演奏する」って呼吸も使うし、体も使うし、頭も感性も使う。いろんなアンテナを張らないとできないから良いんじゃないかなと思います。達成感や楽しみもあるし、美容にもいいし、心と体の健康にもいい(笑)。

大城さん

音楽をするって一石何丁でもあるよね。私の生徒さんで、ゼロから練習して吹けるようになる過程を子どもに見せたい!っていうお父さんもいましたね。親が頑張ってる姿を子どもに見せるのも、教育の一つなんじゃないかなと思います。

高橋さん

私が吹奏楽バンドに所属していたときも、練習に子どもを連れて来てた方はたくさんいました。コンサートのステージで吹いてるママを子どもが誇らしげに見ていたので、親子の関係もより豊かになる気がします。

郡さん

でもお母さんって、育児の中で自分を犠牲にしちゃう部分もあるから、新しく楽器をはじめよう!ってなかなか思えないのかもしれない。

高橋さん

気軽にできる楽器からはじめてみるのも良いですよね! コロナ禍でウクレレブームとかもありましたけど、昔憧れたピアノをはじめてみるとかでも良いですよね!

郡さん

歯医者さんとかにキッズスペースがあったりするけど、レッスン教室にもキッズスペースがあると良いなって思いません?あとは例えば、子どもたちにリトミックを受けさせて、その間にお母さんたちもレッスンを習える音楽教室があったら良いのになって思います。1時間でも「自分だけの時間」ができると、お母さんってスッゴイ嬉しいんですよ!(笑)

私たちの音楽のカタチ

──では、みなさんにとって「音楽」とは?

郡さん

私は「音楽は愛」ですね。音楽がないと世の中が寂しいっていうか、音楽って人を繋げてくれる気がするんですよね。音楽って世界共通の言語だと思っていて、そういう意味も込めて、子どもに対しても、人に対しても「音楽は愛」だなって。

高橋さん

私も郡さんと似ていますが「つながり」です。私と子どもとの共通の趣味が音楽で繋がってるというのと、人と人、国境を超えて音楽は繋がれる。郡さんとの繋がりがあって、今日まで音楽をつづけているので。

大城さん

私にとって音楽は「笑顔の種」です。やっぱり心が健康じゃないと、笑顔って出てこないと思うし、笑顔を分けてもらえるものも音楽。郡さんの言った「愛」や、高橋さんの言った「つながり」も、「笑顔」で表現できるかなと思いました(笑)。

──本日はお忙しい中ありがとうございました!

この記事を書いた人

上原章

広告代理店のディレクターとして、楽器メーカーの販促企画を担当する一方で、クラシックやジャズを扱う音楽専門雑誌の編集にも長年携わる。これまでに数多くのインタビューや企画の担当をしてきたが、最近は動画撮影の仕事の方が多いともっぱらの噂。本当はブラックミュージックと漫画が好きな、元バスケットボーラー。