1950年代~2010年代まで約70年間のポピュラー音楽を振り返ろう

Happy Jam編集部のオオフカです。皆さんは、普段、どんなジャンルの音楽を聴いていますか?  

現在、音楽配信のサブスクリプションサービスや動画サイトなどで、様々なジャンルの音楽を一度に聴くことができますが、音楽は、その時代だからこそ起こるジャンルのブームというものがあります。

音楽のジャンルはロック、ポップス、ラップ・ ヒップホップ、ダンス・ミュージック、ジャズなど様々です。これらのジャンルは、それぞれ現在でも聴かれていますが、時代背景や年代によって、個々の盛り上がり方は大きく変わっています。

今回の記事では、時代の移り変わりによって、音楽のジャンルの盛り上がり方がどうなっているかが分かる興味深いグラフを紹介しながら、音楽の流行の変遷をたどってみたいと思います!

アメリカのヒットチャートで見るポピュラー音楽の移り変わり

今回はアメリカのヒットチャートのデータを元に作成されたものなので、全体的にはアメリカの傾向を表しています。なんだ、アメリカの話かとがっかりされた方もいるかもしれませんが、日本の音楽シーンはアメリカからも大きく影響を受けていますので、当時の日本のトレンドやまた今後についてもここから見えるのではないでしょうか。ぜひ、ご覧ください!

以下はアメリカの音楽チャートであるビルボードホット100の1940年代から2010年代までの70年間のデータを元にグラフ化したものになります。

このグラフは、一般に公開されているデータを元にTableau(タブロー)という分析ツールを用いて、マシュー・ファルカスさんというTableauユーザーが作成したものになります。アメリカで流行した音楽ジャンルを年代別にビジュアル化しており、WEB上で誰でも見ることができます。

ここのデータは、1940年代から2010年代までアメリカでチャートインした曲をジャンル別に区分しています。そして、その各ジャンル別ヒットチャートにチャートインした曲数を10年毎に数えて、その曲数に応じて円の大きさを変えています。つまり大きな円のジャンルになるほど、その10年間で流行したジャンルといえます。

それでは、年代別に流行の傾向を見ていきましょう!

1950年代「ポップス」の黄金時代

まず、最初に1950年代は「ポップス」一強で次に「ジャズ」と「ロック」となっています。

1950年代のアメリカは、第二次世界大戦後の好景気によって、中流階級が台頭し、アメリカは大きな経済発展を遂げます。生活が豊かになることによって、大人でも子供でもない若者、いわゆる“ティーンエイジャー”がクローズアップされます。ティーンエイジャーは、ファッションと音楽を楽しみ、「ポップス」は、そのような時代背景に呼応する形で大きく盛り上がることになります。


この時代の「ポップス」の人気アーティストとしては『ポール・アンカ』や『ニール・セダカ』がいます。

【ポール・アンカ】 Diana
【ニール・セダカ】 Oh! Carol


そして、1950年代半ばから戦後の社会矛盾に対する戦後世代の若者によるカウンターカルチャーとして「ロックンロール」(これは、後に「ロック」につながります)が誕生します。その「ロックンロール」を作り上げた一人として後世のポピュラー音楽に大きな影響を与えたのが『エルヴィス・プレスリー』です。

【エルヴィス・プレスリー】 Blue Suede Shoes


一方、「ジャズ」は1950年代半ばには、黒人演奏家だけでなく、『チェット・ベイカー』や『デイヴ・ブルーベック』などの白人演奏家も活躍するようになり、さらに大衆化が進みました。

【ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテット】 Take Five
【チェット・ベイカー】 My Funny Valentine

そして、1950年代末期には、『マイルス・デイヴィス』『ジョン・コルトレーン』達が、1960年代のジャズの指針となる名作を作りました。

【マイルス・デイヴィス】 Blue In Green
【ジョン・コルトレーン】 Blue Train

1960年代:ポピュラー音楽の革命期

1958年の『エルヴィス・プレスリー』の軍隊の入隊や、『バディ・ホリー』らの事故死の影響で、1960年代初頭のアメリカでは「ロックンロール」は停滞することになります。しかし、1962年のあるイギリスのグループの登場により、1960年代はアメリカを含めた各国のポピュラー音楽の世界が「ロック」で一変することになります。そのバンドとは、皆さんご存知の通り『ザ・ビートルズ』です。

【ザ・ビートルズ】 Help!

一方、『ボブ・ディラン』もデビューし、フォーク・ソングから発展したフォーク・ロックや、ハードロックの源流とされる『クリーム』や『キングクリムゾン』などのプログレッシブロックといった多様な「ロック」が生まれ、1960年代は「ロック」の若者の音楽文化の主流となっていきます。

【ボブ・ディラン】 Like a Rolling Stone
【クリーム】 Sunshine of Your Love
【キングクリムゾン】 21st Century Schizoid Man

1970年代:「ロック」の成熟期

1970年代には、「ロック」は、さらにジャンルが多様化し成熟していき市場を拡大していきます。ヒットチャートではブリティッシュ・ハード・ロックバンドのトップとして君臨した『レッド・ツェッペリン』、ウェスト・コースト・ロックの代表的な存在である『イーグルス』などが人気となりました。

【レッド・ツェッペリン】 Stairway to Heaven


ちなみに、『イーグルス』の曲「ホテル・カルフォルニア」では“1969年以来、ここにはそのスピリット(=精神)は置いていません”と歌われています。「ロック」成熟化に伴い1970年代の後半には1960年代のロックが持っていた生々しさやカウンターカルチャーとしての輝きは既に失われていたことが感じられていたのかもしれません。

【イーグルス】 Hotel California

そして、その動きに呼応するように1970年半ばには、主流「ロック」のアンチテーゼとして『セックスピストルズ』などのパンクロックが流行します。

【セックスピストルズ】 Anarchy in the U.K.

1980年代:MTVによる「ロック」の市場拡大

1980年代にはさらに「ロック」は市場が大きくなり、この時代にはほぼ「ロック」一強といえそうです。

日本でも人気が高い『ボン・ジョヴィ』がブレイクしたのも1980年代です。
また、現在でもアメリカのロック界の代表する重鎮として活躍する『ブルース・スプリングスティーン』が「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」という大ヒットを出しました。

【ボン・ジョヴィ】 Livin’ on a Prayer
【ブルース・スプリングスティーン】 Born in the U.S.A.


そして、この年代は、MTVという24時間ポピュラー音楽のビデオクリップを流し続ける音楽専門チャンネルが誕生し、そのMTVが生んだ最大のヒット曲が『マイケル・ジャクソン』の「スリラー」です。
MTVによって、テレビで「ロック」に接する機会が増えることによって、「ロック」の市場はますます拡大しました。

【マイケル・ジャクソン】 Thriller

1990年代:新たなカウンターカルチャーとしての「ラップ・ヒップホップ」

ただし、「ロック」全体としては巨大な利益を生む産業的な傾向が強くなっていき(その傾向は1970年代から進んでいましたが)、カウンターカルチャーとしての要素が弱くなります。

それに抗う流れで、アメリカのインディー・シーンからオルタナティブ・ロックというジャンルが誕生し、『ニルヴァーナ』という1990年代を代表とするバンドを生みました。

【ニルヴァーナ】 Smells Like Teen Spirit


しかし、「ロック」のカウンターカルチャーとしての役割が小さくなる時代の潮流は変わらず、1980年代から1990年代にかけては、カウンターカルチャーとしての役割を果たす音楽が「ラップ・ヒップホップ」に移行したと考えられます。
当初はハードコア・パンクバンドだった『ビースティー・ボーイズ』がラップグループとしてデビューしたのは、その象徴ではないでしょうか。

【ビースティー・ボーイズ】 Sabotage


「ラップ・ヒップホップ」は『パブリック・エナミー』のようにメッセージ性の強い、グループも大ヒットを飛ばすなど、アメリカの音楽シーンで存在感を増すようになり、1990年代は「ロック」とほぼ同規模となっています。

【パブリック・エナミー】 Fight the Power

また、1980年代に既にラップ・ヒップホップグループの『Run-D.M.C.』がロックバンドの『エアロスミス』とコラボした「ウォーク・ディス・ウェイ」がヒットしたのは、この1990年代の動きを予兆していたものといえそうです。

【Run-D.M.C.】 Walk This Way

その他、この時代にラッパーとして、活躍したのは、『Nas』や『2PAC』などがいて、1990年代は「ラップ・ヒップホップ」の黄金期となりました。

【Nas】 N.Y. State of Mind
【2PAC】 California Love

2000年代:再び、「ポップス」の時代へ

そして、2000年代になると「ロック」の存在感はほとんどなくなり、「ポップス」が最も大きくなって、その次に「ラップ・ヒップホップ」となっています。


2000年代で、大ヒットを飛ばしたのは『アヴリル・ラヴィーン』などの「ロック」の要素も入った「ポップス」のアーティストです。

【アヴリル・ラヴィーン】 Girlfriend


また、『ビヨンセ』のようなコンテンポラリー・R&Bにバックグランドを持つアーティストも大ブレイクしました。

【ビヨンセ】 Halo


さらに『ダフト・パンク』に代表されるような、エレクトロック・ミュージックのアーティストもシーンの一線に立つようになりました。

【ダフト・パンク】 One More Time

ヒップホップは、『カニエ・ウェスト』のようによりジャンルにとらわれないアーティストが活躍するようになりました。

【カニエ・ウェスト】 Stronger

2010年代:多様性が広がる音楽シーン

次の2010年代で興味深いのは「カントリー」です。2017年からドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国の大統領に就任しますが、この時期に白人の古典的なポピュラー音楽である「カントリー」が再び大きくなっているのは、この時代のアメリカの世相を音楽が反映しているといえそうです。

【クリス・ステイプルトン】 Tennessee Whiskey

ただし、アメリカは、有色人種(ヒスパニック系・アフリカ系・アジア系など)の人口が急増しており、これから20年後は白人よりも多くなるといわれています。そうなると当然音楽業界も、有色人種のマーケットを意識せざるを得ないと考えられます。現在は、1950年代と同じように「ポップス」が主流となっていますが、『ザ・ウィークエンド』のような有色人種のアーティスト・クリエイターが多く活躍しています。

【ザ・ウィークエンド】 Blinding Lights

そのため70年前の白人中心の状況とは異なり、多様な人種のカルチャーが反映した音楽になっています。したがって、もし10年後の2030年代にこのグラフで2020年代を見たら、現在の状況では「ポップス」がさらに大きくなる可能性がありますが、それは、これまでよりもさらに多様な民族カルチャーが映し出されたものになっていると予想されます。

また、2010年代以降は、カントリーの世界から出発して、ポピュラー音楽の世界的なスターになった『テイラー・スウィフト』、YouTubeからブレイクした『ジャスティン・ビーバー』、現在の代表するシンガーソングライターの『アデル』や『エド・シーラン』、そして史上最年少でグラミー賞の主要部門を受賞した『ビリー・アイリッシュ』、2021年にSpotifyにおいて世界で最も再生されたアルバム1位を獲得したアジア系アメリカ人の『オリヴィア・ロドリゴ』などの新しい世代が活躍しています。

【テイラー・スウィフト】 Shake It Off
【ジャスティン・ビーバー】 Ghost
【アデル】 Skyfall
【エド・シーラン】 Thinking Out Loud
【ビリー・アイリッシュ】 bad guy
【オリヴィア・ロドリゴ】 drivers license

このように一言で「ポップス」と言っても、個性的で多様なバックグランドを持ったアーティストが、今後も活躍していくと思われます。

まとめ

以上、ざっとアメリカのポピュラー音楽の70年間の歴史をグラフで見て、、私オオフカの見解とともに振り返ってみましたが、いかがだったでしょうか?

このグラフは、左にある曲名をクリックすると、データの元になった楽曲の一部が試聴可能で、気軽に70年間のアメリカのポピュラー音楽の歴史を体験できます。(ただし、スマートフォンなどでは正常に表示されない場合があるのでご注意ください。)

ぜひ今回のグラフで、過去からの音楽の流れを振り返って、あなたが日頃から親しんでいるポピュラー音楽の今後がどうなるか予想してみてくださいね!

この記事を書いた人

Happy Jam編集部 オオフカ

DTMが趣味のデータ・アナリスト。アコギを練習して、自作曲を弾き語りで披露することが目標。映画が大の好物で、年間100本以上を視聴。ジャンルを問わず全般的にチェックしているが、特に好きなのは音楽映画。いつか、自分が出演してスクリーンに出てみたい!