これを観ると楽器をやりたくなる!音楽映画5選(邦画編)

目次

『さよならくちびる』

© 2019「さよならくちびる」製作委員会
【公式】『さよならくちびる』本予告

主題歌を秦基博さんが、挿入歌『誰にだって訳がある』『たちまち嵐』をあいみょんさんが提供したことでも話題となった映画『さよならくちびる』。女性デュオ「ハルレオ」とツアーサポートの付き人との、ゆらゆらと揺れ動く人間関係を描いたロードムービーです。
ハル役は門脇麦さん、レオ役は小松菜奈さん、付き人のシマ役は成田凌さん。アコースティックギターの音色と、主演2人の澄んだ歌声がいつまでも耳に残る、そんな切ない青春映画となっています。

「ハルレオ」誕生のキッカケは、無気力で欲望のままに生きているレオをバイト先で見かけたハルが、「私と音楽をやらない?」と声を掛けたこと。
まったくの素人のレオでしたが、誘いを受けて「ハルレオ」が誕生します。やがて、メッセージ性の強いハルの楽曲と、レオの情感あふれる歌声が魅力となり、同世代の女性を中心に人気に。
しかし、2人は解散を決め、最後のツアーに出発します。「ハルレオ」はどうして解散しなければいけないのか?同行する付き人のシマの秘密も重なって、ツアーが進むにつれて3人の秘めた思いが明らかになっていきます。

見どころはなんといっても、ハル役の門脇麦さん、レオ役の小松菜奈さんの2人がこの映画のためにアコースティックギターを猛特訓して、自ら弾いているライブシーンです。劇中で挿入歌『誰にだって訳がある』が何度か歌われますが、2人の声質がぴったり重なって、そのハーモニーに聴き入ってしまいます。
アコースティックギターに乗せて自分たちの思いを表現することで、どんどん世界を広げていった「ハルレオ」。普段は口に出せない思いも、メロディーに乗せることで言葉にできることを「ハルレオ」は教えてくれます。映画を観終わる頃には、「あ〜、私もアコギを弾けるようになりたい」ときっと思うはず。ちなみに、映画の中では難しいギターテクニックはほとんど出てきません。ぜひ、あなたもアコギデビューしてみては?

「ハルレオ」がライブ衣装として着ているのが「つなぎ」。「ハルレオ」のイメージを象徴するファッションで、映画の中ではファンもつなぎを着ています。つなぎといえば、ひと昔前までは作業着のイメージがありましたが、今ではおしゃれなファッションアイテムの一つとなりました。楽曲だけでなく、飾り気のないナチュラルな2人の着こなしも、「カバー」したくなりそうです。

『さよならくちびる』
ブルーレイ:¥4,800+税
DVD:¥3,800+税
発売元:ギャガ
© 2019「さよならくちびる」製作委員会
※2021年4月の情報です。

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

©押見修造/太田出版©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会
映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』予告編

人前では自分の名前すら言えない吃音が悩みの大島志乃(南沙良)、教室の窓から外ばかり眺めている岡崎加代(蒔田彩珠)。高校に入学し同じクラスになった2人ですが、学校に馴染めず孤立した日々を送っていました。ところが、ある出来事がきっかけで友達になります。やがて、ミュージシャンを目指す加代に誘われ、バンドを結成したことで2人の生活は一変します。音楽でつながり、傷つき、絆を深めていく2人の半年間を描いた、押見修造さんの同名コミックが原作の「音楽×青春」ムービーです。

加代の家を訪れた志乃は、部屋に山ほど積まれたCDやアコースティックギターがあることに驚きます。加代は子どもの時からミュージシャンを目指し、ギターの弾き語りに夢中なのですが、なんと音痴!。2人で行ったカラオケで志乃の歌声に魅了された加代は、志乃をボーカルにしたバンドの結成をもち掛けます。
2人は秋の文化祭のステージに立つことを目標に練習をはじめ、夏休みに路上ライブでの「特訓」を決行。
そんな時、志乃の吃音を笑いものにした男子が現れ、強引にバンドのメンバーに加わってしまいます。急速にバンドから心が離れていく志乃。果たしてバンドと2人の友情はどうなるのでしょうか?

原作となったコミックは、作者の押見修造さんが中学生のときに吃音になった経験が題材となっているのだとか。思春期のモヤモヤした気持ちが、吃音の伝えたいことを伝えられないもどかしさと一緒になって、見事に表現されています。
加代をアフレコなしで演じるためにギターを猛特訓したという蒔田彩珠さんと志乃を演じる南沙良さんの「号泣シーン」など、10代とは思えない2人の熱演も見どころです。
加代の覚えたてのようなぎこちない弾き方や、最初は調子を外していたギターの音色がだんだん力強い音に変化していく様子など、細部にもこだわった演出がされています。音楽によって仲間ができ、毎日が変わっていく。そんなキラキラした瞬間を体験できるのが、楽器演奏の素晴らしいところ。ぜひ、あなたも楽器を始めてみてはいかがでしょうか?

この作品の舞台は1990年代前半。2人のバンド「しのかよ」も、90年代に活躍した日本のバンド、ザ・ブルーハーツやミッシェル・ガン・エレファントの曲をカバーしています。
今また日本の80〜90年代の音楽が見直され、若いアーティストがカバーしたり、当時のファッションを取り入れたりしています。ザ・ブルーハーツの楽曲はよくCMソングに使われているので、曲名は知らなくてもメロディーは耳に残っている人は多いかも。他にも、加代の部屋には90年代の洋楽人気バンド、オアシスやニルヴァーナのCDも!90年代の音楽へのオマージュを感じる映画です。

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
DVD&ブルーレイ発売・レンタル中                                                   ブルーレイ:¥4,800+税
DVD:¥3,900+税                    
発売元:ハピネット・メディアマーケティング
©押見修造/太田出版©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会
※2021年4月の情報です。

『坂道のアポロン』

「坂道のアポロン」予告編

1960年代の長崎県佐世保市が物語の舞台。家庭の事情で、横須賀から佐世保の伯母のもとへ引き取られた西見薫(知念侑李)は、家でも転校先の学校でも居場所がなく、ピアノを弾くことだけが心の支えの高校生でした。薫を気にかけるクラス委員の迎律子(小松菜奈)と、律子の幼馴染みで不良の川渕千太郎(中川大志)。その2人と出会ったことから、薫はジャズの洗礼を受け、その世界に夢中になっていきます。恋と友情、そしてジャズの名曲があふれる、アニメ化もされた小玉ユキさんの同名コミックが原作です。

ある日の下校時、律子は薫を自宅へ連れて帰ります。そこは律子の父親(中村梅雀)が営むレコードショップで、地下にはジャズを演奏するためのスタジオまでありました。薫がそこで見たのは、ジャズドラムを叩く千太郎。ジャズについて詳しくないことを千太郎に馬鹿にされた薫は、即座にレコードを買い、自宅のピアノで必死に耳コピをします。
ジャズ独特のリズムや和音に衝撃を受け、虜になっていく薫。千太郎ともセッションを行うようになりますが、律子との三角関係や東京から佐世保にきた美人女子大生の登場で、千太郎との関係はギクシャク。そんな中、千太郎が突然、佐世保からいなくなってしまいます……。

ジャズといえば、即興演奏によるセッションが最大の魅力です。この映画でもセッションシーンが大きな見どころになっています。
レコードショップの地下室で、律子の父親がウッドベースを、千太郎が尊敬する先輩・桂木淳一(ディーン・フジオカ)がトランペットを、そして薫がピアノを弾き始め、そこに千太郎のドラムが乗っていく。楽器を通して会話をしているようなセッションは「超カッコいい!」の一言です。
薫役の知念侑李さんはピアノ、千太郎役の中川大志さんはドラムを撮影の数ヶ月前から猛特訓していたそうですが、学園祭の2人のセッションシーンはジャズミュージシャン顔負けの迫力。ジャズは聴くだけではなく、演奏した方がもっと楽しいと感じさせてくれます。さあ、あなたもピアノやドラムを始めて、魅惑のセッションの世界に飛び込んでみたら? 

三木孝浩監督は、『青空エール』のほか、『ソラニン』など音楽をテーマにした作品を多く手掛けています。数多くのミュージックビデオを制作してきた実績があり、『坂道のアポロン』でも、ジャズセッション特有の演奏の仕方や緊張感が画面から見事に伝わってきて、この映画の大きな魅力となっています。

『坂道のアポロン 通常版』
DVD:¥3,800+税
発売元:アスミック・エース/小学館
販売元:東宝
©2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 ©2008 小玉ユキ/小学館
※2021年4月の情報です。

『青空エール』

whiteeeen – 「キセキ~未来へ~」MV映画『青空エール』ver.

青い空に突き抜けるように響くブラスバンドの演奏。彼らが奏でる応援曲は高校球児に力を与え、そして応援する観客の心をも熱く鼓舞してくれます。高校野球を観ていると「音楽は人々に勇気を与える」ということを改めて感じます。
河原和音さんの人気コミック『青空エール』を映画化したこの作品は、野球と吹奏楽部の強豪校を舞台に、トランペット初心者の主人公が魅力的な友人との出会いによって成長していくストーリー。恋と部活と友情という、青春のすべてを詰めこんだ作品となっています。

小学生の時、テレビで観た甲子園の吹奏楽部の演奏に感動し、憧れの高校に入学した小野つばさ(土屋太鳳)。同じクラスの山田大介(竹内涼真)も野球部で甲子園を目指すために、この高校に入学していました。
野球部と吹奏楽部、部活動は違っても、2人は「甲子園出場」と「全国大会出場」という夢に向かって努力を続けます。しかし、現実は厳しく、つばさと大介は何度も挫けそうに。それでも仲間たちに支えられ、真っ直ぐに進んでいく2人。果たして2人の夢は叶うのか? エンドロールまで目が離せない青春映画の傑作です。

映画に登場する吹奏楽部のシーンは、吹奏学部なら「あるある」の連続です。足を挙げながらトランペットを吹く練習や、定期演奏会の様子、緊迫するコンクール結果発表の瞬間など、吹奏楽部でのリアルなシーンがてんこ盛りです。
全国大会を目指すあまり部員同士がぶつかり合ったり、泣きながら仲直りする場面はまさに青春。今は解体されてしまって現存していない吹奏楽の聖地「普門館」がセリフに出てきて、胸が熱くなる人もいるかも。大介役の竹内涼真さんはスポーツ万能で、高校球児のキャッチャー役を見事に熱演。内気で小柄なつばさと大らかで優しい大介の身長差が非常に大きく、それも胸キュンポイントになっています。

吹奏楽の応援曲は「美爆音」という言葉が生まれるほど、震えるほどの感動を与えてくれます。木管楽器や金管楽器、打楽器など多くの楽器で構成され、奏でられる吹奏楽。地域のオーケストラや吹奏楽団なども数多く存在しますので、大人になってから楽器を初めても、仲間と一緒に演奏する楽しさを味わえます。吹奏楽の音と音が響き合う醍醐味をぜひ体験してほしいです。

『青空エール 通常版』
DVD:¥3,500+税
発売元:集英社/博報堂DYミュージック&ピクチャーズ
販売元:東宝
©2016 映画「青空エール」製作委員会 ©河原和音/集英社
※2021年4月の情報です。

『蜜蜂と遠雷』

映画『蜜蜂と遠雷』予告

文字だけで、まるで演奏者の心の中を見ているような見事な心象風景を描きだし、映像化は不可能と言われた小説『蜜蜂と遠雷』。実写化に挑んだのは新進気鋭の監督・石川慶さん。キャストは松岡茉優さん、松坂桃李さんという若手実力派に加え、スピルバーク作品に出演して話題となった森崎ウィンさん、オーディションで抜擢された新人・鈴鹿央士さんという、未知数の組み合わせ。そこに国際的に活躍するピアニストらと作曲家が集結して生まれたのが、この『蜜蜂と遠雷』です。

天才少女と呼ばれていた栄伝亜夜(松岡茉優)は母親の死以後、表舞台から姿を消していました。それから7年、コンクールに戻ってきた彼女は幼馴染みのマーくんこと、コンクールの大本命、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)と再会します。コンクールには他にも、楽器店で働きながら年齢制限ギリギリで出場した高島明石(松坂桃李)、著名なピアニストの遺言としてコンクールの送り込まれた謎の天才少年・風間塵(鈴鹿央士)が出場。4人の出場者は互いの演奏に刺激を受けながら成長し、新たな境地を見出していきます。

見どころはなんといっても、主要4キャストの演奏として、日本を代表するピアニスト4人による演奏が聴けること。栄伝亜夜=河村尚子、高島明石=福間洸太朗、マサル=金子三勇士、風間塵=藤田真央と、役柄そのものの音色を見事に再現されていて、役柄と実際のピアニストの姿がシンクロします。
ハイライトはコンクール2次予選、課題曲の「春と修羅」の演奏シーン。特にカデンツァ(即興演奏で自身の音楽性をアピールするパート)は、それぞれの個性がぶつかり合って圧巻です。
作曲家の藤倉大さんは架空の曲「春と修羅」を、原作の表現をそのまま忠実に音楽として再現したのだそう。
4人の演奏を聴き比べると、クラシック音楽の表現の豊かさに触れることができますが、聴くだけでなく、ぜひ、ピアノという偉大な楽器に実際に触れ、音楽の奥深い世界をあなたも感じてみませんか?

映画の中で絶妙なアクセントとなっているのが、コンクールを支える人々の姿。ステージマネージャー、調律師、クローク係など、ホール内のスタッフの様子も丁寧に描かれています。天才達の華々しい演奏だけでなく、ピアニストとスタッフとの温かい交流が描かれていることもこの作品の魅力の一つ。ピアノの美しい音色は多くの人たちの手で生み出されていることも教えてくれます。

『蜜蜂と遠雷 通常版 』 
ブルーレイ:¥4,800+税
DVD:¥3,800+税
発売・販売元:東宝
©2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

この記事を書いた人

ホシナ

ホシナ

毎日愛猫に邪魔されながら、ネットラジオで洋楽を聴くのが好きなライター。楽器ができないので、演奏できる人を尊敬しています。好きなジャンルは洋楽ロックから三味線の邦楽まで。実はちょこっと日本舞踊も踊れます。夢は野外フェスデビュー。誰か一緒に行ってください〜。