録れコン2009

リプロダクションレポート 2009

2009年7月13日(月)録れコン2009グランプリ受賞作「僕はカラス」(pesmi)のリプロダクションが、東京港区麻布台のレコーディングスタジオ「Sound City」Bstで行われました。

今回の受賞者pesmiさんは広島在住のため、本人との事前打ち合わせは、面識も無いまま、十数回に及ぶメールと電話でのやり取りでのみ行われ当日を迎えました。 独特の雰囲気を持つこの受賞楽曲が、プロの手によってどのように変化していくのか、その工程を打ち合わせから録音現場まで、画像・動画を交えてお届けいたします!

    パーソナル
  • アーティスト:pesmi〔ペスミ〕
  • エンジニア:鎌田岳彦・中澤智
  • ミュージシャン:江草啓太(ピアノ)・清水玲(ベース)・植村昌弘(ドラムス)

01.打ち合わせ
01.打ち合わせ

本人より送ってもらった譜面とマスターデータ(これが今回かなりのネックに・・・・中澤氏の解説参照)を元に、鎌田氏のプライベートスタジオfoxyroomにて鎌田氏・中澤氏と事務局スタッフ小久保により、マスターデータの内容検証から打ち合わせは始まりました。

今回の楽曲は、バンド演奏を想定しての打ち込み(ボーカルとトロンボーンは生)による録音作品。各パート生音に近い音色が選ばれ、フレーズ・構成も破綻なく完成度が高いものです。また、本人の楽曲に対するコンセプトが確固としているため、生演奏によるイメージの具体化と演奏面でのアイディア提示が、最良の「リプロダクション」との方針が固まっていきました。

鎌田氏の推薦でピアニスト兼バンドマスターとして江草氏を交え、当日までに数回の打ち合わせを重ね、アレンジのアイディアなども含めて、作業の方向性を確定していきました。

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02.そして当日
02.そして当日
02.そして当日
02.そして当日
02.そして当日

録音スタジオは一昨年(録れコン2007)のリプロダクションでも使用した、日本でも屈指の規模を誇る「サウンドシティ」。※山下達郎・Xその他、著名なアーティストも使用するスタジオです。

今回はBスタジオを使用してピアノトリオの録音を行うことに・・・・・Bスタジオは、大きなフロアにブースを4つ有した生録音に完全対応したスペック。

フロアにドラムを配置し、ピアノ・ウッドベースはブースに分かれ、各楽器が完全セパレートで同時録音が可能となります。プログラムによっては、このフロアで14人以上のストリングスアンサンブルの録音も行われます。

スタジオ同様広々としたコントロールルーム内。コンソールはSSL SL9072J-72-LCD。室内後方には大きなソファーセットも備えられており、長時間の作業も快適に行うことが可能です。

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03.ドラムセッティング
03.ドラムセッティング

事務局スタッフが到着した時点で、すでにドラムの植村昌弘氏のドラムセットは運び込まれており、セッティングに取り掛かっていました。

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04.ビンテージなマイクが…
04.ビンテージなマイクが…

その傍らには、たくさんのマイクに混じってビンテージマイクの「ノイマンM-49C(’50~60年代製)」がアンビエンス用マイクとして準備されていました。

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05.マイクセッティング
05.マイクセッティング

準備されたマイクの総数は15本。楽曲にマッチするサウンドを得るための準備は万全です。また気温・湿度など、その日によって出音・部屋鳴りの状況も微妙に変わってきます。すでに壁のカーテンも広げられ、部屋鳴りを調整しています。

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06.ベースセッティング
06.ベースセッティング

フロアのドラムの正面位置のブースにウッドベースをセッティング。原曲の打ち込み音色にも使われており、事前の打ち合わせ通り今回の録り直しもウッドベースですることに。

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07.ブースの眺め
07.ブースの眺め

ドラムの設置されているフロアからは、このように完全セパレートされています。でも前・横とガラス張りなので、プレイヤーの呼吸はバッチリです。

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08.備えあれば…
08.備えあれば…

さすがにプロの現場です。万が一の急なオーダーにも応えられるようエレキベース(フレッテッド&フレットレス)の準備も抜かりありません。

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09.ピアノセッティング
09.ピアノセッティング

ピアノはスタインウェイのセミコンサートグランドピアノ。このブースはフロアより一段高い位置にありますが、ガラス面が大きく、ドラマー・ベーシストとのアイコンタクトが取れるようになっています。

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10.音決め
10.音決め

各パートのマイクセッティングも一通り終え、個々の楽器の音を決めていきます。鎌田氏の経験に裏付けられた音作りは、迷うことなく素早く行われ、あっと言う間に気持ちの良い生鳴りをコントロールルームに響かせます。

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11.使われたマイクたち…
11.使われたマイクたち…
11.使われたマイクたち…
11.使われたマイクたち…

コントロールルームから見るドラムのマイク群。右の奥にピアノブースが少し見えますね!ドラムの正面にウッドベース用のブース(ここでは見えませんが・・・・)があります。

今回のピアノには「ノイマンU-87i」を3本。楽曲・フレーズなどによって、マイクの種類・本数などのアレンジは変わります!

ウッドベースには「ノイマンM-49C」と「ノイマンKM-56Tube」を使用。M-49で全体のサウンド感をとらえ、KM-56でアタックを補う狙いがあるようです。

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12.改めて原曲の確認
12.改めて原曲の確認

いよいよ録音に向け、改めて原曲を全員で試聴。元となる譜面の進行やセクション呼称(IntroやA、B、Interとか)など、これからの作業上の共通言語となる部分も最終確認します。

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13.アレンジ打ち合わせ
13.アレンジ打ち合わせ

今回のバンマス江草氏を中心に、アプローチや決め(指定フレーズ)などの打ち合わせ。また、事前の打ち合わせでトライすることが決まっていた「エンディング」のアレンジ2パターンに関しても、入念に話し込みました。

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14.そして録音が始まります
14.そして録音が始まります
14.そして録音が始まります
14.そして録音が始まります
14.そして録音が始まります

4月30日の結果発表から2ヶ月。度重なる打ち合わせと事前作業(プロツールスへのデータ取り込みなど)を経て、いよいよ録音が始まります。

既に鎌田氏・中澤氏により、オリジナルデータのテンポに合わせ、細かい揺れに合わせたクリック作成(中澤氏のテキスト参照)が完了しています。そのデータを走らせ(オリジナルのボーカル・コーラス・トロンボーン・シンセトラックはそのまま使用)ながら、各ミュージシャンが演奏を始めます。

鎌田氏によってコントロールされた各楽器の音量も、絶妙なバランスでモニターから響きます。

そしてさすがは一流のミュージシャン!一回目の合わせにもかかわらず、楽曲の持つ独特の世界観を再現しながら、各人の音に反応しての素晴らしいプレイ。

コントロールルームで聴いていたpesmiさんも、思わず涙ぐんでしまう演奏です。

その瞬間、この空間に居る関係者全員が、今回のリプロダクションの成功を確信したことは間違いありません。

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15.プレイバック
15.プレイバック

エンディング2パターン分の録音を終え、一同コントロールルームでプレイバック。本番に向け、皆さん譜面を見つめながら真剣に今のプレイを聞いています!

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16.エンディング決定
16.エンディング決定

エンディングの方向性が決定。更に細かいアプローチの詰め(繰り返し回数や、音数など)も実際に演奏してもらい判断しました。いよいよ本番へと向かいます!

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17.録音本番
17.録音本番

スタジオ・コントロールルームともに、ピリッと緊張した空気の中、録音がスタート。更に演奏が良くなっています!

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18.最後の詰め
18.最後の詰め

ベーシックトラックは一発OK!新エンディングでの楽曲を通して聴き、最後のアレンジの詰めを行いました。事前打ち合わせ時から検討材料のひとつとして挙がっていた、2コーラス目Aパターンのアプローチを変更。原曲とかなり違った素敵な仕上がりになっています。

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19.オルガンダビング
19.オルガンダビング

サビやインターなど随所にオルガンを足していきます。そのアプローチは、サビでの盛り上げは勿論のこと、ホーンセクションの厚みからトロンボーンソロを引き立てる効果まで、プロの技が冴えます。

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20.録音終了
20.録音終了

オルガンダビングも完了。録音作業は全て無事終了となりました。オルガンのアプローチはpesmiさんも考えていたとのこと。方向性が合致していることを改めて感じ、とても満足気なご様子です!

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21.ミックスダウン
21.ミックスダウン

ここからは鎌田氏の独壇場がしばらく続きます。独特な楽曲の世界観に、鎌田氏ならではの奥行きと広がりがあっという間に加えられていきます。

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22.デジレコ取材
25.デジレコ取材

ミックスの合間にデジタル系のフリーペーパー「デジレコ」の取材を受けるpesmiさん。当日の模様は8月配本の「DiGiRECO Vol.99」にて掲載されています。

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23.レクチャー
23.レクチャー
23.レクチャー

ここからは更にリプロダクションならでは、エンジニア中澤氏直々に現在行われている作業工程の解説です。「何を何のためにやって、どんな効果が出るか」、そんな普段では目の当たりにする事のできないプロの作業現場を実況しています!

pesmiさんもメモ片手に積極的に質問を重ねます。中澤氏の適切な説明から、今後の作業へのヒントがたくさん掴めたようです・・・

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24.より良い作品にするため・・・
24.より良い作品にするため・・・

オリジナルverにあったイントロの仕掛けをはどう扱うか?新たなアレンジが効果的に作用するアプローチについて、様々な視点からディスカッションが行われます。共同作業ならではの醍醐味です!

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25.場所を換えて
25.場所を換えて

ミックスも終盤。pesmiさんがミキサー席に移動。一回ヤマハNS-10Mで聴いたあと、更にラジカセで聴き細部の確認をしています。

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26.メモ
26.メモ

気になった部分はすかさずメモに取り、最終確認作業に備えます。それにしても分厚いメモです。pesmiさんの気合いが感じられます!!!

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27.修正
27.修正

各人が気になった箇所を再度確認~修正~確認を繰り返し、最良のアプローチを探っていきます。わずかな変化で、曲の印象を大きく左右することもある大事な大事な作業です。

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28.最終確認
28.最終確認

すべての調整作業を終え、いよいよ最後の試聴です。どこかしら、作業が終わってしまうことが悲しいと言う雰囲気が伝わってきます?

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29.お疲れ様でした
29.お疲れ様でした

13時から始まった録音作業。その全てが終わった時には22時を廻っていました。皆さんお疲れ様でした!
最後にエンジニア両名と記念撮影。Pesmiさんの表情から満足感と安堵感が伺えます。さぁ、作品はどう生まれ変わったのか?

元の音源を再生する
リプロダクション後の音源を再生する
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リプロダクションを終えて pesmi pesmi

リプロダクションに参加して下さった皆様 極めて貴重な経験をさせていただき心より感謝申し上げます。リプロダクション日のみならず当日に至るまでの約2ヶ月間の打ち合わせも含め、本当にお世話になりました!!

アマチュア界で、気ままに好きなことをさせていただいていてる性分、正直に申し上げますと「プロの現場はきっと心が着いていけない…」という不安からスタートしたのですが、当日に向けての打ち合わせが進むうちに「リプロダクション」の意味もなんとなくわかってきて、(もちろん不安もありましたが)期待もあらわれてきました。

当日になり、プロのスタジオに足を踏み入れその規模の大きさは「神の創造物」とも言える想像を絶するものであったし、プロの皆様が行っている作業全てが、想像をはるかに越えていました。変な話、人間世界とは思えませんでした。
でもこれらは紛れも無く、長い年月を経て人間たちが作った機材であり、方法であるのですから驚きです。

機材に関して言うと、「より機能が多く、より効率の良い機材を使用する」に越したことはないのですが、いくらその機材の使い方を隅々まで知り尽くしていても、それはきっと「使いこなしている」とは言い切れないと感じました。
「この音をまずどう聴かせたいか」→「その為には、どこでどの機能をどのようにどれくらい使うのか」を探し出せるかどうかが一番大事で、それは現在の私の古い機材環境でも同じ事が言えるのだと教えていただき、私にとってすごく希望を持てる言葉でありました。
それは楽器にも言えることですし、音楽に関わらず あらゆる道具全てに関して言えることなんでしょうね。

こちらではほんの一部を挙げさせてもらいますが、例えばディエッサー機能が無くてもフェーダーで対処できる事とか、コンプレッサーは調整次第で音質を保てる事などでした。

スタジオの各ポジションに着くプロの方々はその「神の創造物」を自在に操るのですから、心や脳・耳や眼・指先をはじめ、身体のあらゆるパーツが「神」そのものだと言えます。
聴いていて「心地良いか」という判断をする時に、聴く人の境遇をどこまで掘り下げて・枝分けして考えてから、一番良いと思われる平均値を出すのかという 事。…はじめて聴く人、10回目の人、100回目の人、ヘッドフォンの人、小さなスピーカーの人、大きなスピーカーの人、大音量の人、小音量の人 それらすべてを想定して、プロの方々は音楽を作られていらっしゃったのです。
そうすると場合によっては「足した方が良いもの」もあれば「削った方が良いもの」も出てくるわけです。

何千本 何万本ものアンテナをお持ちのプロの皆様を前に、やはり「プロには叶わない」という思いが強く残りましたが、この日に私の頭から新しいアンテナが少なくとも、ニョキっと1本芽を出してくれたような気がしました。

エンジニアの皆様、プレイヤーの皆様全てに言えることなんですが、全くの初対面だったのに居心地が良かったのは、(皆様が気を遣って優しくして下さったのもあるのですが)何よりも、既に私のことをほぼお見通しだったこと。皆様の演奏や編集で、どんどん心が導かれていったというか、良い意味で「素」に近づけたというか。
そんな力までお持ちなのかと思うと、本当に嬉しくも恐ろしくもあります(笑)。

第三者の手によって自分の作品を「具現化」するという意味をなんとなくわかってたつもりで当日を迎えましたが…

今回のリプロダクションを終えて、
「いろんな人にまずそれぞれの解釈をしてもらって、それらを各々の引出しを使って[同じもの]を描いてもらう」という作業が、ここまで素晴らしいものなのかと考えを改めました。同じものを描くのに、紙の種類は増えるわ、絵の具は増えるわ、絵筆も増えて、更には額縁まで…ということだったのですね。ぼやっとしていた絵が、もっと奥行きのある豊かで鮮明な絵になっていくのでした。
それは、自分だけでは絶対に、想像がつかない世界でした。

この経験はいつまでも大切にして、今後もいろんな人と素敵なコミュニケーションをしていけたらなと思います!!!本当ありがとうございました。

最後に、この場をお借りして
島村楽器の皆様、審査員の皆様、その他関係者の皆様 このような名誉ある賞をいただき本当にありがとうございます。
そして、私をとりまく先輩方やお友達や家族やプロ&アマの音楽が、いつも励まし・勇気・刺激をくださっていること、私の背中を押しつづけてくれていることにあらためて気付かされました。
決して、私ひとりだけのものにはしたくありません。
いつも感謝しております。

「pesmi」さんのブログ:pesmi life+

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鎌田岳彦氏によるコメントとメッセージレコーディングエンジニア:鎌田岳彦氏

今回の録れコンで、私の参加は何度目でしょうか!

年々応募の数・種類・音楽的内容も様々で、特に今回は応募数も多く審査は白熱。その中でもグランプリを取ったpesmiさんの「僕はカラス」は、とても個性的な楽曲で構成・アレンジもオリジナリティー溢れる作品。審査会では、録音・アレンジ・唄…いろんな評価が出る中、殆どの審査員が「もう一度聴いてみたい!」と言っていた作品でした。いろいろ残念なポイント(おしい部分)はある物の、あくまでポジティブな部分を評価されて、受賞したと思います。

それらを、踏まえた”リプロダクション”。打合せの段階から様々なアイディア・手法が論議されたわけですが、最終的に今回のミュージシャンでの録音で、大正解でした(実は最初に考えていたのだが二転三転:笑)。

実は今回の”リプロダクション”は、我々プロの仕事での行程と結果的にかなり近い作業となりました。デモテープ→アレンジ打合せ→録音打合せ→本番の録音→Mix→製品(納品)。もっとも、通常は録音・Mixの行程で、もう少し時間が多く掛かりますが。

打ち込み楽器を生のミュージシャンで録りなおした事でかな~!(音楽的な土台な部分なので)作品全体の世界観がより立体的に奥行きが出て、唄・トロンボーンがより絡み合う…シンプルな編成・音数で十分に聴き応えのある作品にブラッシュアップ出来、仕上がりは十分に満足できるレベルの作品になっていると思っています。

現在、録音技術は凄い早さで進歩していて「楽器が出来なくても」「歌が上手じゃなくても」「譜面の読み書きが出来なくても」「録音の技術が無くても」…誰でも比較的簡単にある程度のモノが出来てしまう時代ですね。しかし最終的にその録音物に、どんな音楽・アイディアが…そこには、オリジナリティー・センス・世界観…そしてメッセージが大切になって来ます。印象に残る部分はそんなポイントではないでしょうか!冒頭の「もう一度聴いてみたい!」って思っていたキーワードは、とても大切な感覚だったのでは。

最後に、オリジナルに無かったエンディングなんですが、私的には最初から残念に思っていた部分。良い意味で、今回の楽曲が次のストーリー展開へとイメージさせる…予想以上にすばらしいエンディングになったかと思います。頑張ったpesmiさんへの御褒美ですね!

島村楽器のスタッフ・ミュージシャン・S.Cityのスタッフ・中澤氏そしてpesmiさん大変お疲れ様でした。今回の録れコン・”リプロダクション”は、とても思い出深いものになりました。

レコーディングエンジニア 鎌田 岳彦

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中澤智氏によるコメントとメッセージレコーディングエンジニア:中澤智氏

リプロダクションを行うにあたりまずは「僕はカラス」のデータの吸い上げを行いました。

審査会ではCD(2MIX)の状態ですので、個々のトラックがどんな状態か解りません。開けてびっくりということは実際の現場でもよくある事ですが、コンテストでの現場ではデモ音源ではなく、アーチスト自身の完成された作品の分析を行う事になります。リプロダクションではプロの手により更にブラッシュアップの作業を行う訳ですので、トラックの分析はかなり重要になります。「僕はカラス」の「曲のPR」にあるようにテーマ性が強く感じられ、それを表現するアレンジに「pesmi」さんのセンス良さが細部に感じられました。

そして実際トラックを分析してみると、生への差し替えがベストであろうと、「pesmi」さんと各スタッフの何回かの打ち合わせにより決定しました。江草 啓太氏(ピアノ)、清水 玲(ベース)、植村 昌弘(ドラム)の一流のアーチストの協力のもと今回のリプロダクション実現しました。

ここでデータの吸い上げの作業行程を少しお話したいと思います。「AKAI DPS12」の記録媒体は「jaz」
36.シーケンサー「Roland MC-50 MKⅡ」

まずは「pesmi」さんの録音機材確認です。

MTR「 AKAI DPS12」シーケンサー「Roland MC-50 MKⅡ」です。
これを広島より送って頂き、今回のメインマシーンである「digidesign Pro Tools HD」(現在スタジオのスタンダードMTR)へのデータ変換作業を行います。まず事前に行った事は、マニュアル探しです(笑)(ネットで各メーカのマニュアルがすぐ探せて便利な時代です)

「Roland MC-50」は私の若きころ(約20年前くらいですかね)はプロの現場でもよく見かけました。「AKAI DPS12」(発売は10年ほど前のはずです)はプロスタジオでは使用される機材ではありません。(当時の主流はデジタル48chテープレコーダー「SONY PCM3348」でした)

それとなんと「AKAI DPS12」の記録媒体は「jaz」。「Roland MC-50 MKⅡ」は3.5インチフロッピーディスク2DD。私の手元には全くないものばかりでした。

少し放心状態の後、作業開始です。

*「pesmi」さんより送って頂いたメディアには他の曲も入っているので最新注意が必要でした。「pesmi」さんにとってはとても大切なデータですので。

「 AKAI DPS12」→「 Pro Tools HD」のオーディオデーター移行

幸い「DPS12」には2chのOPTICAL IN/OUTが存在していましたので元のクオリティーのままデーター移行が行う事が出来ます。データは「44.1kHz 16bit」でした。

さてここでデジタル機器を扱うに当たり重要な問題がデジタルロックです。これがロックされてないと、ノイズの原因になります。もちろん「Pro Tools HD」のセッションも「44.1kHz 16bit」を用意します。
*アナログ環境の作業ですとデジタルロックの問題は生じません。どちらを選ぶかは、好みの問題です。

まずは「DPS12」をマスタークロック。「Pro Tools HD」スレーブと考えましたが、うまくロックしません。(ちなみに「DPS12」にはワードクロック端子は有りません)そこで、「 ProTools HD 」をクロックマスターにする為OPTICAL OUTを「DPS12」のOPTICAL INに送りクロックスレーブセットしたら見事ロック。一安心。(実際はこの方がクオリティーは高いでしょう)これで音声回線は構築出来ました。

さて次に実際の流し込み。今度はシンクの問題です。「DPS12」には MTCしか搭載されていませんので、多少の精度は落ちますが(実際の現場ではSMPTEを使用します)、何しろ今回の作品は「DPS12」12ch フル使用で更に2chごとしかアウトが出ないので、何回か回して録音しなければなりません。「MTC」使用がベストと考え「 digidesign SyncI/O」より「 MTC」を「DPS12」に送り「DPS12」でオフセットをかけ問題なくシンクしました。
*現在のMTRはUSBでPCやMacに直接データを移行出来る物も増えてきているのですが、転送速度に時間がかかり、あまり私は使用しません。

「Roland MC-50 MKⅡ」→「3.5インチフロッピーディスク2DD」→「 Pro Tools HD」のMIDI データの移行

一応この段階ではリプロダクションでどのような作業をするか決定しておらず「 MIDIデータ」も起こす必要がありました。さてここで問題が。

「pesmi」さんより頂いた3.5インチフロッピーディスク2DDはもう一杯で、別のディスクをスタジオ中探したが有りませんでした。ここで裏技ですが、 昔SSLで使用していていらなくなった、2HDディスクの書き込み禁止の爪の逆側の穴をテープ等で塞ぐとなんと2DDとして使えるのです。(いけない使い方かもしれませんが・・・。)これで無事移行完了です。
*「Roland MC-50 MKⅡ」に関しましては、サンレコでおなじみの山中剛さん(2006リプロダクションでマニュピレーター参加)にご助言頂きました。ありがとうございました!

「Pro Tools」44.1kHz 16bitのセッションを→48K 24bitに変換

これは、後々ダビングしていく作業の上で音質のクオリティー上げる為です。

「Pro Tools」セッションのテンポマップの制作

テープメディアの時代と違い、テンポマップの使用により、loop素材等を扱うのに便利になるからです。今回の「僕はカラス」はテンポ70で制作されていますが、シーケンサーが古い機材、同期系がすべてフリーランで有る為、クリックをこの地点で作成しましたが「Pro Tools」のセッションとはどうしてもずれます。テンポを自動で検出する方法も有りますが、今回は、鎌田氏の提案により「Pro Tools」上では69.97bpmで近似値がとれましたのでこれを使用しました。
*テンポは機器をインターナルで動作させる場合は設定にもよりますが、内部クロックの誤差により多少テンポが変わってきます。ただ最近のコンピュータベースのシーケンサーはほぼ互換性がとれます。

以上、少し難しく、退屈な話だったかもしれませんが、各クリエーター、エンジニアが同じ機材を使っているとは限りませんので、データのやり取りは、注意が必要です。昨年や2007の私のリプロダクションレポートも参考にして頂けると幸いです。

データの検証

音色等には問題が感じませんでした。
トロンボーンは良いですねー。
ドラムがモノなので、もう少しステレオ感が欲しく感じました。
Voのレンジが少し狭いですね。
*マイクを変えれば良くなりそうですが今回はオリジナルを使用。
サイズの問題。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
数回のミーティングが行われ生リズムで行う事に決定しました。

リプロダクションを終えて

今回も審査会から参加させて頂きましたが、機材の進歩により打ち込みも生と間違える音色、打ち込み技術のよりすばらし作品がたくさん有りました。

今回のリプロダクションではほぼ生楽器の差し替えという事でした(「pesmi」さんの希望でもありました)が、オリジナル、リプロダクション共にすばらしい作品に仕上がっていると思います。

実際「pesmi」さんは当日ミュージシャン、スタッフとの初対面。
エンジニアの鎌田氏、ミュージシャンの方々、事務局小久保氏との対話の中から「pesmi」さんの世界感をリスペクトしつつ、各人が持っているこの瞬間だけの音楽表現生み出す。二度と同じグルーブがないからこそ、生の面白さがあるのではないかと思います。今回は生が持っているすばらしさを私も改めて感じたリプロダクションでした。

(「pesmi」さんのブログ「pesmi life+」に録れコンのレポートがあります。楽しいですよ。是非ご覧ください。)

マイクを使う録音は難しいですが、来年の録れコンにはより多くの生のセッションを期待します。しかし録れコン、楽曲が良くても録音が悪いと通りませんよ。きびしですよ!

また一年後の皆さんの作品に期待します。

レコーディングエンジニア 中澤 智

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