I Love Piano!スペシャルロングインタビュー 後編

クラシックの世界に留まらず様々な曲やシーンでピアノ演奏を表現されてきた大井健氏。
今回大井健氏が2月14日にリリースした初の映像作品『Piano Love The Movie~Music Documentary Film~』についての内容やピアノに対する想いを、2時間以上にも及ぶロングインタビューの中で語っていただいた。

前編で大井健氏がピアニストを目指すきっかけや演奏と創作に対する想いを中心に展開。後編では「これからのピアノの進化」や「ピアノ界をどうやって盛り上げていくか」という未来に向けた話題へ展開していく。

大井健スペシャルロングインタビュー【後編】(1/4)

大井健 インタビュー写真

電子ピアノだからこそできる想像体験

島村楽器スタッフ
昨年河合楽器さんの電子ピアノ『NOVUS NV10』のPVにご出演されましたよね。先ほど(前編)も少しお話し頂きましたが、ピアニストのお立場から最近の電子ピアノの進化はどのように感じられますか?
大井健
クオリティが本当に上がっていますね。面白いのが、弾いていてアコースティックピアノと電子ピアノとの差がわからない不思議な錯覚を感じる瞬間があることです。
島村楽器スタッフ
『NV10』は音も素晴らしいのですが、操作パネルが液晶だったり、グランドピアノを弾いているかのような鍵盤機構になっていたりと最新の技術が余すところなく搭載されているところも魅力の一つですよね。電子ピアノそのものへの印象はいかがでしょうか。
大井
昔のイメージだと、アコースティックピアノには敵わなくて別の楽器という印象だったと思うんです。でも今は正直整備されていないアコースティックピアノより電子ピアノのほうが弾きやすいこともありますし、固定観念は崩されつつあります。特に作曲をする側にとっては、もう電子ピアノのほうが一般的ですね。便利ですし、楽譜の書き出しなど色々な作業もしやすいですから。持ち運びできる機種もありますし、音を消してヘッドホンで練習できたりもしますよ。そういったところも電子ピアノの良さだと思うんです。もちろんピアノ教育という観点ではもしかしたら、アコースティックピアノありきで教える大切さもあるかもしれないですけれど。
島村楽器スタッフ
ピアニストの方にそう言って頂けると嬉しいですよね。やはり今は住宅事情もあって、電子ピアノを使う方も多い現実があるのですが、それだと上達しづらいのかなと考える方もいらっしゃいます。強弱や表現の再現性など、リアルなアコースティックピアノではない物足りなさがあるのではないかと。
大井
そういう側面もありますが、音響という意味では、電子ピアノは自分の好みに音を調整することができますし、もしかしたらそのほうが弾いていて心地良い時もあるかもしれないですよね。理想の音環境を自分でつくることができる。僕は高校時代に電子ピアノで弾いた曲を録音して、それを聴いて楽しんでいたこともありました。ある意味では電子ピアノのほうが音楽に没頭できたりもするんですよ。もしホールで弾いていたら、こんな風に聴こえるのかなとか。そこに一つ想像が入るんですけれど、まるで本当にホールで弾いているかのような体験ができるから気持ちいいですよね。あと、これは個人的な経験なのですが、アコースティックピアノで練習して、更に電子ピアノでも練習すると逆に良くなったりするんですよ。解決すべき問題点がわかることがある。だからこそとても面白いんです。なのであえて、コンサートの前は電子ピアノでも練習します。
大井健 インタビュー写真

音のイメージを楽しんでほしい

島村楽器スタッフ
本日は河合楽器さんと島村楽器のコラボレーション電子ピアノ『CA9800GP』もご試弾頂きました。『NV10』とはまた違って、ホームユースの上位モデルとして多くの方に使って頂きたいというコンセプトのもと開発されたピアノの感触はいかがでしたか?
大井
そうですね、綺麗に弾ける、というのが第一印象です。うまくなったような気持ちになれる。電子ピアノの魅力ですよね。このモデルも『NV10』と同様に操作パネルが液晶になっていますが、四季にまつわる言葉がモチーフになったピアノの音色が入っているのが面白いです。電子ピアノを弾く時に、一番良いのは音色を変えて楽しめることだと思っていて、かつては普通のピアノの音とエレクトリックピアノ、あとはヴィブラフォンやオルガンくらいしか入っていなかったので、だんだん飽きてしまうこともありましたが、これはそういう意味では全く飽きないし、言葉から音をイメージするというのは今までになかった考えで新しいですね。
島村楽器スタッフ
おっしゃる通り、より電子ピアノを楽しんで頂こうとすると音に関する工夫がメインになるんですよね。どのような音色をどんな名前で、どのように入れるか。日本には美しい四季があるので、今回はそこがモチーフになっています。
大井
この、音色名をピアノ以外の言葉にする(※)というのはなかなか無い発想だと思うのですが、何かきっかけがあって考えられたことなのですか?
島村楽器スタッフ
液晶の操作パネルは聴覚以外に視覚を有効に使えるので、音選びがただの作業にならずにもっと楽しんで頂けるようにしたいと考えたのがきっかけでした。ですので、パネルの背景画像も音色名もあえて音楽用語ではないものを使いました。
大井
今までなかったものやできなかったことに注目して生まれたというかなりシステマティックに考えられた結果なんですね。音色がただ沢山あるというだけでは語れないこの機能はとても面白い試みで、実際に触ってみないと体感できないですね。
島村楽器スタッフ
世の中には沢山のピアノの音がありますので、「正しいピアノの音」はどれなのかという探し方ではなくて、お客様ご自身の好きな音、弾きたい音、イメージに合う音を探して頂くきっかけになればと思っています。
大井
僕はこのWinterの中に入っている「Silence」という音色が好きかな。この音で弾きたい曲のイメージが湧いてきます。
島村楽器スタッフ
ありがとうございます!開発冥利に尽きます!

※電子ピアノは「グランドピアノ1」「アップライトピアノ2」「オルガン3」といった音色名でピアノの音や様々な楽器の音が入れられており、操作ボタンを押して音色を選ぶのが一般的