ギターの鳴り方考察 ~其の四~

これまでギターの「鳴り」について考察してきました。それらを踏まえて、今回はいよいよS7Gの「鳴り」についてしっかり解説します。

■ボディ

〇ボディ材

Standard、Standard+モデルは、スルーネックの場合ノーザンアッシュ・ウィング。ボルトオンなら2pc ノーザン・アッシュを採用しています。


其の二でも記述した通り、ノーザンアッシュは気乾比重が大きい材のため、ボディの質量ががあります。そのため、弦振動を逃がしづらい構造です。


Specialモデルの場合、TOPにバックアイ・バールやポプラ・バール等柔らかい木材を張る事も多いです。


そんな場合でも、ボディバックにノーザン・アッシュを採用する事でボディの質量を保持します。

このことによって、弦の振動はボディに逃げにくくなり、サスティンやアタックの強さに反映してきます。

※過去のSpecialモデルの中には、あえてマホガニーを採用して、アッシュとは別傾向のサウンドを狙ったモデルもありました。

〇塗装

S7Gでは「ポリウレタン塗料」を「ステイン」しています。


どういうことかというと、木地に直接塗料を塗りこんで着色しているという事です。


JS6やJS7、JS7Fでは「マット塗装」を採用していますが、これはまずアッシュの木目に「目止め」と呼ばれる処理をしてボディを平らにし、塗料をスプレー等で吹き付けています。グロス塗装であっても同様のやり方ですね。

この塗装方法による違いも、振動や倍音に影響を及ぼします。イメージ的には、スプレー吹き付けの方が音がまとまって聞こえる傾向があります。ステイン塗装の方がトレブリーで暴れ感じの音になります。

※塗料にも重さがあるので、全く同じ木材、塗料以外も全く同じ条件下であれば、マット塗装の方が塗装の厚みが出るため、質量が上がって弦振動は強くなります。しかし上記の通り倍音構成も変わりますので、音質的にどちらが好みか、というところも選ぶポイントになります。

ネック

〇フラットDシェイプ

S7Gは、フラットDシェイプのネックを採用しています。


この画像が分かりやすいかもしれません。

極端にういうと、「角材」の様なネックシェイプです。

これは、クラシックグリップで弾く事の多い7弦ギターにおいて、どのポジションでもお親指の位置や弾き心地を同じ感覚にするために採用しています。

〇Dならではの効能

フラットDシェイプはその演奏性のために採用されましたが、Dであるがゆえに効能も生まれています。


この2つの画像は、上がフラットD、下がCシェイプのネック断面です。(※手書きで作った画像なので、多少線が揺れていますが、あくまでイメージという事でご容赦ください)
この二つを重ねてみます。

Cシェイプにするためには、角材から角を削って成形していきます。削るという事は、もちろん質量を減らすという事です。この画像青い部分はCシェイプにするうえで数られる部分ですね。

故に、通常のCやVの「握りやすさ」を捨て、クラシックシェイプでの演奏性の高さと共に「ネックの質量」がS7Gの優位性というわけです。

○ネック素材構成


S7GのStandard、Standard+モデルは5pcネックです。メイプル + ウォルナット + メイプル + ウォルナット + メイプルで構成されています。
※スルーネックの場合は7pc (メイプル+メイプル+ウォルナット+メイプル+ウォルナット+メイプル+メイプル)です。

ここで気乾比重と共に「強度」を入れ込んだ表を見てみましょう。

木材 気乾比重 強度
エボニー 1.16 6
ローズウッド(インディアン・ローズ) 1.04 6
ウェンンジ 0.79~0.88 6
メイプル 0.7 5
アッシュ(ノーザン・アッシュ) 0.69 5
 マホガニー  0.65 5
ウォルナット 0.64 5

ネックによく使われる材はメイプルとマホガニーです。メイプルもマホガニーも1ピースネックというものがありますが、強度を増す事を優先するためには何枚か木材を重ねた方が良いです。反りにも強くなります。

そこでメイプル5ピース、という選択肢もありますが、サウンド的に合うという事で、S7Gはウェンジを挟み込んだ5ピースネックを採用しています。

指板

〇指板材

指板の材質は音の立ち上がり等にシビアに影響してきます。一般的には上記気乾比重/強度表の中でもTOPに位置しているエボニー、ローズウッド、メイプルが使用されます。

S7Gでは、一部のSpecial Modelを除いてエボニーを採用しています。


気乾比重、強度面でTOPのエボニーですから、硬質です。それゆえに音の立ち上がりも素早く、エッジの立ったサウンドになります。7弦の低いチューニングの音でもクリアに鳴ってくれるのはここにも理由があります。

ちなみにエボニーというと、上の画像の様な真っ黒な木材を連想される方が多いと思います。(真っ黒なエボニーを「本黒檀」と呼びます)


しかし、S7Gで採用しているのはこういった縞模様のある「縞黒檀」(マッカーサー・エボニー)。本黒檀は木の中心部の材。こういった縞は中心からずれた場所に発生します。この縞の美しさから、S7Gの指板は縞黒檀を基本としています。

気乾比重、強度に大きな差はありません。

上記の本黒檀指板S7G CobraはSpecial Modelでワンオフモデルの為、あえて本黒檀を採用しました。

〇厚み

▼▼▼HISTORY指板厚画像▼▼▼

メイプルネック + ローズウッド指板等、多くのギターでは指板をネックに貼っています。貼っている指板材の厚みは、3.5mmから5.5mmが一般的です。

 

▼▼▼S7G指板厚画像▼▼▼

S7GはUSAもJSも「7.5mm」の指板厚が基本です。

 

▼▼▼比較画像▼▼▼

比べるとこれくらい違います。気乾比重表の中でもTOPに位置するエボニー材がこれだけの厚みで使用されているのですから、ネック全体の質量が上がるのは当然。硬質な材であるために硬質なサウンドと、素早い音の立ち上がり(アタック)になります。これもS7GがS7Gたる所以であると言えます。

パーツ

〇ブリッジ


S7Gでは基本的にトレモロシステムを搭載していません。Standardモデルを始め、多くのモデルにHIPSHOTのFixed Bridgeを採用しています。

このFixed Bridge、モダンメタルなギターに多く搭載されていますが、何が良いのでしょうか?


実はこのブリッジ、「弦振動をロスしにくい構造」なのです。サドルが7弦なら7個、6弦なら6個、ブリッジプレートに乗っているのは当然ですが、ブリッジの左右がせり上がっている事により、サドルが横にブレたりしない構造です。これによって、弦振動を受け止めたサドルが変にバタバタ暴れたりしません。
さらにブリッジプレートもしっかりボディに固定できるので、ブリッジ全体で弦振動を受け止めてくれるのです。

この構造によって弦のパワーは弦に維持される事になり、必然的にパワーのあるサウンドになるのです。

〇ピックアップ

ここまで、弦振動に関する言及がメインでしたが、ピックアップについても触れておきましょう。


S7GのStandardモデルで採用しているピックアップは、Seymour DuncanのSentientとNazgûl。

  • 焼けつくようなハイ
  • 抑えられたミッド
  • タイトなベース

とDuncan公式サイトにも記載されている様に、モダン・メタルには欠かせないサウンドを生み出してくれるピックアップのコンビネーション。S7Gのクリアでタイト、そしてパワフルなサウンドを出力してくれるピックアップとして、この上ないコンビネーションと言えます。


マルチスケールのStandard+モデルには、LundgrenのM7 Slantedピックアップを搭載。元はFredrik Thordendahl (Meshuggah) のために製作されたこのM7。Lundgrenサイトの記載にはこうあります。

  • 大きな出力
  • 重厚なベース

マルチスケールとなったことで1弦~6弦のテンションは通常の7弦Standardモデルに比べて落ちるため、サウンドも変わります。それに対応してセレクトされたのがこのM7です。本体M7はストレートタイプのみのラインナップですが、S7Gのためにスランテッドモデルが製作されました。

〇ペグ

直接的に、大きくサウンドに影響があるパーツではありませんが、チューニングにおける重要なファクターであるペグにも触れておきます。


S7Gの標準搭載ペグはSperzelでした。ロッキングペグのチューニング精度や、S7Gが掲げるMade in USAにも則しているため、セレクトされたペグです。(なんとSperzel社はS7Gと同じオハイオ州にあるらしいですよ!)


最近は、HIPSHOTのGrip-Lock™ペグも採用し始めました。ブリッジの精度が高いHIPSHOTですが、それはブリッジだけでなくその他パーツにも言える事です。特にペグはロックできるタイプで、しっかりチューニング出来るので、スペック変更しています。
2018年11月以降入荷のモデルにはHIPSHOT Grip-Lock™ペグが搭載されています。

まとめ

2015年5月に敢行したJim Lewisのインタビューでは、フラットDシェイプの演奏性の高さと共に、「鳴り」について言及しています。そこでは英語の日本語訳ですので、単純に「鳴り」と表現していますが、「弦鳴り」であるという事を、ここで理解して頂けたかと思います。

と今回で、S7Gの利点、有益なポイントをお伝えしたつもりです。しかしその反面、デメリットもあります。

  • 重い → ライブで使う際大変
  • ネックが分厚い → 慣れないとなかなか弾きこなせない
  • 特異性 → つきつめたサウンドのため、マルチプライヤーには向かない

その他、好みの観点で言えばたくさん挙がるかもしれません。上記の通り「つきつめたスペック、仕様」であるため、強力なメリットの反面、デメリットも目立ちがちだと思います。


それでもこのサウンドとルックスは唯一無二です! ハマったら抜け出せない魅力を持つS7G – Strictly 7 Guitars – を一度試してみて下さい。病みつきになる方が増えています。

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