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エキスパート座談会

3人のエキスパートが並ぶ写真

楽器販売や音楽教室のイメージが強い島村楽器ですが、技術職にはどのような働き方があるのでしょうか。
今回は、現在の技術職部門の基盤を築いてきたエキスパートの皆さんに話を伺いました。

  • 浅草橋ギター&リペア店
    /チーフリペアエキスパート

    • 駒木
    • 2002年入社
    • ギタークラフト科 卒

    メーカーでギター製作や講師を経験後、2002年に島村楽器へ入社。自社ブランドの立ち上げや商品開発、海外工場の選定などに携わり、技術職の基盤づくりを推進。『ルシアー駒木』としてDVD制作や書籍出版、SNS発信などを通じて技術の普及にも貢献。

  • シマムラストリングス秋葉原
    /チーフリペアエキスパート

    • 茂木
    • 2003年入社
    • 東京バイオリン製作学校
      /ドイツ・ミュンスター市手工業者組合マイスター学 卒

    国内のバイオリン専門店や製作工房で経験を積んだ後、ドイツへ渡航。現地で10年にわたり研鑽を重ね、バイオリン製作マイスター資格を取得。ハンブルグの老舗バイオリン店で工房長として勤務後、2003年に帰国と同時に入社。部門の設立、買い付け、商品開発、工房運営、専門店展開など幅広く担い、弦楽器ビジネスの発展を牽引。

  • 管リペアセンター
    /チーフリペアエキスパート

    • 横山
    • 2004年入社
    • 法学部/管楽器テクニカルアカデミー 卒

    専門学校卒業後、複数の楽器店を経て、2004年に島村楽器へ入社。店舗での修理業務を経験し、社内リペアセンターの設立に参画。育成を中心に、管楽器リペアの基準づくりや運用整備を担い、社内技術者育成の基盤を築く。

Topic 01

島村楽器への入社から、これまでの仕事

皆さん今回はお集まりいただきありがとうございます。
楽器店として知られる島村楽器ですが、皆さんはなぜ入社を決められたのでしょうか?

茂木 弦楽器リペア

確か駒木さんが入社した頃って、まだ技術職の採用はなかったですよね?

駒木 ギターリペア

そうなんです。私が入社した2002年頃はまだ「技術職」という枠自体がなく、販売スタッフとしての配属でした。前職ではメーカーでギター製作をしていたのですが、修行のし過ぎで手首を痛めてしまって。手術はしたものの、一時は握力がゼロになってしまったんです。リハビリのついでに、「島村楽器で販売をしながら、できる範囲で修理にも関われたらいいか」という軽い気持ちで応募したのがきっかけです。

横山 管楽器リペア

そうだったんですか、入社前の経緯は初めて知りました。入社後はどんな仕事を?

駒木 ギターリペア

販売スタッフとして店頭に立っていましたが、「やっぱり修理をやりたい」という思いが強くなっちゃって。ホームセンターで机を買ってきて、リペアスペースを作って自分から修理も始めていました。もちろん無許可ではなく、店長に相談して設置を認めてもらってですが。(笑)その後、自社ブランド立ち上げのタイミングで、海外の工場選定や検品業務にも関わるように。店舗業務と並行して、毎月のように海外へ行き、製品づくりの現場を見てきました。販売、修理、商品開発など、さまざまな経験をさせてもらいましたね。

茂木 弦楽器リペア

なるほど。「やりたい」の声にちゃんと応えてくれるのが島村楽器らしい。
私は少し経歴が違っていて、入社する前は、10年ほどドイツの工房でヴァイオリン製作と修理修復の修行をしながら働いていました。マイスター資格を取得して、帰国を考えていた時にドイツの新聞で島村楽器の求人を見つけたんです。帰国後の面談で、「弦楽器ビジネスに関する、すべてのレールを敷くのを君に任せたい」と会長に説得されたことが入社の決め手になりました。重要な役割だったので迷いましたが、他社にはない本気度が伝わってきて。すごい会社だなと、圧倒されましたね。(笑)

駒木 ギターリペア

そうそう。技術職の採用って、ギターは“自社ブランドの発足”が起点だったけど、弦楽器、管楽器、ピアノの部門は、“クラシック楽器の本格展開”のために専門的な技術や知識のある人が社内に必要だったことが始まりですよね。いろんな事業が一気に拡大していった感じ。

横山 管楽器リペア

そうでしたね。私も修理学校卒業後は、いくつかの楽器店を経て、島村楽器は3つ目の会社でした。最初はアルバイトとして店舗でリペア業務をしていたのに、急に「育成もしてほしい」と言われて驚きました。それからは、スタッフの育成をしつつ、管リペアセンターの立ち上げから運営、修理基準の確立、評価体制の構築、拠点展開、技術者配置など、組織の基盤づくりに関わってきました。「どうすれば安定した品質を保ちながら、次世代を育てられるか」を考え続けてきた20年でした。

茂木 弦楽器リペア

どの技術部門も、最初は本当にゼロからのスタートでしたね。

ギターリペアのエキスパートが話す様子 弦楽器リペアのエキスパートが話す様子

Topic 02

島村楽器で成長できること

続いて、島村楽器で成長できることや働く魅力について教えてください。

駒木 ギターリペア

島村楽器で働いていて感じるのは、「出る杭は打たれない」どころか、むしろ「引き抜いてくれる会社」だということですね。私は入社前、もっとシステマチックに物事が進む会社だと思っていました。でも実際は違っていて、「これをやりたい」と本気で動けば、それを面白がってくれる人や、力を貸してくれる人がたくさん現れた。そこがすごく大きいと思います。

茂木 弦楽器リペア

島村楽器って、本当にその人の「個性」や「人間性」を重視するんですよね。評価システムも、当然、専門性の向上は前提ですが、それ以上に、その人がどんな思いで仕事に向き合っているのか、どんな姿勢で周囲と関わっているのか、そういった「人として」の部分まで、ちゃんと見えるようにしているんです。

横山 管楽器リペア

そうですね。特に若手は「ちゃんと成長できるのかな」と不安もあると思うので、一人ひとりに合わせた育成のサポート体制があるのは、強みだと思います。管リペアセンターでは、月ごとに技術の習得状況を振り返り、次の目標を確認し合える体制を整えています。スタッフが着実な成長を実感し、やりがいを持って働ける環境づくりに力を入れています。

茂木 弦楽器リペア

あと当社は総合楽器店ですから、お客様の層も幅広いですし、一緒に働くスタッフの専門分野もさまざまです。私自身、お客様対応をはじめ、他部署や店舗、音楽教室といった社内のあらゆる人たちと関わりながら仕事をする中で、技術者としてだけでなく、社会人としても成長させてもらいました。

横山 管楽器リペア

本当にそう思います。会長からまず言われたのは、「営業ができる技術者を育ててほしい」という言葉でした。それは、単に販売を促進するという意味ではありません。いわゆる「技術者」という殻を破り、お客様の話を丁寧に聞き、その真意を汲み取って心から寄り添える。そんな技術者を育ててほしいという願いでした。島村楽器ならではの技術者像ですよね。

駒木 ギターリペア

お客様に喜んでもらえること、社内外のあらゆる人とつながれること、自分のやりたいことに挑戦できること。そういう経験の中で、技術者としても人としても、どんどん視野や可能性を広げていける。それが島村楽器の面白さだと思います。

3人のエキスパートが談笑する様子 管楽器リペアのエキスパートが話す様子

Topic 03

島村楽器のこれからと、応募者に伝えたいこと

最後に、これから島村楽器で目指していきたい目標と応募者へのメッセージをお願いします。

茂木 弦楽器リペア

当社は総合楽器店ですが、ライバルは専門楽器店だと思っています。常に専門店と同じレベル、あるいはそれ以上の技術とサービスを提供できる存在であり続けたいと思っています。また、総合楽器店だからこそ、幅広いプレイヤーに楽器を届けられるメリットもあります。海外との関係もさらに深め、世界の良い楽器や技術を日本に紹介していく役割も担っていきたいですね。

駒木 ギターリペア

そうですね。今は、技術職の人数も増えて、教育体制も整ってきています。だからこそ、今後はさらに専門性を高めながら、島村楽器らしい価値をどうつくっていくかというフェーズに入っていると思います。若い技術者が自分の得意分野を見つけ、挑戦できる環境を保ち続けることが重要だと思うので、私も全力でそのサポートをしていきたいと思っています。

横山 管楽器リペア

私も、特に応募を考えている方にお伝えしたいのは、「最初から完璧でなくて大丈夫」ということです。技術は入社してからいくらでも伸ばしていくことができます。大切なのは、楽器や音楽が好きであること、そしてお客様の役に立ちたいという気持ち。そんな想いを持って、飛び込んできてほしいと思います。お客様から指名された時、細かな説明を交わさずとも「いつもの感じでお任せします」で通じる、そんな深い関係性を築けることこそが、この仕事の醍醐味であり、最大の楽しさです。

茂木 弦楽器リペア

それと、中には「楽器をつくる仕事」と迷われる方もいると思います。リペアの仕事は実に奥深く、お客様に最も適した形で調整し、楽器本来の魅力を引き出せるという、製作とは違う喜びや面白さがあります。仕事に本気で向き合う人にとっては、島村楽器は必ず成長できる環境だと思います。

駒木 ギターリペア

とても分かります。技術職の仕事は作業に没頭しがちになりますが、島村楽器では、さまざまな人と関わりながら、お客様の想いを汲みながら修理し、笑顔の瞬間に立ち会える。楽器を通じて誰かの人生に関わる仕事という喜びを、ぜひ島村楽器で味わってほしいですね。

横山 管楽器リペア

私もそう思います!せっかく仕事をするなら、楽しく働いてもらいたい。評価や実績を上げることも大切ですが、それだけを目的とするのではなく、お客様に喜んでいただくことで指名や紹介の輪が広がっていく。そうして自分の世界を広げ、自信に繋げていけるような方にとって、島村楽器は最高の環境だと思います。

弦楽器リペアのエキスパートが話す様子 3人のエキスパートが談笑する様子

Column

思い出に残るリペア

駒木 ギターリペア

2011年3月。東日本大震災の後、工房には「被災した楽器」が多く届き、その中の最初の一本が忘れられません。一見して津波に飲まれたことが分かるそのギターは、いわゆる入門用のギターで、弾けるようにするにはその楽器が何本も買える金額がかかります。ですが、そのギターには手紙が添えられていました。お手紙を書かれた方の息子さんのものであること、息子さんは津波に飲まれ見つかっていないこと、ギターだけが見つかったこと。だから音が出るようにしてほしい…という想いが綴られていました。楽器の価値は販売価格ではないことを痛感しましたし、自分はこのギターを直すために修理技術を身につけてきたのではないかという気さえしました。それまでもそのつもりではいましたが、その日以降、すべての楽器を持った時に、その先にいる人をより強く思うようになりました。

茂木 弦楽器リペア

以前ベルギーで買い付けしてきた、フランス人製作家によるオールド楽器のコピー・バイオリンの話です。外観は本物の古い楽器のようで買い付け価格も高額でしたが、日本ではどうしても音質が好まれず、長い間在庫として残ってしまっていました。このままでは担当した自分としても申し訳ない思いがあり、思い切って楽器を解体し、内部構造を自分の音質理論に基づいて調整しました。すると、その直後に音質を評価してくださるお客様と出会い、すぐに販売に繋がったのです。その後、製作家本人にも「おめでとう」と連絡することができ、とても感謝されたことを覚えています。楽器は作られた時点で完成するものではなく、技術者の手によってさらに魅力が引き出されることもある。その可能性を強く実感した出来事でした。

横山 管楽器リペア

音大受験を控えた学生さんが、地方からホルンの点検に来られた時のことです。点検してみると、ご本人は気づいておられませんでしたが、ロータリーの動きがヌメヌメとしていて、あまり状態が良くありませんでした。ちょうど退勤時間でしたが、試験直前という事情もあり、その場で調整することにしました。ロータリーの動きがスムーズになると、それまで指が回らなかったフレーズが吹けるようになり、「自分のせいじゃなかったんだ!」と、とても喜んでくださいました。その後、その学生さんは無事に音大に合格し、プロの奏者となり、今ではオーケストラからアンサンブル、ソロまで多方面に活躍するホルン奏者になっています。私にとってはよくある日常作業の一つでしたが、その修理が誰かの大きな転機に繋がることもあるのだと感じた出来事で、今でも印象に残っています。