リプロダクションレポート

録れコン2011リプロダクションレポート chili「夜という球体」2011年8月16日レコーディングスタジオ「Sound City」A-studio

リプロダクションを終えて

chiliさんインタビュー

chiliさん

私にとってこのリプロダクションとは、どういう経験だったのか。実は一週間たった今でも、測りかねています。

当日を思い出してでてくるのは、ああすればよかった、こんな質問をしたかった、といった反省材料が多いです。
たぶん、事の重大さの自覚と、準備が足りなかったんだと思います。
あまり晴れやかな文章ではないですが、正直なトコロを書くほうが気持ちの整理もつくし、
もしかしたら後年受賞される方のお役に立てるかもしれないので、
たまにはこんなコメントもお許し願います。

リプロダクションとは、何か??
それを明確にしなかったことが、根本の敗因である気がします。

リプロダクションとは。トレコンのウェブサイトにはこのようにあります。

プロのエンジニアに協力いただき、プロの現場や、機材、スタッフを体験しながら、応募作品をリプロダクツ(再MIXなど)します。 受賞作品が決まった段階で、受賞者の方と相談しながら、どういう方向で、どんな方達と、創っていくかを決めていきます。

この文章からは、見えてこないことが一つ。つまり、誰が主体となって行うのか??
私なのか?それとも私は、プロフェッショナルの作業を、見学する立場なのか??
今になって考えると、それが掴めないままに、当日を迎えました。
(ところで誤解のないように書いておきますが、今はあくまで私自身の考えが足りなかった、ということを反省しています。「文章からは、見えてこないこと」の存在に気付くまで、ちゃんと向き合うべきでした。)

そういう状態でスタジオに入ると、自分の立ち位置が見つけられません。作業に、どのくらいコミットしていいのか、決められない。
参加していただいたミュージシャンの方やエンジニアの鎌田さんに、どれくらい自分の要望をぶつけていいのか、分からない。ともすると、私はあまり発言しない方がいいのかもしれない、なんて臆する気持ちまで出てきてしまいます。

去年の受賞者の河野さんも書いている通り、自分の頭の中にある音のイメージを言葉にして伝えるのは、ただでさえ難しいことです。作業中私が「" どんな言葉で、どれくらいの量、いつ伝えるか"を見極めるのがとても大変・・・」とこぼしたら、鎌田さんがすかさず「それができればプロで仕事できるよ」 とおっしゃったのが、とても印象に残ってます。

高いコミュニケーション能力が必要なレコーディングの現場に、立場が曖昧なまま踏み入ってしまったわたし・・・。そりゃ消化不良になりますね(苦)!
簡単な問題のようですが、シンプルなことこそ基本的で大切、というのはよくあること。
後悔先に立たずですが、ご迷惑だけはかけなかったことを祈ります・・・。

と、反省はこれくらいにして、とにもかくにも、ものすごく貴重な経験をさせていただきました。
作業後の作品と自作を聴き比べると、足りなかった部分が明確にわかって、とっても勉強になります。
プラスした楽器のチョイス。ひとつひとつの音の抜け方。音の配置の球体感。
これはもう、さすが!!の一言です。

特に後2つですが、そのための作業を、特別なエフェクターなどではなく、宅録経験者なら誰でも使うであろうイコライザやコンプなど、身近な道具だけでやってのける鎌田さん。少しでも近づけるよう、精進していきたいです!

最後になりましたが、今回のリプロダクションに係わってくださった皆様に、この場をかりてお礼申し上げます。ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございました!

鎌田 岳彦氏インタビュー

鎌田 岳彦氏

まずは"chili"さん、スタッフの皆さん、リプロダクションお疲れさまでした。

今回の作品について、実は打ち合わせの段階で実作業の方向性が中々決まらなかったです。

作品を聞いた段階での打ち合わせでは、3~5種類のアイディアが出て来たのですが
実際のトラッキング(実際の録音データ)を見てみると、意外に多くの音数。
データを前にしての打ち合わせも、実は二転三転!我々との思惑とのズレが…。
そこでまずは、少し私がミックスして『可能性を絞ろう!』との事になりました。

ここで、没になったプランの幾つかを…
・チェロトラックのアイディアを生かし、ストリングスカルテットを入れたアレンジの方向に!
・個性的でローファイなサウンド→ハイファイ広レンジのサウンド→個性的でローファイなサウンド!
・現状入っていない楽器(ピアノ/ドラム/ベース…)等を足したアレンジ!
・楽曲をエディット、構成に手を加えて印象を変える!等々・・・。

実際に、ミックスしてみて、音作りを豪華なサウンドにすればするほど、本作品の独特な世界観と相反する結果に。
またバランスを取り直して、オリジナルでは聞こえてこなかった音が幾つもあって、それらの明瞭度を上げて行くだけで、随分と楽曲の印象が違って来たではありませんか。
『埋もれていた、アレンジ』が見えてきました。上記のアイデアは『今回の作品の、目指すべきベクトルとは違うぞ!』

そこで、私の中での結論!
豪華/雄大なリプロ作業ではなく『より個性的で不思議なサウンドを目指そうと!』その後、リプロスタッフとの打ち合わせで、それらを確認→実作業の打ち合わせ→リプロダクション当日の流れになりました。
ある程度、リプロのプリプロ(笑)に時間を掛けたので、実際にスタジオに入ってからは、ほぼスケジュール通りの進行、ミックスの作業と…。

私の中でのテーマは『不思議で個性的な宅録サウンド』これは『チープで安っぽいサウンド』ではなく『印象的で癖のある不思議な世界観の音!』を目指しました。
実際にコード進行や歌い方は、かなり独特のムードを醸し出しています。『普通に良い音・普通のフレーズ』を録ったり『普段のエフェクト処理してミックス』する事では無く、サウンドをこの世界観にベクトルに合わせる事が必要でした。

という訳なので今回は特に、chiliさん・ミュージシャン及びリプロスタッフとのコミニュケーションは、微妙な表現が多くなり意思の疎通がとても難しく、特にそれを『言葉』にするのは大変でしたね。
お互いに『どう言えば、相手に伝わるか』『どうすればその表現が出来るか』普段の生活でそこまで考えて話す事はそれほど多く無いですからね。まあ、音やムード・サウンドを『正確に言葉にする事は無理がある』なので、様々なやり取りの中、作業の軌道修正をして行く。想像・予想以上の結果が出る事は、複数人での作業の醍醐味でもありますからね。録音/ミックスでのやり取りは、どうだったでしょうか。

ここ数年の『録れコン』での印象ですが、録音システムの向上で優等生的な作品が多い中、今回の作品はオリジナリティーに溢れ独特で個性的な作品。リプロダクションで、よりその世界観をより深く濃くなるようなお手伝い出来た事と思います。
今後の作品も多いに期待しています。お疲れさまでした!

中澤 智氏インタビュー

中澤 智氏

審査会からさせて頂き、優秀作品が多くある中、「夜という球体」は録音、楽曲共に「録れコン」のグランプリ作品として、私の中では文句なく一番でした。

まず驚いたのは、音質、細かいオートメーション。しかし使用機材は、「BOSS BR-1200」、マイクは基本「RODE NT1-A」との事。
「chili」さん自身は録音技術や知識は少ないと言っていましたが、素直に録音し、やりたいことをやる。結果良い作品が出来る。センスなんでしょうね!

リプロダクションにあたりまずは、データーの受け渡しです。MTRは「BOSS BR-1200」でしたが、数回のやりとりでスムーズに行われました。
同時に打ち合わせ。Pro Toolsに音源を並べ、2MIXでは分からなかった音を具体的に検証しました。鎌田氏によるプリミックスも行われ、作品に対するトラックのもつ意味、リプロダクションをするにあたり幾つかの可能性を模索し、「chili」さんと数回のやり取りを経て当日を迎えました。

余談ですが、この段階ではまだ作品の結果は見えていません。スタジオでは、何が起こるか分かりませんので。ケースバイケースですが、制作にあたりミーティング、デモ作りは、作品をどのベクトルに向けるか?どうスケジュールを組むか?予算は?等、アーティスト、スタッフ間の共通認識をはかる上でとても重要な行程だと考えます。特にレンタルスタジオを借りる録音や、スケジュール的にあまり時間がない場合なども、効率良く制作を進める上では必要不可欠ではないでしょうか。

当日は、アーティスト「chili」さん、ディレクター小久保氏、エンジニア鎌田氏、ベース、ウクレレJIGEN氏、パーカッション岡部氏により、想像以上の化学変化が起き、すばらし作品に仕上がりました。

ここで、エンジニアの視点から、レコーディングついて少しお話しします。あくまで一例です。
レコーディングで一番重要なのは、作業を円滑に、クリエイティブに進める事。エンジニアが音にこだわるのは当然ですが、今作品に見合った音なのか?フレーズなのか?弾き方なのか?楽曲全体を聴いて、流れを止めずに録音していきます。単体の音がカッコよくても、作品にあっていなければ意味がありません!

「今回はスネアをあえて、地面において録音!」というダビングもあり、結果、素晴らしいアイデアでした。
後は、経験です。マイキングも定番はありますが、楽曲も出音も違うわけですから、全て同じ方法は通用しません。
それと、特にマイクを使用する場合、マイクを通した音は、生の音とは違ってきます。プレイのダイナミックスもそうです。これも経験ですが、スピーカーやヘッドホンから出る音が実際の音になります。それも計算に入れて、チューニング、演奏、声の出し方等をコントロールする事もとても重要です。

ミックスは、リプロダクションでの内容を少し紹介します。
鎌田氏のネタばらし(許可得ていません!)にもなってしまいますが、今回は、SSL6000G+とPro ToolsHD5と兼用で行われました。エフェクトはPro Tools内で、Pro Toolsからステムで卓に立ち上げてモニターしています。鎌田氏は基本的なプラグインしか使用しません。EQ、コンプ、リバーブ、ディレイ、ハーモナイザー等です。至ってシンプルです。コンソールミックスと変わりなく、リバーブ、ディレイ、ハーモナイザーの混合で空間を作り出します。例えば、ディレイからEQ、更にハーモナイザー、更にリバーブなど、トラックごと別けて送り、前後、左右、上下を演出します。最近は特殊なプラグイン、更にプリセットが多く有りとても便利ですが、コントロールが難しく、それに頼りがちになります。ですが、工夫次第では、同じ効果、更にはシンプルでナチュラルな空間を再現できます。作業中はいろいろなモニター、音量でチェックします。
しかし、一番重要なのは、集中力ですが!
「chili」さんも、特殊なエフェクターが無くても出来るんだと大変参考になったと思います。

リプロダクションとは毎年、限られた時間の中、何をするのがベストなのか・・・。
完成された作品に手を加える事は、本人の世界感をしっかり把握し、やってみたい事を引き出し、新たな作品にする。決して只のブラッシュアップではない事。主人公も受賞者である事。
これが基本です。
それと、プロのレコーディング現場での体験。どんな進め方?どんな機材?ミックスはどんな事を?実際の現場では各プロジェクトにより全く内容は違いますが「録れコン」のリプロダクションは一般的なスタイルです。更にエンジニアは鎌田氏、スタジオはプロ仕様という事もあり、その中でもベストな環境での体験になります
今回はプロのミュージシャンのダビングも行われ、とても充実した内容になったのではないでしょうか?

最後に、音楽も映像も機材はどんどん新しくなります。ですが、機材はあくまでツールであり、逆に使われないように、プロを目指す方、趣味で楽しむ方。
音遊びを楽しんで下さい。

また、たくさんの作品にお会い出来ることを楽しみにしております!

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