I Love Guitar! 特別企画
UNCHAINインタビュー 後編

〜京丹後市の少年たちが20年音楽を続け、コラボアルバム「20th Sessions」をリリースするまで〜

島村楽器のウェブと店頭を連動して展開中の「I Love Guitar!キャンペーン」。今夏、キャンペーンのイメージキャラクターを務めてくれたUNCHAINは、2016年がバンド結成から20周年になる。楽器屋すら無い京都府の奥地から排出されたバンドがどうやって「音楽で食っていく」まで至ったのかに迫り、中学一年生でバンドが結成されてからインディーズデビューを果たすまでを聞いた前編に続き、メジャーデビューから最新作「20th Sessions」の制作までを聞いた後編をお届けする。

―スバリ、メジャーデビューが決まった時、どう感じられましたか?

佐藤:僕はバンドに入って1年ぐらいでデビューしたので、「うわ、余裕!」って思ってましたね(笑) もちろん不安はありましたけどね。「え!スピッツやMr. Childrenと同じ土俵!?」みたいな。

吉田:UNCHAINは割とトントン拍子で進んだ方だと思うんですよね。身を任せていたというか。

佐藤:でもあっという間に「大変だ!!」ってわかったもんね。レコーディングとか曲を作るペースもそうですけど。レコーディングの時とか「メジャー重たい・・・」って思いながら録ってましたね。

谷川:お金をもらうことがどういうことか、っていうことを気づかされたというかね。

―デビュー後はどんな生活を送られているんですか?

佐藤:夢がないんですけど、デビュー当時はギターのクリック練習を1日6時間とかやってましたね。同じカッティングをひたすらやるとか。その時にコピーとかちゃんとやっておけば良かったと思いますけどね(笑)

谷川:音楽で食っていくっていうことはそういうことですよね。それが仕事ですから。

谷:僕は今はベースを触らない日もあるぐらいですね。音楽は聴く派というか。

谷川:僕は音楽をできるだけ聴かないようにしますね。

吉田:僕は昔より練習してますね。クリック使って布団叩くとか。クリックは早いうちから使った方が良いですよ。

―プロは普段、楽器をどう選んでいるんですか?

佐藤:僕はまず見た目ですね(笑) で、試奏するっていう。

谷川:楽器屋さんで試奏するならなるべくぺダルとかは自分の物を持ち込んで試すべきですね。

佐藤:レコーディングの時、「こんな音出したい」っていうのがあったら誰かに借りることが多いですね。

谷川:どちらかというと買うのはライブで使いたい時ですかね。

―レコーディングと言えば、コラボアルバムが10月19日にリリースになりますが、このアルバムはどう始まったんですか?

谷川:UNCHAINは最近、年2枚のアルバムを作るというペースで活動しているのですが、去年がデビュー10周年、今年が結成20周年と続くということもあり、何か特別なことがしたいねっていうことで、去年はロサンゼルスに行かせてもらいました。今年はまず「新しいUNCHAINを見せるぞ」という意味も込めて「with time」というオリジナルアルバムを出して、もう一枚作るっていう時に「ちょっと特別感出したいね」ということで、カバーシリーズではなく、別のフォーマットで考えたんです。最初はどこかのバンドとスプリット盤を出すことを考えたんですが、そこからどんどん話が派生していってこうなったと。

―コラボされている相手はどうやって決めたんですか?

谷川:普段から進行がある相手もいれば、ほぼ初めましてなアーティストさんもいましたね。基準は「UNCHAINと一緒に作品を作った時に絶対面白いよね」と思える人と、そしてもう一つのラインで「UNCHAINと一緒にやった時にどうなるのか全然わからない、見えない」という人を選びました。BRADIOとかLEGO BIG MORLは「見える人」、見えない方は鬼束ちひろさんとかBAND-MAIDとかですね。

―曲作りはどういうプロセスだったんですか?

谷川:曲作りはなかなか大変で、今回はコラボと言っても「ちょっと歌ってもらう」っていう形ではなく、がっつり歌詞を作ってもらい、がっつりデュエットするというコンセプトだったので、そのアーティストさんをリスペクトしつつ、どういう曲が良いんだろう?っていうのをUNCHAINのストックの中から、もしくは作り、各アーティストさんにだいたい10曲から20曲ぐらいお渡しして、そこから選んでもらいました。そこから歌詞を書いて頂いたりレコーディングしたりで、そのスケジューリングが大変でしたね。

―鬼束ちひろさんは特に意外なブッキングでしたが、元々ご存知だったんですか?

谷川:鬼束さんはレーベル担当者の紹介で何回かライブを観に来て下さっていて、UNCHAINのことも気に入って下さっていたみたいで、早い段階で「一緒にやりたいね」みたいなこと言って下さってたんですよ。

―「緊張」は特にボーカルの掛け合いが迫力ありますよね。

谷川:そうですね、鬼束さんの声には訴え掛ける力がありますよね。

―曲作り・歌詞作りはいかがでしたか?

谷川:曲自体はUNCHAINのストックにあったものを選んで頂いたので割とスムーズでした。歌詞はですね、あらかじめ土台となる曲を10〜20曲くらい鬼束さんに送って、「この曲が良いです」ってメールが来た2時間後くらいに歌詞が送られてきたんですよ。そこから一言一句変えていません。その時点ではワンコーラス分くらいしか曲がなくて、「残りもお待ちしてます」って来たんですね。それで急いで残りの部分を作っていたら、こっちが出来上がるより先に2番の歌詞が来ましたからね(笑)尋常じゃない制作ペースですよ。「作りたい」っていう衝動がすごいなって感じましたね。

―BRADIOとの「Bomb A Head」は全パート重ねて録ったそうで、制作の過程も想像がつきませんが、どうやって作ったのですか?

谷川:BRADIOだったら絶対面白いな、っていうのは最初からあって、その気持ちから生まれましたね。プライベートでも仲良くしてますし、あれはBRADIOを思いながら書き下ろした曲です。あれは対バンドであって、「真行寺vs谷川」にしたくなかったので、楽器パート全鳴らしでやりましたね。

元々は僕らが先に録ってBRADIOに重ねて録ってもらう、という形で考えていたんですが、いざ一緒にスタジオに入って「どんな感じになるかな」と「全鳴らし」してみたときに、「あ、これ面白いな」と。「これはUNCHAINの上に乗っけてもらうレコーディングでは出せないな」と思いまして。ドラム以外は全員せーので録り直しましたね。歌も含めて。フレーズもズレてるしバラつきがあるんですが、それがまた面白いかな、と。

佐藤:片耳ずつ聞けるようになってます(笑) ギターも「ここはこういうシーンだね」ぐらい決めて録りましたね。

吉田:ドラムも別に「好きにやってください」みたいな。僕は基本的なやつを叩いて「あとはお任せします」みたいな(笑)

谷:ベースも亮輔が「どうすれば良いすか?」みたいな電話掛けてきてくれて、「亮ちゃん好きにやってーや」って言ったんですけど、亮ちゃん真面目なんですよね。「これちょっと一応なぞりますわ」みたいな。

谷川:みんななぞってきて、それぞれなぞって録った物を「これで良いすか・・・!」って俺に送ってくるっていう(笑)

谷:「もうちょっと遊んでーや」みたいなことしか言ってないですね。

―もう1組意外性のあるコラボで、ねごととの楽曲「浮遊」はどう生まれたんですか?

谷川:ねごとは彼女たちのデビュー当時結構対バンしてて、まだあの子たちが高校卒業したてくらいの頃かな?最近改めてねごとを掘り下げて聴いていたら、ものすごいグッドミュージックをものすごいクオリティでやっていることに気づいて。

佐藤:「良い音楽をやっている」っていうことは昔から知っていたんだけどどうしても「可愛いな」が先行しちゃってたんですよね。「女の子」っていう印象が強くて。

谷川:「ミュージシャンから見てすごいことやってるな」っていうことがわかって、ねごととだったら「こういう曲もできるな」「こういう曲も面白いな」っていうのがすごい湧いてきて、ねごとだけは30曲くらい送りましたね。結果すごい相性良かったと思いますし、僕はもう幸子ラブになっちゃいました(笑) あれは曲を選んでもらって、サビだけ作り直して、歌詞を書いてもらってっていうプロセスですね。あとはキーボードも弾いてもらって。

谷:鍵盤が持つグルーブってすごく良いと思うし、それが入って生まれるものってあると思うんですよね。

―再現ライブ観たいですね・・・!

谷川:そうですね・・・。年末の三井ホールでのライブで何組か来るかも・・・?

*蒼山幸子(ねごと)、カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL)、彩姫(BAND-MAID)が出演することが10/19にアナウンスされた(チケット完売済み)

―楽しみにしています。最後に、20年の活動を経て、この先の目標を教えてください。

谷川:そうですね。決して楽な20年ではなかったと思います。デビュー自体はトントン拍子だったかもしれないですけれども、デビューしてから生き残れるかどうかは相当なハードルだと思いますんで。毎年のように僕は「もうダメなんじゃないか」と思いながらやってます。「もう書く曲ないぞ」と。「バンドいつまでやんねん」とかも毎年思います(笑)
けどこれからも結局のところそれを毎年続けるだけなんじゃないかなと思います。誰かが死なないと終わんない気がしますね(笑)
これだけやっていると例えば「谷くん嫌い」とか(笑)、メンバーと折り合いがつかないとか、音楽性が違うとか、UNCHAINにとってはその全てが「今さら」なんですよね。

佐藤:家族よりもずーっと一緒にいるし、友達でもなく、もう「バンドメンバー」としか表しようがない存在ですね。

谷川:チャンスがあればこれから世界にも出て行きたいですし、日本国内のシーンにも喰い込んで行きたいですし。背中にはポストUNCHAINなんていくらでもいるしね。

佐藤:そんなシーンを引っ張っていけるような気概があるべきだよね、20周年だし(笑) 若いバンドと一緒にライブするときに「うわぁ・・・敵わねぇな・・・」って思われるようなライブは絶対しないといけないし・・・っていうのが30歳超えて、結成20年目の意気込みとしては弱いですけど(笑)

谷川:そういう意味では我々結構ルーザーで、対バンたちに負け続けて負け続けて、生き残ってきたみたいなところがあるんじゃないかと思うんですよ。負けたからこそ吸収してきたというか。だからめっちゃ売れないとバンドを続けていけないとかじゃないし、下手くそだから続けていけないということもないんですよ。僕らも自分が上手い、やり切ったとは思ってないし、いつの日か思ってしまったら辞めてしまうかもしないし。
僕は音楽っていうものはそれぐらい極められるものではないと思っています。

聞き手:フジワラ、シミズ(島村楽器)
撮影:キタ(島村楽器)
協力:梅が丘 へちもんや

UNCHAIN プロフィール

UNCHAIN アーティスト写真

ジャズやソウルミュージック、フュージョン、更にはシティポップス的なエッセンスまでを絶妙にブレンドしたグルーヴィーなロックを鳴らす京都府出身の4ピース・バンド。
1996年、中学の同級生だった谷川正憲(Vo/Gt)、谷浩彰(Ba/Cho)、吉田昇吾(Dr)の3人で結成。
後に1年後輩の佐藤将文(Gt/Cho)が加入し現在の編成となる。
2005年インディーズ・デビューし、2枚のミニアルバムをリリース後、2007年にメジャー・デビュー。 Vo.谷川の圧倒的な歌唱力と確かな演奏力は、国内ロックバンド勢の中でも唯一無二の存在として独自の地位を確立している。
2016年、結成20周年目をスタートさせる。

使用機材紹介

UNCHAIN COLLABORATION ALBUM / 20th Sessions

2016.10.19 RELEASE!